時刻は夕方の7時。目の前を走るポルシェ928を追う、1978年に世に出た名車である。こういった小知識が自然に出てくるのは、少年時代にスーパーカーブームの洗礼を受けたおかげである。当時のスーパーカーブームを経験した同世代の日本人が持っているクルマに対する知覚は財産であると感じている。目の前を走っているFRポルシェをみて、このモデルは928か924、944かはすぐにわかるところ。またナローRRポルシェを指差して、こいつは911か912か、また年式まで想定する領域はマニアックな世界である。こういった少し古いクルマに対する知は他国の多くの人々は持ち得ていない。知らない=関心が薄い、知っている=関心が湧く。関心が湧くというのは愛心でもある。その基礎を今日まで引きずっているが故に、当時から今日までの世に出た車に対する比較脳が出来てしまっているのかも知れない。
928が世に出た時、車体のバランスに魅力を感じていた。特に後廻りは独特で、あのリアバンパーは、鉄で出来ているのか?アルミで出来ているのか?に疑問を抱いていた事を覚えている。今日、多くの車のバンパーは樹脂で形造られて、それが一般化されてる。928の後姿を追いながら、このセクシーな後姿こそが今日の樹脂バンパーの元祖じゃねえ?という問い、そしてその問いを打ち消すように、元祖樹脂バンパーと呼ぼう!とする結論が頭の中を占領したのであった。