我が夢幻の茶事には長年の呪病により茶菓子が欠けていた。
ところがこの春に煎餅や酒のおつまみ類なら食べても大丈夫な事に気が付き、茶や珈琲に適した物を色々試したので報告しよう。
まずは鎌倉の老舗の昔ながらの煎餅。
(鎌倉彫合子 江戸時代 益子焼珈琲碗皿 昭和初期)
煎餅には和菓子用の繊細優美な器は似合わず、武骨で雄渾な器を選んでいる。
古器に入れればたかが煎餅でも宝物に思えてくる。
この店は懐かしの味を維持していて良いのだが、どの種類も大きくて高いのが難点だ。
本は薄田泣菫の「後之茶話」初版。
茶話と言うよりちょっと笑える軽妙な小話集だ。
最近珈琲や茶菓子に関する古人の随筆をいろいろ探しているものの、なかなか良い本が無く名手薄田泣菫の各随筆集にも残念ながら食関連の物はほとんどない。
上の大振りの煎餅1枚だと100kカロリーほどあるので、病者にはもう少し小振りの3〜40kカロリーの物が理想なのだ。
(木彫蓋物 江戸時代 古民藝湯呑 明治時代 真鍮急須 清朝時代)
これが今回の試食で見つけた我が究極の煎餅「技のこだ割り 梅」だ。
ファミリーマートにあるので興味がある人はお試しあれ(唐辛子味もお薦め)。
現代ではスナックや菓子類もコンビニ製品が最も研究が進んでいて、老舗専門店を陵駕する物も多い。
さらに原料や栄養素別カロリー表示があって安心して食せる。
以前そのような表示の無いベーカリーの惣菜パンを食べたところ、味は甘くはないのにふんわりさせるためどっぷりと砂糖が入っていたらしく、血糖値が急激に上がってしまった事がある。
端午の節句なので家人用に柏餅も買って来た。
(古唐津花入 絵唐津茶碗 根来菓子鉢 共に江戸時代)
今ではごくありきたりの柏餅でも古人達の時代より遥かに贅沢な味だろうし、季節の花を飾り好みの茶器を使えば結構上等な茶時となるだろう。
隠者はこの程度でも十分至福の時に至れる。
晩春から初夏へと吹き渡る風を窓から入れながら、呪病の隠者でも食せる茶菓が見つかった事を喜こぼう。
他の茶請け類も各種安全な物を選んだので追々お話しして行きたい。
©️甲士三郎