★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ミッシェル・ベロフのメシアン:ピアノ組曲「幼児イエズスに注ぐ20のまなざし」

2022-05-05 09:40:32 | 器楽曲(ピアノ)


メシアン:ピアノ組曲「幼児イエズスに注ぐ20のまなざし」

ピアノ:ミッシェル・ベロフ

LP:東芝EMI EAC‐70092

 オリヴィエ・メシアン(1908年―1992年)は、フランスの作曲家であり、同時にオルガン奏者、ピアニスト、さらには音楽教育者として数多くの著作も遺している。武満徹などもメシアンの影響を強く受けたといわれている。このLPレコードの「幼児イエズスに注ぐ20のまなざし」を聴くと、成る程、何となく武満徹の曲に似ている(実は武満徹がメシアンに似ているのだが)。メシアンの曲は、いずれもリズムの微妙な変化がその基調となっており、我々が慣れ親しんできたドイツ・オーストリア系音楽とは大分異なる音の世界がそこには展開する。メシアンは鳥類学者としての顔も持っており、世界各地で鳥の鳴き声を録音して歩いたという。全部で20曲のピアノ独奏曲からなる、この「幼児イエズスに注ぐ20のまなざし」は、メシアンの初期の傑作であり、メシアンの特徴が凝縮されている。これらのピアノ曲を聴くと何か異次元の世界に紛れ込んだかのような印象すら受ける。その異次元の世界はというと、ピアノの純粋な美しさに溢れ返っており、一度嵌るとその世界から容易には抜け出せないような気分に陥る。この曲は、1944年3月から9月にかけて作曲された。ドン・コルビア・マルミオンの「神秘のなかのキリスト」とモリス・トエニカの「12のまなざし」に着想を得て、メシアン特有の“カトリック神秘主義的音色”によって作曲された。演奏しているのが、フランスの名ピアニストのミシェル・ベロフ(1950年生まれ)である。10歳の時にメシアンの前でこの「幼児イエズスに注ぐ20のまなざし」を弾いて、メシアンを驚かせたというほどの早熟なピアニストである。ミシェル・ベロフは、パリ音楽院で学んだ。1966年に同楽院首席となり、翌1967年にパリで初めてリサイタルを開く。1967年第1回「オリヴィエ・メシアン国際コンクール」で優勝。1970年にパリで行ったメシアンの「幼な児イエズスに注ぐ20のまなざし」の全曲演奏は、イヴォンヌ・ロリオによる初演以後25年振りの全曲演奏として大きな注目を集めた。一時、右手を負傷したが、1990年代には再び両手で演奏できる状態に回復。2000年には東京・大阪でメシアンの「幼な児イエズスに注ぐ20のまなざし」の全曲演奏会を開催するなど、日本へは度々訪れている。このLPレコードでの演奏は、“メシアン弾き”ベロフの真骨頂が遺憾なく発揮されている。それに加え、LPレコードの音質が、惚れ惚れするほど美しいのが大きな特徴として挙げられる。(LPC)


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