★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ブルーノー・ワルター指揮コロンビア交響楽団のブラームス:交響曲第4番/悲劇的序曲

2022-05-16 09:45:01 | 交響曲(ブラームス)


ブラームス:交響曲第4番
      悲劇的序曲

指揮:ブルーノー・ワルター

管弦楽:コロンビア交響楽団

録音:1959年2月2、4、6、9、12日(ブラームス:交響曲第4番)
   1960年1月23日(ブラームス:悲劇的序曲)

発売:1979年

LP:CBSソニー 23AC 553

 コロンビア交響楽団とは、名指揮者ブルーノー・ワルターが引退したことに対して、是非ともステレオ録音を残してほしいという要望に応えて、臨時に結成されたオーケストラの名前である。このような例は、過去に例がなく、如何にワルターが当時愛された指揮者であったかを裏付けるものである。その一連のワルター指揮コロンビア交響楽団の録音の中でも、特筆されのが今回のLPレコードである。ブラームス:交響曲第4番の録音は、実にゆっくりとしたテンポで演奏される。何かワルターが自らの心の奥にある思いを吐露したような深遠さがある。この歴史的名録音を聴いていると、ワルターがこれまで自分が辿ってきた指揮者人生を振り返えり、そして最後に辿りついた結論がそこにあるような、誠に含蓄に富んだ演奏内容になっている。こう書くと何か単に後ろ向きの演奏内容に思われるが、ワルターの指揮は曲の持つ無限の可能性をオーケストラから引き出そうとし、その結果、一段と高い精神性を持った演奏内容となっている。このLPレコードのライナーノートで門馬直美氏は「ワルターの音楽の世界 つねに微笑を忘れず」というタイトルの文章を寄せているが、同氏はその中でワルターの演奏には「柔和な微笑の感じがいつも秘められている」と書いている。文字通り、このLPレコードでワルターは、“柔和な微笑”の指揮ぶりを、我々リスナーに存分に聴かせてくれる。ブルーノ・ワルター(1876年―1962年)は、ドイツ出身の20世紀を代表する指揮者の一人。ベルリンのシュテルン音楽院を卒業後、最初はピアニストとしてデビューしたが、その後、指揮者に転向。1896年ハンブルク歌劇場で、当時音楽監督の地位にあったグスタフ・マーラーに認められる。その後マーラーとともにウィーンへ転任。ウィーン宮廷歌劇場(ウィーン国立歌劇場)楽長、ミュンヘン宮廷歌劇場(バイエルン国立歌劇場)音楽監督、ベルリン市立歌劇場(ベルリン・ドイツ・オペラ)音楽監督、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団楽長などを歴任。第二次世界大戦後はヨーロッパの楽壇に復帰すると同時に、ニューヨーク・フィルハーモニックの音楽顧問を務めるなど、欧米で活躍した。1960年に引退したが、CBSレコードが、ワルターの演奏をステレオで収録するために、ロスアンジェルス付近の音楽家によるコロンビア交響楽団を特別に結成し、一連の録音が行われた。ワルターは、一度も日本を訪れることなく世を去ったが、日本人が最も敬愛する指揮者であったことは間違いない。(LPC)


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