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「謎かけの怪物・スピンクス」

2010-07-08 10:35:33 | ギリシャ神話

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 「エジプト生まれのヨーロッパ育ち」


 スピンクス、一般的にはスフィンクスと言ったほうが通りがいいけれど、要するになぞなぞが好きなあの方ですね。
 有名な“朝は四本足、昼は二本足、晩は三本足で歩くものは?”というやつ。


 答えは言わずと知れた“人間”で、赤ん坊の時は手足を使って四本で這い、成長すると二本の足で歩き、歳を取ると杖をついて歩くから、というものだけれど、よくよく考えてみるとかなりずるい謎かけなんではないかい。
 だって朝に四本、昼に二本と訊ねているわけなんで、一日の中で人間の歩き方が変るわけないんだから、ちょっとフェアじゃない気がする…… と思っていたら、実は違うのだそうだ。
 このなぞなぞの古いバージョンでは、“姿は一つなのに、四本、二本、三本と足の数が変わるものはないか”というらしいのだ。
 なるほどね。これなら文句のつけようがないわけで、確かに答えは人間になる。


 ちなみにこのなぞなぞ、スピンクス本人が考え出したものではなくて、芸術の神・ムーサ(ミューズ)に教わったものだそうだ。
 それで答えられない人間を次々と襲って殺していたというんだから、ちゃっかりしているよね。


 ライオンの体に人間の顔、鳥の翼を持つ怪物、ほとんどギリシャ神話の怪物の総製造元といった感じのエキドナとテューポーンの子供ということなっているが、実際の起源は古代オリエント辺りだろうとされている。
 そう、エジプトのピラミッドの横にいるでしょ。あちらでは神の生まれ変わりであるファラオを象徴する存在なのだ。


 これがギリシャに入ってきて、怪物になったらしいのだけれど、それ付いては面白い逸話がある。
 スピンクスが出没したのはテーバイという街の郊外の山だが、このテーバイの王が、エジプト辺りの女性と結婚したのだという。しかし、王に裏切られ捨てられてしまった。やがてこの女性は、近くの山にこもって山賊になったらしい。
 謎を意味する“エニグマ”という言葉は、テーバイの言葉で“襲撃”とか“略奪”という意味があるらしいのだ。
 このエニグマが“謎”へ転じて、その結果スピンクスという怪物になった…… というのだけれど、何だか苦しい説明という気がしないでもない。


 とっておきのエニグマをオイディプースにあっさり解かれてしまったスピンクスは、哀れ身を投じて死んでしまう。まあ、潔い最期というやつなんだろうか。