「不幸は女神の横恋慕から始まった」
「自分は王女プロクリスと婚約しています。女神さまと共に暮らす気はありません。どうか帰してください」
ここは曙の女神エーオースの城。彼女は、美貌のケパロスを恋するあまり、無理やり連れてきてしまったのだ。どうしてこう、神さまって強引なんだろうか…… 。
ケパロスには婚約者がいた。そのうえ、彼はこの炎の神を持つ女神が嫌いだった。エーオースは自分の思いが伝わらない苛立ちから、プロクリスの不実さを訴えた。
「それでは賭けをしない? あなたが姿を変えてあの女の前に現れて、誠実さを試してみるのよ」
「いいでしょう。無駄な事とはっきりさせて見せます」
賭けは成立した。エーオースはケパロスの外見だけを変えると、プロクリスの元へ帰したのである。
愛するケパロスが行方不明になり、ひとり寂しき思いをしていたプロクリスの前に、見知らぬ若者が現れた。
プロクリスは、この見知らぬ若者の中に、どういうわけかケパロスを思い浮かべてのだ。そりゃそうだ。本当はケパロスなんだから。
実はこれがエーオースの策略だったのだ。もし彼の人格も変えていたのなら、見知らぬ若者に慕情を抱く、などということはなかっただろう。しかし、愛するケパロスの面影が映る若者に、彼女は愛の告白をしてしまったのだった。
途端、若者は、元のケパロスの姿に戻る。
プロクリスは、この見知らぬ若者の中に、どういうわけかケパロスを思い浮かべてのだ。そりゃそうだ。本当はケパロスなんだから。
実はこれがエーオースの策略だったのだ。もし彼の人格も変えていたのなら、見知らぬ若者に慕情を抱く、などということはなかっただろう。しかし、愛するケパロスの面影が映る若者に、彼女は愛の告白をしてしまったのだった。
途端、若者は、元のケパロスの姿に戻る。
「なぜだ。なぜ他の男に心を奪われたんだ、プロクリス!」
裏切られたと思ったケパロスは彼女を責めた。彼女もまたひどく傷つき、森へと逃げたのだった。
そして、彼女はアルテミスの従者になる。アルテミスは彼女を大変気に入って、彼女に、決して的を外さない槍を与えた。
そして、彼女はアルテミスの従者になる。アルテミスは彼女を大変気に入って、彼女に、決して的を外さない槍を与えた。
プロクリスは、狩猟好きのケパロスに、仲直りの証として、この槍をプレゼントするのだった。
こうして二人は誤解を解いて、めでたく結婚したという。
こうして二人は誤解を解いて、めでたく結婚したという。
ところが話しはまだ続く。
結婚したけれど、あのエーオースが、そう簡単にケパロスのことを諦めるはずもない。もしかしたら、ケパロスとどこかで逢引しているんじゃ…… 。
そんな疑念を抱いたプロクリスは、こっそりと狩りをしに出かけたケパロスの後をついて行った。
そんな疑念を抱いたプロクリスは、こっそりと狩りをしに出かけたケパロスの後をついて行った。
ケパロスは、葉がざわついたのを耳にして、その方向へ槍を投げる。そう例の槍だ。百発百中のやりは獲物を仕留め、その獲物を拾いにいった彼の目に映ったものは―― 。
槍が刺さって血を流している瀕死の妻だった。結局プロクリスは死んでしまい、ケパロスは悲嘆してその地を捨て、流浪の旅に。
そして二度と再び、帰ることはなかったそうだ。
槍が刺さって血を流している瀕死の妻だった。結局プロクリスは死んでしまい、ケパロスは悲嘆してその地を捨て、流浪の旅に。
そして二度と再び、帰ることはなかったそうだ。