マクロスFの二次創作小説ですが、この先
○本編から逸脱した独自展開
○極度のアルシェリ展開
○ネタ三昧
となっております。苦手な方は引き返す事をお勧めします。
-これまでのあらすじ-
ガリア4から帰還したアルト達。バジュラ艦隊も撃滅に成功するもバジュラ母艦に囚われていたランカ・リーは謎のバルキリー乗りブレラ・スターンに連れ去られ行方不明に。
しかもS.M.Sは再び現れたグレイス・オコナーと彼女と結託したレオン・三島の策謀により、ガリア4の崩壊の引き金を引いた張本人に仕立て上げられ、強制武装解除直前に辛くもマクロス25はフロンティアからの脱出に成功。
しかしオズマ・リーがこの脱出劇のさなかに深手を負い、アルトが新たなスカルリーダーに任命される事に。
一連の事件の裏にマクロスギャラクシーの存在が見え隠れするなか、マクロス25は手掛かりを求め、かろうじて判明した謎のバルキリーの行方を追っていた…。
マクロス25のレクリエーションルームの一角。
早乙女アルトは一人昼間の出来事を思い返していた。
「アルトの馬鹿!」
この日、アルトはシェリル・ノームと喧嘩になった。
当初(奇跡的に宇宙船で崩壊するガリア4から脱出出来たとしてフロンティアに再び現れた)グレイスによりアルト達共々ガリア4で死亡した事にされた揚げ句、グレイスと結託したレオンの配下に殺されそうになったシェリル。
アルト達S.M.Sの助けでマクロス25に匿われた彼女は自分もアルト達と戦いたいとアルトに懇願した。
しかし、アルトはシェリルの頼みを頑なに拒み、その結果激しい言い争いになったのだ。
ミハエルに窘められたアルトだったが、それに対してアルトは押し黙ったままだった
シェリルは昼以降自室に篭ったきりで一度も顔を合わせることがなく、一方、寝付けないアルトは同室のミハエルに申し訳なく思い一人レクリエーションルームで時間を過ごしていた。
「どうした、少年」
その声にアルトが振り返るとピクシー小隊のクラン・クラン大尉が視線の先にいた。
「大尉」
「ちょっと隣いいか」
アルトがうなずくとクランはマグカップを手に彼の隣に腰掛けた。
「大尉も寝付けないんですか?」
「まあな、色々ありすぎたせいかも知れないがな」
「それ、温めたミルクですか?」
「寝付けないときはこれに限る。まさかこの身体で酒という訳にもいかないしな」
そういってクランはカップの中身を一口飲んだ。
そして一息ついてアルトを見つめるクランの瞳はいつになく真剣だった。
「ミシェルから聞いたぞ、シェリルと昼間に喧嘩したそうだな」
「…。」
「一部隊を率いる人間が些細なことで喧嘩するとはな」
「些細なことじゃありません」
「些細なことではない?」
「彼女が無茶を言うからです」
「何が無茶だというのだ?」
「パイロット技能も不確かな人間がいきなり一緒に戦いたいだなんて無茶ですよ」
「ガリア4や先のバジュラとの戦いでの彼女の技量を見ても不確かと言えるか?」
クランが指摘するとおり、ガリア4やバジュラ艦隊との戦いの際、ミハエルの機体を任されたシェリルは類い稀な技量を見せていた。
「でも彼女は素人です」
「お前だって半年前はただの素人だった」
「うっ」
半年前のバジュラ襲撃事件、それを契機にアルトは戦場に身を置く事になったが、それ以前はバルキリー乗りを目指していたとはいえ一介の学生でしかなかった事をクランに突っ込まれだまるアルト。
「今の我々には少しでも戦力が欲しい。一体彼女が実戦に参加することの何が不満なのだ?」
「不満は、ないです」
「?」
「怖いんです、彼女をシェリルを失う事が」
アルトの言葉を聞いてクランはむっとした。そして少し語気を強めて話を切り出した。
「アルト、おまえは死にたくてここにいるのか?」
「えっ?」
「シェリルも死にたくて自ら戦場に赴きたいと思った訳ではあるまい。そして我々と一緒に戦いたいという決意が生半可なものではないことも判っているはずだ。何故彼女の気持ちを汲み取ってやれないのだ?」
「それは…」
「戦士なら、男なら仲間を戦友を守って戦い抜こうと何故思えない?今の貴様はあのオズマが認めた男とは到底思えないぞ」
クランの激しい言葉にアルトは返す言葉がなかった。シェリルの気持ちが生半可なものでないことはアルトも判っていた。
しかし、シェリルを失う事への恐怖から彼女の気持ちに目を背けていたアルトだった。
「もしシェリルの事が本当に好きなのなら、彼女の決意を信じてやれ。それが隊長のいや男としての責務だと思うぞ」
「…!!」
クランの言葉に目を丸くするアルト。思わずクランを凝視する。
「なんだ、その顔は?いくらニブイ人間でもあれだけ仲睦まじければ気付かないほうがおかしいと思うがな」
そこまで言ってクランはまたカップに口をつける。
そして何かの気配に気付き後ろを振り向く。
視線の先の人物に
『御武運を』
とウィンクしてクランは席をたった。
「大尉、もう行かれるんですか?」
「まぁ、な。私は邪魔になりそうだからお暇するとしよう。後はお前の頑張り次第だ、頑張れよ少年」
「大尉?」
部屋を出るクランを視線で追っていくうちにアルトは部屋の入口に立っている人物にようやく気付いた。
「…シェリル」
S.M.Sの制服を身に纏ったシェリル・ノームの姿がそこにあった。
つづく
あとがき:先週放送分で急転直下となったマクロスF。
今後の展開を妄想しつつ、アルシェリをメインに考えたのが今回のお話だったりします。
せっかくパイロットを目指すようになった以上、シェリルにはS.M.Sに入って貰いたいなぁという強い思いがあります。
それもあって今回のお話を書きました。
早くに続きを書きたいところです。
7月9日追記:タイトルを変更しました。
直訳すれば
「片羽の妖精」
というタイトルです(判る人にはわかるネタです)