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「きこりだった熊・ロイコス」

2010-07-09 23:32:15 | ギリシャ神話

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 「人は知らないところで恨まれている」


 若いきこりのロイコスは、歯がなくて蜂蜜しか食べられない年老いた母のために、蜂蜜の巣を取って暮らしていた(なんかいい話や~)。


 ある日、彼は森の中で、美しい樫木を切り倒そうとしている男に出会った。その木はロイコスのお気に入りの木だったので、その男と大喧嘩の末、木を切ることを止めさせたのだった。
 すると、その木から美しいドリュアス(木の精)が現れて、命の恩人に礼を言ってきた。そのうえ、ロイコスへの愛を告白したのだ!(なんと都合のいい話や~)


 「今はアルテミス様と狩に行かなくてはならないのですけれど、また明日お会いしたいわ。使いの者をやって時間と場所を連絡しますから、是非いらしてくださいね」


 こう言われると、ロイコスも健全な男子なので、たちまちのぼせ上がって、脚はフラフラ、頭はボンヤリ、心はウツロといった状態。ドリュアスの使いが来るのを心待ちにしていた。


 ところで、ドリュアスがよこした使いというのは一匹の蜂だった。この蜂は、ロイコスがいつも自分たちの巣を壊して持っていてしまうのを恨んでいたので、ドリュアスの伝言を伝えなかったのだ。
 そのうえでドリュアスにはこんな風に言った。


 「伝言を伝えますとロイコスの奴、『わかったわかった』なんてあざ笑って、わたしを追い払ったんですぅ…… 」


 ドリュアスは、そんなことは信じられず、約束の場所で、ロイコスが来るのをずっと待った。しかし、もちろん彼は来るはずもない。
 失恋の悲しみと侮辱された怒りに燃え上がった彼女は、スズメバチに姿を変えると、夢心地で使いが来るのを待っているロイコスの元へ訪れて、一刺しに刺し殺してしまったのだ!(何という悲しい話や~)


 哀れな恋人たち。しかし、彼らに夜の恋人たちの守り神アルテミスが情けをかけた。彼女は二人を熊に変え、共に蜂蜜を求めて森の中をさすらい歩けるようにしてやったのだった。


 変身は、罰として与えられる場合と、救済として与えられる場合の二パターンがあるようだ。熊になってさすらい歩く恋人たちが幸せかどうかはいささか疑問だが、アルテミスの裸を見たばかりに鹿に変えられて、自分の猟犬に八つ裂きにされた狩人アクタイオーンや、ヘーラーの嫉妬をかい、熊に姿を帰られた息子に殺されそうになったカリストーを思えば、やはり平和な部類なんでしょうか(なんか微妙な話や~)。


 ロイコスは熊の姿でお母さんに蜂蜜の巣を届けたのだろうか? きっと母親は腰を抜かしたに違いない。



「天空を支える巨人・アトラース」

2010-07-09 07:24:15 | ギリシャ神話

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 「地図を見たら思い出してよ、この山になった男を」


 アトラースは、ゼウスと戦った巨人族の勇猛な戦士だった。あんまり活躍しすぎたのがいけなかったのか、巨人族の長・クロノスが敗れて追放された時に、彼はA級戦犯としてヤリ玉に上げられてしまったのだ。
 彼に与えられた罰は、世界の西の端で天空の縁をその肩に担ぐことだった。ムチャクチャ重く、肩がこるうえ、身動き一つもできない。嗚呼、無常、彼を憐れむ人はいないのか―― 。


 このアトラースは、優れた戦士である一方、家庭に戻れば、よき夫であり、よき父であった。巨人族の妻・プレイオネとの間には、星々の名ともなったプレイアデス(七人)、ヒュアデス(七人)、カリュプソーなどなど数多くの娘たちが生まれている。


 さて、一番泣かせるの孝行娘だったのが、ヘスペリデスと呼ばれる三人の娘たちで、父親が追放された世界の西の果てまでついて行き、アトラースの陰に植えられたヘーラーの黄金のリンゴの木の番人を務めた。
 彼女たちがいなかったら、アトラースも天の縁を支えたまま、忘れ去られていたかもしれない。しかし、ヘスペリデスのおかげで、彼の名は残されたのだった。


 ある時、天下の英雄ヘーラクレースが彼の元に訪れた。十一番目の難事“ヘスペリデスの園にある黄金のリンゴを取ってくる”ために、――将を射んとすれば、先ず馬を射よ―― ということで、娘たちの父、アトラースのところへやってきたのだ。
 アトラースはヘーラクレースの代わりに娘たちからリンゴをもらってきてやると言って、ヘーラクレースに苦行を代わってもらい、永劫の苦行で最初で最後の休息を取ることができた。


 この孝行娘たちは、メドゥーサを倒しにいくペルセウスにも恩を売っている。何世紀ぶりかの客である彼を歓待し、ヘルメースから貰った姿を隠せる兜とどんな毒(メドゥーサの首から滴り落ちる猛毒の血)にも耐える黄金の袋をプレゼントしたのだった。


 結局このペルセウスと、彼が倒したメドゥーサの首がアトラースの苦しみを救うことになる。ヘスペリデスの娘たちの恩を思い出したペルセウスが、アトラースを訪れ、彼をメドゥーサの首で巨大な石の山に変えたのだ。
 以来、アトラースは相変わらず雪を頂いた峰に天空を担いでいるが、天空の重さやひどい肩こりに、もはや苦しむことがなくなった。


 教訓。やはり老後のことを考えると、心優しい娘をたくさん作っておくのがいいのかも…… 。
 ちなみに、地図帳のことをアトラスというけれど、これは昔の西洋の地図には必ずアトラースの絵が描かれていたからだそうだ。