「新統合軍の広報ビデオに出演!?」
アルト達スカル小隊のメンバーが驚きの声をあげる。
新統合軍、キャシー・グラス中尉が持ってきた仕事。それは新統合軍の広報ビデオへの出演依頼という意外なものだった。
彼らの前に置かれた情報端末には広報ビデオの概要が解説画面が表示されそのタイトル
『フロンティア・エイセス』
の文字が青く輝いていた。
「なんで俺達に統合軍の広報ビデオへの出演依頼なんかするんだ?S.M.Sは民間組織で軍と繋がりがないんだぞ」
とアルト。
「それに、新統合軍の中には僕らを嫌っている人達もいた筈です。よくそんな話が許されましたね」
ミハエルが続けた。バジュラの襲撃が起きるようになってから、ことごとく失態を繰り返していた新統合軍への風当たりは強かった。
加えて新統合軍の失態をフォローする形となっているS.M.Sへの評価の高さに新統合軍の幹部の中にはS.M.Sへのあからさまな不快感を示す者さえいる始末だった。
アルト達にとってその手の軍人は頭の痛い話ではあったものの、驚異的な敵を前に生半可なプライドやメンツは意味がないと気にしないようにしていた。
そんな状態だったからこそ、キャシーの提案は予想外過ぎていた。
「まぁ、なんだ」
オズマが口を開く。
「軍は広報ビデオにVF-25を出演させたかったらしいんだが不慣れなパイロットに最新鋭機を任せるのをスポンサーが嫌がってな、貸し出しの条件として俺達にパイロットを任せる事を条件に出したんだ」
「スポンサーのお偉方さん達にしてみれば俺達の力を新統合軍に納得させる好機と踏んだらしい」
「でも隊長、本当にそれだけが理由なんですか?」
ルカが尋ねる。
「それなんだがな…」
「もちろん、軍は当初あなた達を出演させる事には渋々だったわ。けど広報ビデオのゲストからもあなた達を出演させろってねじ込まれたら、流石に断り切れなくなったのよ」
「ゲストって、一体誰なんだ?」
「あなた達も一度一緒に仕事をしてるわよ。そう、彼女とね」
アルトの問いにキャシーはリクリエーションルームに貼られたポスターを指差して答えた。
「げっ!?」
「光栄と呼ぶべきですね、これは」
「アルト先輩、ミハエル先輩、凄いですよ、これって!」
ポスターの女性、彼女こそ銀河の歌姫として名を馳せマクロスフロンティアでも絶大な人気を誇る
『シェリル・ノーム』
その人だった。
ミハエルとルカが喜ぶ中、アルトだけは別だった。
シェリルの勝ち気な性格に加え、初めての出会いとなったコンサートでのトラブル以来彼女に気に入られてしまったアルトにとっては気苦労が絶えない相手となっていた。
気苦労は絶えないが一緒にいるのが嫌という訳でもなく、アルトにとってシェリルは不思議な存在となりつつあった。
「おまえ達、歌姫の御依頼でもあるんだ、この仕事に異存はないな?」
オズマの声にハッとなるアルト。
「はい!」
スカル小隊のメンバー全員が立ち上がり敬礼をおくり、キャシーとオズマが敬礼を返す。
「何事もなければ明後日には本番となります、各自準備を怠らないように」
「それとアルトくん。あなたはシェリルさんと一緒の機に乗ることになります」
「了か、何だって!?」
キャシーの説明を聞いてアルトは耳を疑った。
中尉の説明にミハエルとルカも驚き、二人を見つめた。
「グラス中尉、俺が乗る機体、VF-25なんですよね?」
「そうよ」
「VF-25は単座戦闘機です、二人も乗れません!」
「その為に専用のVF-25を用意してあります」
「専用機、ですか?」
キャシーの説明の意図がわからず、困惑するアルトだった。
(つづく)
あとがき:まだマクロスF第三話を見ていない管理人です。間違いなく本編と整合性の取れない話になりそうですが、書き始めた以上投げ出すのは嫌なのでこのまま話を続けようかなと考えています。
今回の話に限ってはシェリルをヒロインに据えて話を進める予定でいます。