アメリカ西海岸の北部に位置するワシントン州。降水量が多く、エバーグリーンの針葉樹の森と山々に囲まれた湖の山紫水明な光景が一般的なイメージの認識である。しかし、太平洋の海岸線から3時間程内陸に向かって車で走り、カスカデレンジと呼ばれる山脈と丘陵地帯を越えると景色は一転し、乾燥したステップ気候の砂漠の様な光景が展開する。その景色はテキサスの南西部やカリフォルニアの中部の乾燥した気候に似ており、初夏の日中の気温は35度を超えていた。ここがいったい何処なのか戸惑う程である。
コロナを警戒して、多くのレストランが店内飲食を禁止している。そういった中でもメキシカンの簡易食堂(タクエリア)はたいてい開いているので有り難かった。ほぼ毎日タコスを食らった。水を引いての農業が盛んな地域でもあり、そこで働く多くの労働者達はこのタコスを食らって元気を得ている様だ。
ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトルなどの大きな都市から来ている人々とタコスを食らいながら色々な話をした。車の話題、そして旧車の話。現在は西海岸の街では旧車を殆ど見かけない。気が付けば、街を走る車は近代的な車ばかりとなってしまったが、この辺はまだ古い車やトラックがけっこう走っているじゃん。が共通の理解であった。
住宅街にはピックアップトラックが多い。新しいトラックに混ざって80年代のトラックもちらほら見かける。写真はGMCトラック。乾燥し雪が少ない地域なのであろうか、アリゾナカーの様に錆が少なく鉄持ちがよさそうだ。
こちらはフォードのピックアップ。町の光景において、走っていたり駐車している車は決して主体的な存在物では有り得ないが、どんな車が走っているのか、停まっているのかは、そこに住む人々の生活や価値観を表現する存在オブジェクトなのである。綺麗な新車ばかりが並ぶ街角よりも、老若多様の様な個性が有る方が刺激があり楽しい感がある。
タクエリアで出会ったカップルが駆るアラスカ州ナンバーの1983年のFJ60。コロラド州を廻ってシアトルに向かう途中だとの事。車内には大きな白い犬がタコスを食べているカップルを騒がしく待っていた。
アメリカの都市部では旧車は趣味の対象となりつつあるが、乾燥した地方の田舎では未だに現役で活躍している事を実感した期間であった。アメリカ北西部の乾燥地帯は隠された旧車の掘り出し場所だという事は秘密にしておこう。