世界のエクスペディション、或いはオーバーランドトラベルを引率してきた署名人達は総じて、オーバーランドビークルはシンプルでなければならない、という共通の見解を持っている。英国人の自動車冒険家マック マッケニィ氏は以前、ランドローバーの専門誌であるランドローバーマンスリーの記事の中でオーバーランドビークルについてこう述べている。Everything will evantually break and need to be easy to fix. 全ての機能は最終的には壊れる、その時に容易に直せるようでなければならない。 Keep it simple in term of vehicle choice. Do you really want to take a new Range Rover? シンプルで維持し易い車両を選ぶ事、本当に新しいレンジローバーは必要なのか? と、自己の経験からくる主張を堂々と述べていた。
MOTOR TREND が選んだ 2021 SUV OF THE YEAR は新型ランドローバーディフェンダーである。ニューディフェンダーの登場において、ランドローバー社はこのディフェンダーを持って、オーバーランドビークルはシンプルでなければならない。とする価値観の書き変えを迫っている様に感じている。それは前回ここで紹介した英国人のトムシェパードの Four-by-Four driving の著書の説明車両にニューディフェンダーが沢山登場しているからである(近年のレンジローバーは全く登場しない)。ランドローバー社のスポンサーも有っての事だが、ニューディフェンダーを前に出して、往来の価値観に対して新しい価値観を受け入れる為の突破口を開こうとする意図。或いは、ランドローバー社のラインナップが全車ラダーフレームを排除したモノコック構造と、多様な電気制御の充実機能を備えた事を正当化する意図も感じられる。
実はこの新しい4x4に対する価値観は既に大衆には受け入れられている。それは現実を見れば分る。受け入れを拒んでいるのは4x4を愛する保守派に属する少数な人々である。そういった人々に対して往来のオーバーランドビークルはシンプルでなければならない。という価値観に対して真っ向からは否定しないで、それは分っているけど、こちらも受け入れて欲しい、理解して欲しいとする姿勢を見せているのである。最終的に4x4に対する新しい秩序が常識的に部分的にでも保守派の人々に受け入れられる事への努力の過程である。
一番上の写真はニューヨーク郊外のあるタイヤショップでのランドローバーシリーズ3。時代が変わった現在、乗っているディフェンダーは新しくなってもシリーズ3の時代の四駆の価値観と知識は定着している。この有様をどう捉えるのかは面白い課題である。