<1話> <2話> <3話> <4話>
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五浦釣人像。地元でも有名な待ち合わせ場所で『いづらちょうじん』と読む。この像の作者である彫刻家の平櫛田中が福山の出身者ということで、山陽新幹線開通時にその記念として駅の南口に建てられたのだが、これはレプリカで本物の作品は茨城県の五浦美術文化研究所に所蔵されている。
茨城県の釣人が福山市の表玄関を飾るように、残念ながら福山には歴史的に著名な出身者はいない。
南口のロータリーに車を止める場所を探しながら、駅広場にある岡倉天心をモデルにしたという釣人像に目をやる。
像の前に彼は立っていた。午後の日差しに目を細めて、きょろきょろと落ち着かない様子で周囲を眺めている。そんな彼の姿を見ていると、愛しさがこみ上げてきて、私はまた泣き出しそうになった。
駅前を行き交う人は誰も彼に気づく様子はない。唯一、CASPAかアイネスにでも向かっているらしい女子中学生のグループが、彼をチラチラと見ながら歩いているくらいだった。彼女たちは彼を振り返っては、ヒソヒソ話し、弾けるように笑って通り過ぎていく。知っているアイドルによく似ていると思いながらも、まさか本人がたった一人でここにいるとは想像もつかないのだろう。
彼に一番近い場所で車を止めた。車から出ていってすぐに、彼が私に気がついたが、彼と視線が合った途端、私の足は止まってしまった。
私を見つめる彼の表情は、笑っても怒ってもいなくて、感情が何も読み取れない。不意にあの日のことが記憶から蘇って、私の足は完全に竦んだ。私は、彼が表情ひとつ変えずに歩み寄ってくるのを見つめながら、背中を向けて逃げ出したい気持ちをかろうじて押さえつける。
彼は、私から数歩分離れた所で立ち止まった。それは彼と私の気持ちの距離を表しているようで、私は心が挫けそうになりながら、ごめんなさいと言おうと息を吸った。
「俺な」
彼の方が先に口を開いた。私は言いかけた言葉をいったん飲み込んで、次の言葉を待ち構えた。
「俺……さっき、全然知らんおっちゃんに怒られた」
え?予想もしていなかった話の流れに、私は戸惑った。
「さっきおまえに電話した時な、あの……」と彼は五浦釣人像を振り返った。「あれの名前、俺が言うてたんを近くで聞いてたんやな。俺が電話切ったら、立派な大人がまだ読めんのか!って、めっちゃコワい顔してゆうねん。俺、ここの人間やないし、こんなとこまで来て、なんで初対面のおっちゃんに怒鳴られなあかんねん。もうめっちゃ凹んだわ。なあ、あれ何て読むん?」
彼の話を聞いているうちに、固く縮こまっていた体も心も力が抜けていくのを感じていた。
彼はまったく、いつもと同じ彼のままだった。表も裏もない。飾ることも繕うことも隠すこともない。ただ正直に、ありのまま私に向き合ってくる。それこそ、私が彼を愛してやまない理由だった。
いますぐに彼をギュッと抱きしめたい想いを堪えて、私は「いづらちょうじん」と答えた。
「え?いず…いず何?」
「いづらちょうじん。地元の人だって読めない人いるよ。知らなくても気にしなくていいから」
「でも、俺、怒られたもん。なんやねんな、俺、おまえに会いに来ただけやのに」
思いもしなかった彼の言葉に、私の中で堪えてきた想いが瞬く間に崩れた。気づいた時には、私は彼を抱きしめて、泣きながら何度もごめんなさいと繰り返していた。
彼の手が私の頭をポンポンと優しく叩く。
「俺が怒られたんは、おまえのせいやないやろ。それとも、あんな読みにくい名前、おまえがつけたんか」
ごめんなさいの理由は、もちろんそんなことではない。彼もそれを分かっているはずなのに、冗談で誤魔化したのは、その核心を避けたいからなのか、それとも彼の優しさなのか。私は半分泣いて半分笑いながら、首を横に振った。
車は県道を南下しながら、海へと向かっている。
自分が運転すると言って譲らない彼に車のハンドルを預けて、私はパリ行きが決まるまでのいきさつについて話した。
彼は私が話している間は一言も、相槌さえも発することなく黙って聞いていた。
話の流れで出さざるを得なかった田宮のことは、大学時代の同級生で、パリで偶然再会したことを説明しただけに留めた。その田宮についても、彼は何も聞かなかった。
話がひとしきり終わったところで、私が黙ると
「なあ……おまえ、これからずっと向こうで暮らすんか?」と聞いてきた。
おそらく彼が私に一番聞きたかった質問。でも、それに対する答えは私の中にはまだない。なんと言えばいいのか、私は逡巡した。そして、車が本土と田島を結ぶ内海大橋に入るのを見ながら言った。
「向こうに行ってみないと……わからないよ」
橋の向こうに、緑豊かな田島とそして真っ青な瀬戸内海に浮かぶ緑の島々が見える。瀬戸内に掛かる数ある橋の中でも、この内海大橋の美しさは五指に入るだろう。
「えっ?なんやこれ?」
彼がハンドルを回しながら声をあげた。
橋は海路の途中で大きくカーブを描いて、ほぼ直角に曲がっている。これがこの橋の大きな特徴だった。
「橋が曲がっとる。なにこれめっちゃ面白い!」
子供のようにはしゃぐ彼の声で、車内の空気が一変した。
「うっわぁ、ここ走るのめっちゃ気分ええな。爽快やで」
楽しそうな彼の笑顔を見ていると、心が温かくなっていく。いつまでもいつまでも、彼の笑顔を見つめていたかった。
大橋を降りきったところで、行き先が書かれた道路標識に目をやった彼があっと声をあげる。私は声を出さずに笑った。
「えっ、なにあれ、俺の海岸があるやん。横山海岸て!」
「うん」笑いながら頷いた。
「ちょっ行ってみてええか?」
「ええよ。だってそこに行こうと思ってたんだもん」
古来より瀬戸内海の商業と交通の要所だった田島には、往時を偲ばせる黒塀の古民家が閑静な町並みに立ち並ぶ。小回りの利く小型漁船が停泊する漁港と穏やかな海を眺めながら、海岸沿いに道なりに走っていった。
「なんやめっちゃ風情あるなあ」
対向車もほとんど来ない、長閑な県道を走らせながら、彼がしみじみと言う。
「福山、めっちゃええとこやん」
彼が笑顔で私に言う。その笑顔に、私も笑顔を作ってありがとうと返した。
やがて、この島と隣接する横島を結ぶ睦橋が見えてきた。かつては跳ね橋だったこの橋を越えて、目的地の横山海岸のある横島に入る。瀬戸内海の群島と美しい青い海を眺めながら、細い道を通って島を南下していった。
「うっわー絶景やなー!」
後続車がいないのをいいことに、時々車をゆっくりと走らせて、彼は海を眺めていた。防波堤の向こうに広がる穏やかな瀬戸内の海原は、夕暮れを迎えて黄昏色の柔らかい光を水上で反射している。
「冒険MAPでも来たことあるけど、やっぱり瀬戸内海ってホンマ綺麗な所やな」
しばらく走っていくと、横山海岸の目印とも言えるカラフルな絵が描かれた堤防が見えてきた。シーズンオフでも、この美しい海岸には釣り客などの車が数台停まっているのだが、さすがに夕方近いせいか、車は1台もなかった。
「あそこで停めて」と私は防波堤の切れ目、砂浜に降りられる場所を指した。
「ここは駐車場とかないん?」車を停めて彼が聞く。
「あるけど、シーズンオフはないから路駐になるの」
車のドアを開けると、潮騒の音と磯の香りが一斉に車内に入ってきた。
「なにこれ、横山海岸めちゃめちゃ綺麗やん」
「他にもビーチはあるんだけど、私はここが一番きれいって思ってる。透明度も高いし。意外と穴場なんだよ」
「今も俺ら以外、誰も人おらんしな」
潮風が耳元をなぶる。聞こえてくるのは、砂浜を静かに洗う波の音だけだった。備後灘を挟んで横島と向かい合う因島と弓削島が、夕暮れの背景にシルエットを作り、島の海岸沿いには、街の灯りが瞬き始めている。
「水、冷たいかな?」
そう言って彼が裸足になって、海岸に下りていくのを見ていた。海水に両足をつけた彼が、私の方に振り返る。
「意外とあったかいで」
いくら温暖な瀬戸内海とはいえ、10月も下旬なのに?
彼が来いよと手招きしているので、私も裸足になって、ジーンズの裾を巻き上げた。
彼が砂浜に作った足跡の上を踏んでいきながら、彼のいる波打ち際まで近づいた。透明度の高い水の中に、つま先からそっと入ろうとした途端、彼の手が私の手を掴んでぐいと引っぱった。両足から海に突っ込んだ私の足先から、水の冷たさが一気に体を走り抜ける。
「いやっ冷たいっ」
急いで水から出ようとする私の手を、彼は笑って離そうとしない。
「嘘つき。冷たいじゃん」
「嘘やないって。氷水よりはあったかいやろ」
「その基準おかしいから」
彼は私の手を離して屈み込むと、服の袖が濡れるのも気にせずに、水をバシャバシャとかけてきた。
「ちょっやめてよ。服濡れちゃうし」
「海言うたら、こうゆうのんが恋人たちの約束事やろ」
「夏ならわかるけど、今頃こんなんするのは、恋人たちじゃなくて変人たちだって」
言い返しながら、私も両手を海に突っ込んで、冷たい水をお返しすると、彼の笑い声と一緒に倍のお返しが返ってきた。それからは、私も彼も服が濡れるのを忘れて、子供のように夢中になってはしゃぎまくった。
その時、沖合を大型の貨物船かタンカーでも走行したのだろうか、一際高い波がひざ下までかぶってきて、驚いた私たちは慌てて砂浜へと飛び退いた。
「なに?いまの。びっくりしたぁ」
「あの船」と、私は遥か海上を行く貨物船のシルエットを見つけて、指差した。
「ここ、タンカーとか大型船舶の航路だから」
「ああ、それで今みたいな波が起きるんか」
彼は砂浜に腰をおろしながら、「船って夜中も通るん?」と尋ねてきた。
「たぶん。通ってると思うよ」
燃えるような橙色に染まった空には、藍色の闇がその境界線を滲みながら迫ってきている。それを見て、ふとあることに思い当たった。
私は彼の隣に座り、海を静かに眺めているその横顔を見た。ついさっきまで見せていた、子供のように無邪気な表情とはまったく違う、穏やかな大人の男の顔にハッとさせられる。
「ねえ気になってるんだけど」
「何が?」
「今日、帰るの?」
「帰るってどこに?」
「どこって……大阪だか東京だかわかんないけど、一晩ここで過ごすわけじゃないでしょ」
彼が私の方を向いた。
「おまえはどうなん?俺にどうしてほしいん?」
夕闇の薄暗さが、ベールのように私と彼の間に立ち込めている。恥ずかしがり屋の彼にしては珍しく、私から視線をはずさない。彼に真っ直ぐ見つめられ、鼓動が早くなった。寄せては返す波の音に、私は呼吸を合わせようとした。
「私……」
言いかけて、でも言葉が続かない。彼への想いは今にも溢れ出そうなのに。
不意に空気の色が変わった。夜の帳が暗幕のように降りてきて、私たちを包み込む。
私は彼の顔に手を伸ばして、そのなめらかで美しい頬に触れた。彼の表情がふっと和らぎ、次の瞬間、私は彼に強く抱きすくめられていた。
柔らかい砂の感触を背中に感じながら、彼の重みを全身で受け止め、耳元をかすめる彼の吐息に、体の奥が熱く潤っていく。感情のままに思わず零れかけた私の声は、彼のキスで封じ込められた。
夜の静寂、波音の向こうに島々の灯りが揺れ、漆黒の空にはたくさんの星が零れ落ちそうなほど瞬いている。私が夜空を見上げていると、
「星、めっちゃ綺麗やなあ」
彼が感嘆の声をあげながら、車からビニールシートと懐中電灯を手に戻ってきた。
「車ん中でええもん見つけた」
「ええもん?」
「ジャジャーン。これや」
満面の笑顔で、チャッカマンもあったでと、彼が私の目の前に出してきたのは花火セットだった。これは、夏休みに地元の友人たちと田島のビーチで遊んだ時に残った花火ではなかったか。車のトランクに入れっぱなしだったことすら忘れていた。
「え?こんな時期に花火?」
「ええやん。俺ら、花火デートとかしてないやろ」
と言いながら、広げたビニールシートの上に、花火セットの中身を並べていく。
「どれから行こか?」
そう聞きながら、やっぱり定番行くか、と普通の手持ち花火を私に手渡した。
火をつけた花火はパチパチと音を立てながら、夜の闇に、小さな火花をたくさん放って光の帯を作り、白い煙がスモークのように立ち込めては、微かな潮風に少しずつ流されていく。花火に照らされる彼の顔には、まるでギリシャ彫刻のように光と影が作られている。その美しさに見とれていた私に、彼がこっちを向いて、私の持っている花火を指差した。
「俺に見とれてんと、それ、もう消えとるで」
「見とれてないって」
「ええよ、見とれてたやろ」と笑って言う。「次、どれにする?」
予測不能な仕掛け花火の動きに、はしゃいで逃げ回ったり、線香花火が消えるまでの時間を競争したりしながら、私たち2人は、秋の夜の肌寒さも、刻々と過ぎていく時間も忘れて、童心にかえったように遊んだ。
笑いながら振り返って見たシートに残っている花火が、あと一つだけだと気づいたときに、私は残された時間が間もなく終わろうとしていることを予感した。
「これで最後やな」
彼が最後に残った打ち上げ花火を、海に近い地面に置いて砂で固定しているのを見ながら、締め付けるような切なさに息苦しくなっていく。火をつけて、走って戻ってきた彼は、私の手をとってシートに座った。「特等席やで」
しばらくして、ひゅるるるという音とともに打ち上げ花火が上空に上がる。派手な音をたてて色鮮やかな華が夜空にいくつも咲いた。キラキラと舞い落ちる火の粉は、地面につく前に消えていく。少し間を置いてまた花火が上がった。
「季節はずれの花火大会やな。近所の人が見に来るんちゃうか」
「……」
「誰かが来る前に、またチューするか?」
首を回して、隣の彼を見た。そっと押しつけられた彼の唇が、ゆっくりと離れるのを感じながら、私は彼の目を見つめて言った。
「……パリに行くの、やめる」
彼がはっとした顔をした。
「なんで?」
「やめる」
「なんで、やめる?」
「行きたくなくなった」
彼が戸惑いをその顔に浮かべて、私から視線を外して唇をなめた。
「それは……なんで、行きたなくなったん?」
「だって無理……」
「何が」
「無理だよ……」
「何が無理やねん」
わかってくれない彼がもどかしかった。いや、わかっているのに、分からないふりをしている。
「誤魔化さないで。わかってるでしょ」
彼は打ちあがった花火に目を向けた。その白い顔をカラフルな花火の色が照らしている。
「……私、別れたくない。離れて暮らすのもいや。最初は大丈夫って思ってたけど、無理だってよくわかった」
「……」
「パリには行かない。だから終わりになんてしないで」
私は、無言のまま、花火を見ている彼の手を握りしめた。彼の表情は変わらない。静かに花火を見つめているままだった。私もそれ以上何も言わずに、花火に目を向けた。
そして、最後の花火が夜空に咲いて、パチパチと儚い音を立てながら火の粉が消えていった。同時に周囲は闇に包まれた。
と、彼の手が私の手を握り返してきた。
「パリ、行ってこいよ」
「え……?」
「自分の力を試してみたいんやって、さっき言うてたやん」
「それは……もういいよ」
「俺のために自分の挑戦をあきらめるとか、めっちゃ気分悪いわ」
「ううん、そうじゃなくて……」
「じゃあ、行ってくればええやん。パリで仕事すんの夢やったんやろ」
私は、首を横に振った。「やだ。行かない」
「パリに行くんなら、別れようなんて、俺、ひとことも言ってへんで」
「違うの、離れたくないの」
「日本にいても、ずっと会わん時とかあったやろ。それと何が違うねん」
「でも、会える時間が減るし……」
「さっき、夏休みとクリスマス休暇あるて言うてたやん。そん時に会うんじゃアカンのか」
「クリスマスなんて、そっちはめっちゃ忙しい時期じゃん。会う時間なんてあるの?」
「時間はあるもんやなくて、作るもんやで」
「……いまドヤ顔したでしょ」
「ええこと言うたな、俺」
「私、真面目に話してるのに!」
彼が私の方を向いた。暗闇ではっきり見えなくても、顔が笑っていないことはわかる。
「ええか。こっちは死ぬ気で時間作るからな。おまえもその覚悟で来いよ」
「……」
「ほら。わかりました、は?」
「……」
「わかりました、は?」
泣きたかった。声を出して泣きたかった。私から離れていくというのに、彼は待っていてくれる。彼が望むなら、恋人候補がたくさん手を挙げるはずなのに。
「……ねえ、本当にパリに行っていいの?」
「言うたやろ。行くななんて、俺、一度も言うてへんて」
「……ずっと、ずっと離れてても、私のこと、忘れたりしない?」声が震えた。
「なんで忘れるねん。俺、そこまでアホやないで」
目の奥がじわりと熱くなった。涙が零れ落ちそうな気配に、私は泣き顔を見られたくなくて、彼に抱きついた。周りは真っ暗で、お互いの顔さえよく見えないのに。
「おまえこそ、俺のこと忘れたら承知せんからな」
そう言って、彼が強く抱き返してきた。私は彼の肩口に頬を寄せて、何度もうなずきながら、いつしかその温かい腕の中で眠りに落ちていた。
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手荷物検査を終えて、搭乗口に向かっている時に電話が鳴った。田宮からだった。
― もうそろそろ、搭乗時間かなと思って。
「わざわざ、ありがと」
― 予定通りのフライト?
「遅れはないみたい」
― 了解。それじゃ、のちほどド・ゴール空港で。
電話を切った私は、ふと思い立って、彼に電話をかけた。日本を発つ前に、もう一度、彼の声が聞きたくなった。
― もうパリに着いたん?
いきなり何を言うのかと思ったけれど、そういえば、パリに着いたら電話するから、と言って別れたんだったっけ。
あの夜、寝入ってしまった私を彼が車まで運んで、一晩、車の中で夜を明かした。そして、翌朝、彼が新幹線に乗り込むまで見送った。その時にそんな話をしたのだった。
「ううん。今から出発。ちょっと声が聞きたくなっただけ」
― なんや、もうホームシックか?
「そっちこそ。寂しがらないでよ。意外と繊細なの知ってるんだから」
― なに言うとんねん。俺はぜんぜん平気やで。
「次、会うのはクリスマス休暇だよ。大丈夫?」
― ツアー中やな。おまえ、名古屋は来るん?
「うん」
― そっか。楽しみにしててな。
「うん」
前と何一つ変わらない会話。たとえ遠く離れても、心を通わす方法はいくらでもあることに、今更ながら気づかされる。パリも日本も、空はひとつに繋がっている。
「それじゃ、行ってくるね」
Fin
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えーと。
最終話、いかがでしたでしょうか。
特に語ることはありませんが、なんだかベタな恋愛ドラマみたいになってしまったことだけは、謝りたいと思います。そして、東京ドーム公演が終わるまでに書き終わらなかったことも。
名古屋、の話が出ましたので、近いうちに、またお届けできるのではないかと。
楽しみにしててくださーい!!
というわけで、明日、名古屋に行ってきまーす!
横山さんに狩られてきまーす!(笑)