★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ギオマール・ノヴァエスのシューマン:「謝肉祭」「子供の情景」「蝶々」

2021-07-08 09:42:37 | 器楽曲(ピアノ)


シューマン:「謝肉祭」op.9
      「子供の情景」op.15
      「蝶々」op.2

ピアノ:ギオマール・ノヴァエス

LP:ワーナー・パイオニア H-4953V

 このLPレコードは、シューマンのピアノ曲の名作「謝肉祭」「子供の情景」「蝶々」の3曲を、ブラジル出身の名女性ピアニストのギオマール・ノヴァエス(1895年―1979年)による演奏で収録したもの。最初の「謝肉祭」op.9は、1934年~1935年に作曲され、全部で22曲(スフィンクスは演奏されないので実質的には21曲)の小品からなる、シューマン初期の傑作として知られるピアノ曲。この曲は、「4つの音符による面白い情景」の副題を持ち、実らなかった恋の相手エルネスティーネ・フォン・フリッケンの出身地アッシュのドイツ語表記「ASCH」を音名で表記した音列に基づいており、「前口上」「ショパン」を除く全ての曲に、これらの音列のいずれかが使用されている。続く「子供の情景」op.15は、1838年に作曲されたピアノ曲で、第7曲の「トロイメライ」は特に名高い。シューマンは、30曲ほど作った小品の中から、13曲を選び出し「子供の情景」とした。子供という言葉から学習用のピアノ曲を連想するが、シューマン自身の言葉によると、この曲は「子供心を描いた、大人のための作品」であるという。そして3曲目のピアノ曲「蝶々」op.2は、1829年~31年に書かれた。シューマンは、愛読書であったジャン・パウルの長編小説「生意気盛り」の「仮面舞踏会」の情景を読んだ際に着想された曲と言われる。序奏と12曲から構成され、各曲には作曲者自身による標題が付けられている。このLPレコードのライナーノートで、「ニューヨークタイムズ」で活躍し、音楽評論家として初のピューリッツァー賞を受賞したハロルド・C・ショーンベルグ(1915年―2003年)は、ギオマール・ノヴァエスの演奏について次のように書き残している。「・・・彼女のように魅力的に繊細にしかも確かな指さばきで演奏するピアニストはいない。およそピアノの持つ語彙のすべてがこの小品に含まれていると言ってもよい。ある点では、それはノヴァエスの真髄である―その優美さ、自然な響き、音色的煌めき、直感的正しさなど。・・・例えば、『蝶々』は、このシューマン初期の作品のこれまでレコードになった演奏のうちで、もっとも偉大な演奏だと私は考える」。このLPレコードでのノヴァエスの演奏は、「謝肉祭」では、あくまで歯切れよく、それぞれの小曲の性格を明確に弾き分ける。また「子供の情景」では、幻想的な雰囲気がよく醸し出され、子供の頃を思い描かせる演奏。そして「蝶々」では、卓越した技巧で説得力充分の演奏内容だ。(LPC)


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