「優しくても、わたしは神さまよ」
レートーは“黒い衣のレートー”として知られる可愛い女神だ。あの親父(もちろんゼウスのことである)は、またまた火遊び(花火大会のことではありません)でこの女神と恋に落ちた。
そして彼女は、まもなく身ごもる。当然の如くヘーラーが、この事態を知らないわけがない。
さらに悪いことに、ヘーラーは予言の言葉を聞いた。
そして彼女は、まもなく身ごもる。当然の如くヘーラーが、この事態を知らないわけがない。
さらに悪いことに、ヘーラーは予言の言葉を聞いた。
「レートーの生む双子はゼウスさまのお子さんたちの中でも、最も美しく輝く子供たちでありましょう」
ヘーラーは今までゼウスの浮気相手に感じたジェラシー以上の憎悪をレートーに抱く。このおばさんが怒ると非常に怖いというのはご存知の通り。
ヘーラーは、レートーにあろうことか呪いをかけたのである。
ヘーラーは、レートーにあろうことか呪いをかけたのである。
「この世で日の照ったことのある場所では、どんな場所であろうと子供を生むことが出来ないように」
おかげでレートーは世界中を彷徨うことになってしまった。どの島でもヘーラーに嫌われることを恐れて、レートーを不憫に思いながらも、冷たく追い払うのであった。
旅の途中、レートーはリュキアの地に立ち寄る。へとへとになったレートーは池で水を飲もうとした。しかし、そこの村人たちは、それを止めようとした。
「なにも体を洗おうなどと思っているわけではないのです。ただ水を飲もうとしているだけなのに、どうして止めようとするの」
と、レートーはしきりに訴える。しかし、村人は、そんな彼女に罵声を浴びせ、池に足を入れ泥を立たせて水を飲ませないようにしたのだった。
これにはさすがに温厚で優しいレートーも頭にきた。そして天に両手を差し伸べて願った。
これにはさすがに温厚で優しいレートーも頭にきた。そして天に両手を差し伸べて願った。
「どうか、この者たちが、この池から永遠に離れず、生涯ここで過ごしますように」
すると、たちまち村人たちは泥沼に住むカエルになってしまいました(お~い、これは願いじゃなくて、呪いだと思うんですが…… )。
まあ、普段おとなしい人を怒らせていかないということでしょうか。
まあ、普段おとなしい人を怒らせていかないということでしょうか。
こうしたレートーのあまりに無残な姿をとうとう見かねたゼウスは、海底に沈んでいた島を地上に引き上げ、堅固無類の鎖で囲って、ヘーラーの邪魔が入らないようにしてやり、レートーをかばってやったのだ(いやいや、初めからそうしてやれよ、と言いたい)。
レートーはそこで無事に双子を出産する。ひとりは女の子のアルテミス、もうひとりは男の子でアポローン。
……確かにグレードの高いお子さまの登場だった(う~~ん、これじゃヘーラーの嫉妬に拍車が掛かるのも、うなずけるような)。
レートーはそこで無事に双子を出産する。ひとりは女の子のアルテミス、もうひとりは男の子でアポローン。
……確かにグレードの高いお子さまの登場だった(う~~ん、これじゃヘーラーの嫉妬に拍車が掛かるのも、うなずけるような)。
ちなみに、この輝く子供たちはその名の通り、アルテミスは月の女神に、アポローンは太陽の神となった。しかし、この二人の性格を考えると、胎教に悪かったかもしれない(えっ、そうじゃなく、あの親父の性格を受け継いでいるって、ごもっとも)。