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「フェニキアの王女・エウローペー」

2010-06-17 09:43:09 | ギリシャ神話

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 「心のスキに忍び寄る黒い影!?」


 エウローペー、このフェニキアの王女(やっぱり少女)は、元気一杯のピチピチ娘(いかにもゼウス好み)。


 「えっとー、あたし冒険ものが大好きなの。一番尊敬しちゃうのは勇気のある人」


 そんな世間知らずのお嬢さんを、あの爺がほっとくわけがない。


 牧場で侍女たちと戯れる王女さまのところに忍び寄る黒い影、じゃあなかった一頭の白い牡牛。ああーっ、そんな怪しい獣(まさにケダモノ)に近寄っちゃいかーん、という願いも虚しく、元気一杯のエウローペーは牛の背にまたがり遊びはじめた。


 途端に全速力で疾走し始める牛。野を越え山を越え、遂には海に飛び込んで、あれよあれよという間に泳ぎきってしまった。
 そうです。爺は今回、自分が牛に変身したんです(もしかしたら変な趣味があるかもしれないが……)。


 エウローペーはというと、これがまた見上げたもので、もう自分の冒険を楽しみ始めていた。う~ん、ただ単に事態が飲み込めていなかったかもしれないけどね。


 「お父様の宮殿に帰ったら、誰も話せないような凄い旅のお話ができるわ」


なんて言ってる始末。


 お嬢さん、もうお家には帰れないんだよー。怖いおじちゃんに捕まっちゃったんだよー。


 ゼウスが二人の愛の巣(ケッ!)に選んだのは自分が生まれたクレーテー島の洞窟だった。既に彼の娘の女神たちが花嫁を迎えるためにセッティングを終えていた。
 どうでもいいけど、娘にこんなことをやらせる親父なんて、エーゲ海に捨ててしまいたい。


 壁にはつづれ織りの壁掛けを、床には香しい花を敷き詰めるというムードの出しよう。
 まあ、でもこの場合、当人のエウローペーさんはまんざらじゃないみたいで、こちらがとやかく言うようなことでもないのですが…… 。
 彼女はここで、どんな人間の娘たちも得られない栄誉を手にする。彼女の子孫は、彼女の名エウローペーにちなんで名づけられた場所(ヨーロッパ)に住むことを約束され、その三人の息子たちはそれぞれ偉大な王となった。


 ゼウスが迫った相手は、ヘーラーの恐るべき嫉妬の嵐のせいもあって、だいたいは短いお付き合いが多いのだけれども、エウローペーは2号さんとして特別扱いされたらしい。
 「おうし座」はゼウスが彼女のために作った、星のシャンデリアなのだそうである(勝手にしやがれ)。