先週に続き珈琲を語る2話目で、今日は珈琲碗や道具類を紹介しよう。
以前にも述べたが珈琲碗には紅茶用の繊細優美な色絵磁器よりも、簡素で無骨な重厚感のある陶器製が良いと思う。
そのような陶器製の珈琲碗が本格的に作られ出したのは20世紀初頭頃からだ。
(日本とイギリスの陶器製カップとポット 1930〜60年頃)
日本では地方の民芸窯や磁器が作れない瀬戸の脇窯などが、安価な輸出品として主にアメリカ向けに焼いたらしい。
写真手前の3種は瀬戸製で何処かの倉庫からデッドストックが大量に出て、運良くそれぞれ5客揃いで買えた。
昭和前期のレトロな雰囲気が手頃な価格で味わえるので、絵柄の違う物を次々と集めたくなる。
隠者がこれまで試した珈琲器で最も気に入っているのは戦前の各地民芸窯のカップだ。
(小石原焼カップ&ソーサー 昭和初期 炉鈞窯ポット 清朝後期)
卯の花の白には緑釉や青磁の爽やかな色が似合う。
花入は李朝青磁、本は堀口大学訳の「サマン選集」初版だ。
戦前の小石原焼の珈琲碗は無骨ながらも窯変の深みもあり、桃山茶陶の抹茶碗の豪放さに匹敵する良作だと思う。
時折りはらりと散る卯の花を前に、まだ珈琲がハイカラ趣味だった時代の雰囲気にじっくりと浸れる。
先週は珈琲好きだった亡父の命日があり、抹茶碗で珈琲を御供えした。
(木彫菩薩像 明時代 大樋茶碗 京焼水差 カンテラ 大正時代)
我家の各部屋や家具は大正風の和洋折衷なので、抹茶碗や湯呑で珈琲を飲む事も多い。
茶器珈琲器を周りの飾りや時節の花に合わせて選ぶのも楽しい。
今回の菩薩像とカンテラと珈琲の組み合わせにはちょっと苦労した。
これらを取り持つポイントは典型的な和洋折衷様式である瓢箪形のポットだ。
珈琲用の抹茶碗はあまり古格のある物より明治大正頃の茶碗が適しているようで、また書棚に沢山ある同時代の詩歌集にも合うので好都合だ。
またまた次週へ続く。
©️甲士三郎