私が21年前にドイツより帰国した当時
日本ではライアーはほとんどの方々が、アンサンブルで演奏していました。(今もそうなのですが・・・)
ソロ演奏の方もいらっしゃいましたが
そういう方々は「いつも何度でも」の木村弓さんのように
ライアーを使っての弾き語りが主でした。
当時の私は(今もそうなのですが・・・)
自分のために、自分がハッピーになれるためにライアーを弾きたかったので、
どうやったらライアーでソロ演奏ができるのか
暗中模索をしていました。
21年前当時はもちろん、まだyoutube などの動画サイトもなかったですしね・・・
見よう見まねで一生懸命弾きたい曲をアレンジして
その曲をライアーで一生懸命練習する日々。
でも・・・
音楽の経験がない私は、どのようにしたら
曲を音楽的に仕上げることができるのか
ただ弾いているのではなく、少しでも芸術に近づけていけるのか
皆目見当もつきませんでした。
どうしたら素敵なライアーの表現ができる?
どうしたら?
どうしたら?
そんな時にあるリュート奏者の方に出会いました。
それは当時お世話になっていた声楽家の方のコンサートに行った時に
そのリュート奏者の方が、声楽家の方の伴奏をしていたのです。
リュート奏者のお名前は金子浩さん。
その演奏会場は小さな空間でしたが
その空間いっぱいに、静かなかそけきリュートの音色が広がっていました。
私はすっかりそのリュートの音色に魅了されてしまい
コンサートが終わった後、金子浩さんに遠慮がちに話しかけました。
「あの~、私はライアーという楽器を弾いているのですが・・・
楽器は違いますが、レッスンしていただくことはできますか?」
金子さんは気取らない気さくな方で、
「あ~、面白そうですね。いいですよ!
レッスンにいらしてください~。」と、
無謀ともいえる私の願いを聞き入れてくださいました。
2005年~2008年まで、月1~2回金子さんのアトリエにライアーを抱えて通いました。
何しろ15年~18年も前の話しです。
当時の私の演奏技術は本当につたなくて・・・
ただ音符を追いかけるのに必死でした。
長年オランダに留学した経歴もある金子さんは
そんな未熟な私を邪険に扱うこともなく
馬鹿にすることもなく
ていねいに指導してくださいました。
当時の私は本当に未熟だったので、
金子さんがレッスンしてくださったことをしっかりと受け止める技量がなかったのですが・・・
「音を大切に、一つ一つの音を紡いでいく」ことは
金子さんのおかげで身に付いたことだと思います。
3年くらいレッスンに通ったのですが、
私自身、身辺のごたごたがあり
レッスンに通えなくなって、そのままになっていました。
が、時折ネットで金子さんのコンサート情報を見つけては
リュート演奏を拝聴しておりました。
またいつかレッスン受けることができたらな~とはずっと思っていました。
つい最近、金子さんが今年の2月25日に58歳でおなくなりになっていることを知りました。
「え!」言葉を失いました。
その訃報を知って帰宅後、金子さんのレッスンの時に筆記していたノートを引っ張りだしてめくってみました。
「古い廃校になった木造校舎の中に入っていくような音・・・」
「静かに弾くけど、聴いてくださいというエネルギーを持って・・・」
「音が少ないから、「いい」と感じさせる演奏を・・・」
などなど、金子さん語録がちりばめられていました。
今から思えば、どれだけたくさんの豊かなレッスンをしてくださったことか。
もう2度と金子さんの素晴らしい演奏は聴けないけれど、
もう2度と金子さんにお目にかかることはできないけれど、
初心に戻って、このレッスンノートを見ながら
その当時弾いていた曲を復習してみようと思います。
生きているって不思議・・・
死んでいくって不思議・・・
しみじみ思いました。
金子さんの「G線上のアリア」ぜひぜひお聞きくださいませ。
J.S.Bach:Air for the G string on Lute (J.S.バッハ:G線上のアリア)arranged by Hiroshi Kaneko(リュート:金子浩)