「僕は美しい! だからどうした?」
“ナルシシズム”の語源となった美少年ナルキッソスの話は、一人のニュムペー(ニンフ・妖精)の話抜きには語れない。
彼女の名はエーコー。陽気でお喋りで機転が利く、快活なニュムペーだった。だが、気が利きすぎたのが彼女の不幸となった。
ヘーラーが、ゼウスとニュムペーたちの浮気現場を取っ捕まえてやろうと、肩をいからせやって来たとき、エーコーはヘーラーに話しかけて、その間に友だちのニュムペーたちを逃がしてあげたのだ。
彼女の名はエーコー。陽気でお喋りで機転が利く、快活なニュムペーだった。だが、気が利きすぎたのが彼女の不幸となった。
ヘーラーが、ゼウスとニュムペーたちの浮気現場を取っ捕まえてやろうと、肩をいからせやって来たとき、エーコーはヘーラーに話しかけて、その間に友だちのニュムペーたちを逃がしてあげたのだ。
ヘーラーは怒った。
「このお喋り娘め! 二度と自分から話しかけることが出来なくしてやるよ。呼びかけた相手の言葉を繰り返すほかは、もう二度と話せないからね!」
とんだとばっちりだ。
このエーコーが恋をしたのが、問題のナルキッソスという美少年。けれど自分から近づくことが出来ないので、エーコーは、ただただ声をかけられるのを待つしかなかった。
ある日、ナルキッソスは、森の中で仲間とはぐれてしまった。
ある日、ナルキッソスは、森の中で仲間とはぐれてしまった。
「誰かいる?」
彼は呼んだ。待ちかねていたエーコーは嬉しくなった。
「いる!」
彼女は答えて駆け寄り、彼に微笑みかけた。
しかし、ナルキッソスは彼女を、嫌な顔をして押しのけて、冷たく言い放つ。
しかし、ナルキッソスは彼女を、嫌な顔をして押しのけて、冷たく言い放つ。
「何だよ。おまえなんか知らないよ。あっちに行けよ!」
「あっちに行く……」
そう答えることしかできない彼女は、青ざめてナルキッソスから遠ざかって行くしかなかった。そして悲しさとショックでやせ細り、とうとう肉体は消えて、声だけの“エコー(こだま)”になってしまったのだ。
顔は綺麗なナルキッソスは、他のニュムペーにも心を寄せられたが、それをことごとくエーコーのように無残に扱った。まさに女の敵みたいな奴なのだ。
しかし、とうとう中でも気性の激しいニュムペーが、彼を恨んで復讐の女神ネメシスに祈る。
「あたしのように報われない無残な恋を、彼にも与えてやって!」
願いは聞き届けられた。
ナルキッソスは水に映った自分の姿を、美しい水の精だと思い込んで好きなった。水面をはさんで見つめ合い、微笑み合っているのに、その相手は手を伸ばすと消えてしまうのだ。
恋に苦しんだナルキッソスは、そのまま池のほとりでやせ細り、衰弱死してしまった。
恋に苦しんだナルキッソスは、そのまま池のほとりでやせ細り、衰弱死してしまった。
そして彼はそのまま水仙の花になったという。
それでもかなりの数のニュムペーが、彼の死を悼んだそうだ。こんな性格をしていても愛してくれる人(?)はいる。まったくもって、顔のいい奴はいいよな(別にひがんでいるわけではないです……)。
これは女の敵ならぬ、男の敵かもしれない。
これは女の敵ならぬ、男の敵かもしれない。