これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

アメリカの連邦と州の制度 (3)

2023-12-23 15:08:33 | アメリカ
【はじめに】
 アメリカは地下資源に恵まれており、広大な農地が有るので穀物も肉類も不自由しない国です。自然科学、先端工業技術の面でも、世界をリードする国です。然し、国家と国民が、『身の丈に合わない贅沢な暮らし』をするので、貿易収支も財政収支も大幅な赤字が続いています。

 アメリカは、(日本と違って)21世紀になっても経済は発展し→→GDPが増加し→→歳入も増加ています。然し、歳入よりも歳出が増加するので→→国債の残高は増加し続いています。 50州の財政状況についての適当な資料が見つからないのですが、「各州の財政状況は連邦政府と同様では?」と思います。

 日本は『地方交付税』と言う名目で徴税して、地方公共団体に国が金を配る制度を採用しています。「国の方針に従わないと、交付金を減らすぞ!」と脅せるのです! アメリカの場合は州の独立性が高いので、基本的には各州が独自に徴収制度を設け、税率も各州が決めています。

 国民感情は、「他国の為に使う金を減らして、より豊かな暮らしをしたい!」、「アメリカ・ファースト!」の方向に変化してきています。トランプ氏はその流れをキャッチして→→選挙公約に取り入れ→→2016年の大統領選挙に勝利しました。トランプ氏は2020年の選挙では敗北しましたが、「アメリカ・ファースト!」を支持する人は増加しても、減ってはいません。

 ウクライナへの軍事支援の予算は枯渇してしまった様ですが、共和党が下院の過半数を維持する限り→→ウクライナへの軍事支援が再開するとは考えられません。日本国民は「他人事だ!」などと悠長に構えていては駄目です。「アメリカ・ファースト!」の行き着く先は、「外国に駐留するアメリカ軍の縮小→→撤退」です。『自分の身は自分で守れ!』 万一有事になった時、「日本を守る事が、アメリカの国益になる」と時の大統領が判断した場合のみ、軍事支援をしてくれると予想しています。

・・・ 関連投稿 ・・・
★ 『アメリカの連邦と州の制度(1)』 :投稿日;2023年11月11日
★ 『アメリカの連邦と州の制度(2)』 :投稿日;2023年12月4日
★ 『アメリカは白人国家では無くなります!』 :投稿日;2023年11月4日

【合衆国の予算】
 アメリカの2024年度とは、23年10月1日~24年9月30日の事です。(日本の24年度は、24年4月1日~25年3月31日です。) 従って、アメリカは既に『2024年度』に入っています。

 連邦政府は翌年度の予算案(予算教書)を毎年「2月の第一月曜日」に下院に提出します。来年度(2024年度)の予算案は、2023年の2月6日に提出されました。

 バイデン大統領は民主党で、下院は共和党が多数を占めています。下院に「予算の先議権」が有り、共和党が24年度予算案に反対したので→→23年9月30日までに、下院で議決されませんでした→→11月17日までの『繋ぎ予算』→→24年2月2日までの新たな『繋ぎ予算』を成立させました。 (24年2月5日には25年度の予算教書が提出されますが、それまでに、24年度の予算が決まるか?怪しい状況です。)

 予算に関する、日本とアメリカの制度の違いを御参考までに書いておきます。

《相違点❶ :予算の審議期間》 ヨーロッパ諸国で議会制度が始まった時、「国王が独断で国家の金を乱費するのを制限する」のが議会の主な役割でした。アメリカも建国以来、両院で予算の審議が十分行える様に、政府が毎年「2月の第一月曜日」に予算教書(予算案)を提出し→→9月30日まで両院で審議出来る様にしたのだと思います。

《相違点❷ :下院の先議権》 アメリカでは予算は両院の承認(決議)が必要ですが、予算案の審議は下院から始める事になっています。そして、下院の議長が下院で審議に入る法案を決めます。今年(2023年)は、下院での予算審議がナカナカ始まらず、政府案が否決されたので→→2回も繋ぎ予算を決める事になったのです。

 日本の場合は、憲法第60条で衆議院に予算の先議権が有ります。参議院が衆議院と異なる議決をした場合→→両院で協議して→→両院の意見が纏まらなかった時は→→衆議院の決議が採用される事になっています。換言すると、予算案は衆議院を通過したら「通った事」になります。

《相違点❸ :義務的支出と裁量的支出》 利払費や福祉費などの予算は、毎年審議するのでは無く上限が決められており、『義務的支出(必須予算)』と呼ばれています。従って、現在は繋ぎ予算で国が運営されていますが、歳出の約70%は義務的支出ですから、何とか国が運営出来ているのだと思います。

 毎年両院で審議するのは、歳出の約30%を占める『裁量的支出』です。裁量的支出中で最も高額なのは軍事予算です。2022年度の裁量的支出の『45%』が軍事予算でした。

 共和党は、2024年度予算案の内、ウクライナへの支援予算に反対しています。(イスラエルへの支援は認めている様です。) 私の予想では、2024年11月に実施される選挙までウクライナへの支援予算は認められないと思います。次の選挙でも、共和党が下院の過半数を得たら、ウクライナには支援しなくなるでしょう!

・・・ 2022年度の国家予算 ・・・
★ 支出合計≒60,120億ドル  (100%)
★ 裁量的支出≒16,880億ドル (28%)
★ 義務的支出≒43,240億ドル (72%)

《相違点❹ :国債の発行上限制限》 政府の要請を受けて、両院で「国債の発行残高の上限」を決め→→その枠内であれば、政府は議会の承認を必要としません。枠を超えて国債を発行する時は、新たな「国債の発行残高の上限」を議会に要求します。

・・・ 2022年度の国家予算 ・・・ 出典:外務省 『アメリカ合衆国 2022年度予算教書』
★ 歳出 :60,110億ドル (100%)
★ 歳入 :41,740億ドル (69%)
★ 国債 :18,360億ドル (31%)

・・・ 2022年度の歳出の内訳 ・・・
(1) 裁量的支出 :❶と❷の合計 ・・・毎年両院の承認が必要。 (議会の裁量で決まる予算の意味で、大統領の裁量で使える予算と言う意味では有りません。)
❶ 国防費 :12.6%≒7,560億ドル (≒113兆円)
❷ 非国防費 :15.5%≒9,320億ドル

(2) 義務的支出 :①~⑤の合計 ・・・一度両院で承認されると、翌年からも自動的に認められます。増額したい場合は、新たに両院に認めて貰う必要が有ります。
① 利払費   :5.1%≒3,050億ドル (≒46兆円)
② 社会保険 :19.9%≒11,960億ドル
③ メディケア :12.7%≒7,660億ドル ・・・高齢者および障害者向け公的医療保険制度
④ メディケイド :9.5%≒5,710億ドル ・・・アメリカ合衆国連邦政府が州政府と共同で行っている医療扶助事業
⑤ その他 :24.7%≒14,860億ドル

(注記 :義務的支出の「⑤その他」) 「⑤その他」に含まれるのは、以下の❶~❹の予算です。
❶ 失業保険
❷ 退役軍人への給付金
❸ 連邦政府職員への年金と障害補償金
❹ 補助的栄養支援プログラム(通称フードスタンプ)

【裁量的支出の非国防費】
 裁量的支出の内、非国防費の項に含まれるのは、以下の❶~⓫の費用です。

❶ 農業
❷ 商務、司法、科学
❸ エネルギー、水資源
❹ 国防総省
❺ 財務
❻ 内務、環境保護
❼ 労働、保健社会福祉、教育
❽ 立法府
❾ 軍事建設、復員軍人
❿ 国務、外交
⓫ 運輸、住宅及び都市開発
出典 :立法情報 『【アメリカ】 2015 会計年度歳出予算の成立』

【アメリカの財政状況】
 2002年から22年の21年間のアメリカの財政について考察してみます。 (巻末に、御参考までに、2002年から22年の日本の財政について書きました。)

 アメリカは財政収支の赤字が続いて→→毎年!毎年!国債を発行して→国際残高は膨大な額になっています。 日本も同様です!

 日本とアメリカの財政状況には大きな違いが有ります。日本は、バブル景気が崩壊した1993年頃から、名目GDPが殆ど増加しなくなってしまいました。一方、アメリカのGDPは毎年増加して、21年間で『2.3倍』になっています。

 GDPが増加すると税収も増加します。アメリカの歳入は、2002年を100とすると、2022年には『234』になっています。日本の場合は、消費税などの税率をアップしましたが『141』にしかなっていません。税率をイジルのでは無く→→景気を良くして→→GDPを増やし→→税収を増やす施策が必要なのです。

・・・ アメリカのGDPと財政 ・・・ 出典:経済のネタ帳
★ アメリカの名目GDP :02年≒10.9兆US$、07年≒14.5兆US$、12年≒16.3兆US$、17年≒19.5兆US$、22年≒25.5兆US$
★ アメリカの名目GDPの推移 :02年=100%、07年≒133%、12年≒150%、17年≒179%、22年≒234%

★ アメリカの歳入 :02年≒3.26兆US$、07年≒4.58兆US$、12年≒4.73兆US$、17年≒5.97兆US$、22年≒8.29兆US$ ・・・私が作成しました。
アメリカの歳入(対GDP比)  :02年≒30%、07年≒32%、12年≒29%、17年≒31%、22年≒33%

★ アメリカの歳出 :02年≒3.68兆US$、07年≒5.00兆US$、12年≒6.05兆US$、17年≒6.94兆US$、22年≒9.23兆US$
アメリカの歳出(対GDP比)  :02年≒34%、07年≒35%、12年≒37%、17年≒35%、22年≒36%

★ アメリカの財政収支 :02年≒-4,169億US$、07年≒-4,206億US$、 12年≒-13,168億US$、17年≒-9,352、22年≒-9,437 億US$

【御参考 :日本の財政状況】
 1993年頃にバブル景気が崩壊しました。1993年の日本の名目GDPは『505兆円』でした。約30年後の2022年の名目GDPは『557兆円』でしたから、『10%』しか増加していません。

 GDPが増加しないのに、高齢化が進んで→→年金費、医療費や社会福祉費が増加するため→→税率をアップしたり、社会保険料をアップして→→歳入を増やして来ました。

 「1993年以降の日本政府の経済政策は間違っていたのだ」と私は思います。今は、政府と日本銀行は連携して、財政再建よりも『GDPを増加させる施策』を考え出して、実行すべき時です。

・・・ 日本のGDPと財政 ・・・ 出典:経済のネタ帳
★ 日本の名目GDP :02年≒524兆円、07年≒539兆円、12年≒500兆円、17年≒553兆円、22年≒557兆円
★ 日本の名目GDPの推移 :02年=100%、07年≒103%、12年≒95%、17年≒106%、22年≒106%

★ 日本の歳入 :02年≒147兆円、07年≒163兆円、12年≒152兆円、17年≒186兆円、22年≒208兆円
★ 日本の歳入(対GDP比)  :02年≒28%、07年≒30%、12年≒30%、17年≒34%、22年≒37%

★ 日本の歳出 :02年≒186兆円、07年≒179兆円、12年≒193兆円、17年≒203兆円、22年≒246兆円
★ 日本の歳出(対GDP比)  :02年≒35%、07年≒33%、12年≒39%、17年≒37%、22年≒44%

★ 日本の財政収支 :02年≒-38兆円、07年≒-16兆円、12年≒-41兆円、17年≒-17兆円、22年≒-38兆円