「人は知らないところで恨まれている」
若いきこりのロイコスは、歯がなくて蜂蜜しか食べられない年老いた母のために、蜂蜜の巣を取って暮らしていた(なんかいい話や~)。
ある日、彼は森の中で、美しい樫木を切り倒そうとしている男に出会った。その木はロイコスのお気に入りの木だったので、その男と大喧嘩の末、木を切ることを止めさせたのだった。
すると、その木から美しいドリュアス(木の精)が現れて、命の恩人に礼を言ってきた。そのうえ、ロイコスへの愛を告白したのだ!(なんと都合のいい話や~)
すると、その木から美しいドリュアス(木の精)が現れて、命の恩人に礼を言ってきた。そのうえ、ロイコスへの愛を告白したのだ!(なんと都合のいい話や~)
「今はアルテミス様と狩に行かなくてはならないのですけれど、また明日お会いしたいわ。使いの者をやって時間と場所を連絡しますから、是非いらしてくださいね」
こう言われると、ロイコスも健全な男子なので、たちまちのぼせ上がって、脚はフラフラ、頭はボンヤリ、心はウツロといった状態。ドリュアスの使いが来るのを心待ちにしていた。
ところで、ドリュアスがよこした使いというのは一匹の蜂だった。この蜂は、ロイコスがいつも自分たちの巣を壊して持っていてしまうのを恨んでいたので、ドリュアスの伝言を伝えなかったのだ。
そのうえでドリュアスにはこんな風に言った。
そのうえでドリュアスにはこんな風に言った。
「伝言を伝えますとロイコスの奴、『わかったわかった』なんてあざ笑って、わたしを追い払ったんですぅ…… 」
ドリュアスは、そんなことは信じられず、約束の場所で、ロイコスが来るのをずっと待った。しかし、もちろん彼は来るはずもない。
失恋の悲しみと侮辱された怒りに燃え上がった彼女は、スズメバチに姿を変えると、夢心地で使いが来るのを待っているロイコスの元へ訪れて、一刺しに刺し殺してしまったのだ!(何という悲しい話や~)
失恋の悲しみと侮辱された怒りに燃え上がった彼女は、スズメバチに姿を変えると、夢心地で使いが来るのを待っているロイコスの元へ訪れて、一刺しに刺し殺してしまったのだ!(何という悲しい話や~)
哀れな恋人たち。しかし、彼らに夜の恋人たちの守り神アルテミスが情けをかけた。彼女は二人を熊に変え、共に蜂蜜を求めて森の中をさすらい歩けるようにしてやったのだった。
変身は、罰として与えられる場合と、救済として与えられる場合の二パターンがあるようだ。熊になってさすらい歩く恋人たちが幸せかどうかはいささか疑問だが、アルテミスの裸を見たばかりに鹿に変えられて、自分の猟犬に八つ裂きにされた狩人アクタイオーンや、ヘーラーの嫉妬をかい、熊に姿を帰られた息子に殺されそうになったカリストーを思えば、やはり平和な部類なんでしょうか(なんか微妙な話や~)。
ロイコスは熊の姿でお母さんに蜂蜜の巣を届けたのだろうか? きっと母親は腰を抜かしたに違いない。