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「豊穣とブドウ酒と酩酊の神・ディオニューソス」

2010-06-07 11:33:23 | ギリシャ神話

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 「オリュムポス十二神に補欠合格。今でも信奉している人がいるみたいだ」


 かまどの女神であるヘスティアーは、クロノスとレアーの6人の子供たちの最年長者で、「中立の処女神」と言われるように、彼女はオリュムポスの喧騒には関わらず、戦場を避け、家庭生活を暖かく見守る守護神だった。
 最も彼女は処女神なので、子供もいなければ家庭もないのだが、その代わりすべての孤児たちの保護者であった。
 もともと十二神のひとりだったが、慎み深く、遠慮がちなこの女神は、その座を譲ってしまったのだった。
 譲られたのはゼウスとプリュギアの王女セメレーとの間に生まれたバッカスとして知られる、酒神ディオニューソスというわけだ。


 セメレーとゼウスの関係に気づいたヘーラーは、密かにセメレーを訪れ、「神の名を偽る者がいるから、変装に気をつけるように」とささやきかけた。
 これを信じたセメレーはゼウスに向かって、変装を解いてくれと頼む。しかしゼウスが本体を現せば、人間は彼の発する雷電に打たれて生きていることができないのだ(やはりヘーラーは恐ろしい)。
 そして当然のごとく、セメレーは彼の姿を見るなり死んでしまったが、死の間際にディオニューソスを生み落とした。


 ヘーラーの怒りを恐れたゼウスは、この子供を妖精に託して育てさせ、やがて成人したディオニューソスは牧羊神パーンの子シーレーノスの教えを受けて、ブドウ酒の作り方を知る。
 ブドウの栽培法やブドウ酒の製造法を教えながら、地中海沿岸を旅するディオニューソスのあとには、常に酔っ払った彼の崇拝者が付き従い、異様な集団と化していった。
 中でも「バッカスの巫女」と呼ばれる女たちは夜ごとに酒に酔いしれて踊り狂った(ちなみにこういう女の人たちの熱狂的な様子をマニアというそうだ……)。


 さて、彼は故郷のテーバイに戻ったが、このたわけた行列を見たテーバイ王は、仰天してしまう。
 ごく普通の人だった王はこんな狂った集団を国に置いておくことなどできるものかと彼を追放する。
 しかし、すでに彼の母も姉たちもこの狂気の集団に加わっていたのである。自分の目で確かめようと変装して山に出掛けた王は、酒乱の集団と化した女たちに寄ってたかって打ちのめされ、八つ裂きにされてしまったという(酒乱の女は恐い…… かも)。
 のちに冥界から母セメレーを救い出したディオニューソスはオリュムポス山に登ってゼウスに会い、セメレーを女神にするように頼む(親孝行なんだね)。ゼウスはこの息子をすっかり気にって、十二神の一人として彼の右に座することを許したのだという。