飛べない妖精(3)

2016-07-22 10:22:43 | 童話
ある日、妖精の私が歩いていると、お母さんが子供を連れて歩いていて、その子供が持っていたボールがコロコロと転がって行き、子供がボールを追いかけて走って行ったのです。
その時、自動車が走って来て子供にぶつかりそうになったのです。
私は飛べないので時間を止めて、子供を抱えてお母さんの手に渡した。

『危なかったわね、急に走ったら危ないでしょ。だけど、誰が助けてくれたのかなぁ?』

『それは私よ。』
と小さくささやいた。
そして、
『気を付けてね。』
と小さな声で付け加えた。

妖精の私が公園にいる時に、男の子が二人でケンカを始めてしまった。
大きくなったら野球選手になるか、サッカー選手になるかでケンカを始めてしまったのでした。

私は、二人の男の子にソッと息を吹き掛けました。
そうすると、二人は何でケンカをしていたのか忘れて、また仲良く遊び始めたのです。

子供のケンカは、すぐに仲直りさせる事ができるが、国同士の大人のケンカの戦争は、妖精の私にも一人では力が足りない。

どうしょう?
そうだわ、私の歌声でみんなをやさしい心にしてあげればいいんだわ。
でも、世界には何十億もの人がいて、一人ではできないので、みんなを呼ぼう。
世界の平和のために、私の歌声を世界に届けよう。

『ねぇみんな、やさしい心になりましょう、静かな心になりましょう、そして、素晴らしい世界にしましよう。そうすると、妖精は私だけではなく、みんなが妖精になれるのよ、飛べない妖精になれるのよ。
私は、みんなが妖精になれるのを、何百年でも待っているわ。』

飛べない妖精は、澄んだ歌声でみんなが妖精の心を持つのを待ちながら、いつまでも歌い続けているのです。

              おしまい