ーーー年年に言葉の意味が軽くなり 鳥が囀るやうな晩年ーーー
ここ数日の暖かさで鎌倉の梅、桃、緋寒桜が一斉に満開となってしまった。
水仙と椿はとっくに咲き出していたので、我が楽園はまだ2月中にも関わらず春爛漫の様子だ。
我家の前の早咲きの桜にも早速鵯が来て蜜を舐めている。
もう長年見ている桜なので、この木の花精は毎年訪れる旧知の友人だ。
眼病を患ってからなかなか小鳥の撮影でピントが合わないが、今回はそう酷くない程度には撮れた。
ただ今年は鶯の姿が少なくて心配している。
藪に隠れてちちっちちっと鳴く笹子も激減している。
我が荒庭の紅梅を剪って白梅模様の花入に活けてみた。
(瑠璃陽刻梅図瓶 李朝時代 黒織部茶碗 江戸時代 織部小皿)
菓子は鶯餅にしたかったが売切れだった。
紅白の梅の間を桜餅のピンクで繋ぎ、赤の補色の抹茶の緑で引き立てる趣向だ。
花時となればこう言った日常の茶飯事にも、生命感溢れる彩りの工夫が出来て楽しい。
桃の節句には少し早いが、すでに桃の花も咲いている。
(笠間瓶 幕末頃 木彫彩色観音像 明時代)
家には女の子がいないので、観音像を代わりに置く。
古び傷んだ花入と木像に、可憐な桃の花の色が好対照で気に入った。
春野の七種はまだ先だが室内にいち早く春色を取り入れれば、気候変動で春が短くなった今も富貴長春の暮しを楽しめるだろう。
©️甲士三郎