14日、立命館大阪キャンパスで、立命館プロムナードセミナー「大阪・京都文化講座『大阪・京都の風土と景観』」の5回目を受講しました。「大阪のインナーシティと都市再生の課題」と題して大阪大学大学院経済学研究科教授の高山正樹さんが講義しました。概要は以下の通りです。インナーシティとは、大都市圏における人口の郊外化とともに、中心市の都心部周辺地域が負の変化を起こした状態とかその問題自体を指す。
英国のインナーシティ白書(1977) ロンドン・ドッグランドは大英帝国繁栄の象徴的場所で、輸送革新に伴い衰退した。象徴的な場所としてウオーターフロントの再生を行った。カナリー・ウオーフを中心に金融業務地化(バンク機能の移転)、ドック周辺の労働者住宅地の再生と優良市街地への再生、ロンドン・シティ・エアポート、O2などコンベンション、メッセなどの新機能を創出した。インナーシティの形成 戦前期(特に大正期)に大阪東部の区を中心に町工場の立地による住工混在地域、臨海部の工場専用地、都心区(北区、中央区、西区)を除く区部。これらの地域が高度成長終焉後に衰退した。優良企業が流出し、人口の郊外化(私鉄沿線へ人口の流出)、釜ヶ崎(あいりん地区)が存在した。人口動態 2005年~2010年の大阪市の人口増加は37,560人。人口増加は主に都心区(中央区、西区、北区、浪速区、福島区)で、マンション建設に伴う社会増加(2000年以降)である。他の大都市に比べて年少人口に対して高齢者の割合(老年化指数)が高い。労働人口、雇用者数(常住地)の減少、昼間就業者の減少、サービス業就業者の増加。失業者数が多く、失業率、特に若年者の失業率が高い。総人口に占める外国人数の割合は高いが、外国人数(約10万人)には大きな変化はない。被保護所帯・人口 全国的に保護世帯・人口は増加、政令都市などの大都市部で増加。特に大阪市を中心に大阪府下では増加。地域的には釜ヶ崎を含むインターシティ。このことが大阪市財政負担の一因である。経済、財政の現状 卸小売産業とサービス業が中心で、製造活動が衰退した。市税収入の減少(平成23年度歳入、1兆7205億円)の一方で扶助費や公債費が上昇し、経常収支比率が上昇(100以上)し、財政構造が硬直化した。この背景には税の配分構造、行政の仕組みという基本的問題と大都市圏経済という問題がある。経済のグローバル化や産業構造の高度化への立ち遅れがある。大阪再生へ 外国人も含めて若者から高齢者まで多様な年齢の人々が住み、住民にとっては、美しいと感じることのできる街、憩える街、住んで楽しい街の創造が求められている。そして、来訪者にとっては、再訪したい、住みたいと思える街づくりを考える必要がある。 生活を支える仕事(産業)の創出も必要である。現下の経済活動のグローバル化を考えれば自ずと経済成長戦略分野(集客・観光、環境・エネルギー、健康・医療、クリエーティブ・デザイン)が求められる。
英国のインナーシティ白書(1977) ロンドン・ドッグランドは大英帝国繁栄の象徴的場所で、輸送革新に伴い衰退した。象徴的な場所としてウオーターフロントの再生を行った。カナリー・ウオーフを中心に金融業務地化(バンク機能の移転)、ドック周辺の労働者住宅地の再生と優良市街地への再生、ロンドン・シティ・エアポート、O2などコンベンション、メッセなどの新機能を創出した。インナーシティの形成 戦前期(特に大正期)に大阪東部の区を中心に町工場の立地による住工混在地域、臨海部の工場専用地、都心区(北区、中央区、西区)を除く区部。これらの地域が高度成長終焉後に衰退した。優良企業が流出し、人口の郊外化(私鉄沿線へ人口の流出)、釜ヶ崎(あいりん地区)が存在した。人口動態 2005年~2010年の大阪市の人口増加は37,560人。人口増加は主に都心区(中央区、西区、北区、浪速区、福島区)で、マンション建設に伴う社会増加(2000年以降)である。他の大都市に比べて年少人口に対して高齢者の割合(老年化指数)が高い。労働人口、雇用者数(常住地)の減少、昼間就業者の減少、サービス業就業者の増加。失業者数が多く、失業率、特に若年者の失業率が高い。総人口に占める外国人数の割合は高いが、外国人数(約10万人)には大きな変化はない。被保護所帯・人口 全国的に保護世帯・人口は増加、政令都市などの大都市部で増加。特に大阪市を中心に大阪府下では増加。地域的には釜ヶ崎を含むインターシティ。このことが大阪市財政負担の一因である。経済、財政の現状 卸小売産業とサービス業が中心で、製造活動が衰退した。市税収入の減少(平成23年度歳入、1兆7205億円)の一方で扶助費や公債費が上昇し、経常収支比率が上昇(100以上)し、財政構造が硬直化した。この背景には税の配分構造、行政の仕組みという基本的問題と大都市圏経済という問題がある。経済のグローバル化や産業構造の高度化への立ち遅れがある。大阪再生へ 外国人も含めて若者から高齢者まで多様な年齢の人々が住み、住民にとっては、美しいと感じることのできる街、憩える街、住んで楽しい街の創造が求められている。そして、来訪者にとっては、再訪したい、住みたいと思える街づくりを考える必要がある。 生活を支える仕事(産業)の創出も必要である。現下の経済活動のグローバル化を考えれば自ずと経済成長戦略分野(集客・観光、環境・エネルギー、健康・医療、クリエーティブ・デザイン)が求められる。