ブラームス:ピアノソナタ第2番
パガニーニの主題による変奏曲
ピアノ:クラウディオ・アラウ
録音:1973年6月27日~29日(ピアノソナタ第2番)
1974年3月19日~22日(パガニーニの主題による変奏曲)
発売:1976年
LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) X‐7626(9500 066)
ブラームスは、生涯に3つのピアノソナタを残している。これらはブラームス初期の作品であり、その後作曲された名曲の森に比べれば、多少影が薄い存在になるのは止むを得ないところであろう。それに若書きのためであろうか、曲の持つ深みがピアニストの力量に大きく左右されてしまう。今回のLPレコードは、3曲あるブラームスのピアノソナタの第2番をチリ出身の名ピアニストであったクラウディオ・アラウ(1903年―1991年)が弾いた録音。結論を言うと「こんなにブラームスのピアノソナタが奥深く、美しい響きを奏でる曲であったとは驚き」ということになる。アラウのピアノは、ドイツ音楽の伝統に立脚したもので、実に堂々と真正面から巨匠の佇まいで弾き進む。さらにアラウのピアノの演奏が優れているのは、ぎすぎすした所がまるでなく、新鮮な果物のような、全体が艶やかな演奏となっていることであろう。 このことは、パガニーニの主題による変奏曲の演奏により一層当てはまる。聴きなれた曲が、アラウの演奏で新鮮な曲に生まれ変わり、馥郁とした香りを辺りに漂わす。クラウディオ・アラウは、7歳の時にベルリンに留学し、リストの晩年の弟子であったマルディン・クラウゼに師事した。そして1914年にベルリンでデビューを果たす。1970年にボンで開かれたベートーヴェンの生誕200年祭において、ピアノ協奏曲の独奏者に選ばれ、これにより当時最高のベートーヴェン弾きであることを実証した。アラウは、ドイツ的な要素とラテン系の要素の両方を持っているピアニストであった。ラテン的な輝く音色に加え、しっかりとした構成を持ってロマンの香り豊かな男性的な力強い表現力が、他のピアニストを大きく凌駕する点であった。そんなアラウがブラームスを弾くと、ドイツ的な重厚さに加え、ブラームスが憧れた南国的な明るさとのコントラストには筆舌に尽くせない美点がある。このLPレコードのA面に収録されているブラームスのピアノソナタ第2番は、ピアノソナタ第1番op.1より前に書かれた作品で、現存するブラームスの作品では、スケルツォop.4に次いで古い。1852年11月に完成され、翌年知り合ったシューマンの妻クララに捧げられた。B面のパガニーニの主題による変奏曲は、ブラームスがウィーンへ移住した1862年に秋に着手され、翌年完成した作品。ブラームスは、この曲を一種の練習曲として作曲したようだ。ヘンデルの主題による変奏曲とフーガop.24と並んでブラームスの変奏曲として、よく演奏される曲。(LPC)