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「疫病犬と呼ばれて」<下>

2010-07-27 19:31:51 | リチャード・アダムス

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 『疫病犬と呼ばれて』下、リチャード アダムズ著、中村妙子訳、評論社


<あらすじ>
 動物生態研究所では、ローフは毎日のように水槽につけられ、溺れるまで泳がされていました。スニッターは頭を開かれて外科的手術を施され実験の日々を送っていました。


 研究所を逃げ出した二匹の犬は、満足な餌を得ることができず、日々衰弱していきます。また、彼らに家畜を襲われ、被害を蒙った農夫たちの犬を討伐する狩猟隊が迫ります。
 そして、二つの不幸がおきました。一つは、銃が暴発しスニッターの前で一人の男が死んでしまいます。
 もう一つは、ローフを撃ち殺そうと狙った男が足を滑らせ転落死してしまったのです。さらには二匹の犬が研究所を逃げる際、ペスト菌に感染しているという疑いも受けてしまいます。


 新聞社がこぞって、このことを記事にして二匹の犬を「疫病犬」と称し追い回し始めました。政府の役人も登場し、事態はとんでもない方向に―― 。そして、軍隊まで出動するはめになるのです。


 果たしてローフたちは、飢餓、狩猟隊や軍隊の銃による死の脅威から逃れ、安住の地を見つけることができるでしょうか?




<感想>
 今回の『疫病犬と呼ばれて』は、著作者の思想や哲学がふんだんに語られていて、『ウォーターシップダウンのうさぎたち』に比べて、大人を意識して書かれている。


 作中にシェークスピア、ミルトン、ディッケンズ等のSFからファンタジーまで、数多くの引用が施されており、歯切れの良い作風に仕上がっていると思う。


 一見すると動物ものファンタジーという感じがするが、実はサスペンス風になっていて、二匹の犬が如何にして、絶望的な状況を乗り越えていくのか―― ということが作品の中心に据えられている。


 現在、この『疫病犬と呼ばれて』は、絶版になっているが、是非とも復刻してもらいたい一冊である。