これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

電気料金の問題 (その2)

2022-10-29 21:42:39 | 社会問題
【はじめに】
 今回は、電力自由化によって廃止された『総括原価方式』について書きます。 次回、安倍政権が採用した電力自由化の問題点について書く予定ですが、「『総括原価方式』のどこが問題だったのか?」ご理解頂く必要が有るので、過去になった話しを敢えて書きました。

【電気料金の請求書】
 ”何気なく”電気料金の請求書を見ておられる方が多いいと想像します。 関西電力の家庭用電力の請求書には、次の❶~❻の金額が記載されています。❶~❺に消費税分が含まれているので、❶~❺の合計が請求金額になります。❶の金額は毎月同じですが、❷~❺の金額は電気の使用量によって変わります。

 ❹の燃料費調整制度とは 、火力燃料(原油・LNG〔液化天然ガス〕・石炭)の価格変動を電気料金に迅速に反映させるため、その変動に応じて、毎月自動的に電気料金を調整する制度です。

 ❺の「再生可能エネルギー発電促進賦課金」とは、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって電力の買取りに要した費用を、電気を使用する顧客から、使用量に応じて負担させる制度です。 換言すると、太陽光発電や風力発電で作った(高価な)電気を電力会社が買い取った場合は、赤字にならない様に電気料金をアップして良いと言う制度です。

 東京電力では『基本料金』と呼ぶ様ですが、関西電力では❶『最低料金』と呼んでいます。東京電力は、7種類の契約アンペア(A)数で基本料金を決めています。(10A、15A、20A、・・・60A) 関西電力は契約電力が『15kWh』までを『従量電灯A』、それ以上を『従量電灯B』として『最低料金』を決めています。 但し、『従量電灯B』契約の場合は、『kWh』では無く、馴染みのない『皮相電力(kVA)』が使用されています。(多くの方は、「何のこっちゃ?」と思われるでしょうか!)

《豆知識 :皮相電力(kVA)》 発電機、変圧器、電線などの容量(能力)は皮相電力(kVA)で、原動機(ガスタービン、蒸気タービン、ディーゼルエンジンなど)は有効電力(kWh)で決めます。

 交流の場合は、横軸を時間、縦軸を電圧値と電流値のグラフを想像して見て下さい。電圧と電流は、サインカーブで変化します。 理想は、電圧と電流が『0』になる時刻が同じになる事です。然し、実際は、『0』になる時刻が同じにはなりません。

 負荷が電動機(モーター)だと仮定すると、モーターで実際に消費される電力『有効電力(P)』、発電機を流れる電力『皮相電力(S)』、 発電機→→負荷(モーター)→→発電機とグルグル回る電力『無効電力(Q)』は次の式になります。

 有効電力(P)=皮相電力(S)-無効電力(Q)

 原動機は有効電力(P)分のエネルギーを発生する必要が有ります。発電機や送電系統は、皮相電力(S)に相当する電圧と電流に対応出来なければならないのです。無効電力(Q)の大小は、顧客が使用する機器によって決まります。 関電の『従量電灯B』契約が、『皮相電力(S)』をベースにしているのは理にかなっていると思います。電気代を下げる為に、顧客は無効電力(Q)を小さくする工夫と努力が必要なのです。

 電気を熱源として使用する電熱器などの無効電力(Q)は『0』になります。『誘導』と言う接頭語の付いた電気機器の無効電力(Q)は『0』にはなりません。

・・・ 関西電力の請求書 ・・・
❶ 最低料金
❷ 一段料金
❸ 二段料金
❹ 燃料費調整額 :税金ではありません。
❺ 再エネ促進賦課金 :税金ではありません。
❻ 消費税 :10% ・・・再掲と記載されています。

【総括原価方式】
 生活や産業に必要不可欠な物(電気、ガス、水道)の値段は、市場経済方式(需要と供給で価格が決まる方式)にすると安定供給が出来ません。 (新型コロナが流行り始めると、直ぐにマスクが店頭から消えてしまいました。 電気、ガス、水道の供給が止まったら、マスクとは比べ物にならない程の社会問題になります。)

 先人達は、大災害が発生しても!燃料の国際価格が高騰しても!電気、ガス、水道を安定供給する事を最優先課題だと考え、(大きな問題を内在する事を承知の上で)総括原価方式を採用したのだと、私は想像しています。

❶ 電気 :電気事業法第19条
❷ ガス  :ガス事業法第17条
❸ 水道 :水道法第14条

 電力会社が発電して供給するのに掛かる費用の合計を『総括原価(A円)』と呼びます。国が認める『利益率』を『B%』として、電力の予想販売量を『CkWh』とします。総括原価方式での電気代の本体価格『D円/kWh』は、次の式で計算します。

 総括原価方式での電気代 :D円/kWh=A円✕{1∔B%/100}/CkWh ・・・(1式)

【総括原価方式での利益】
 総括原価方式が認められた電力会社の利益(E円)は、次の(2式)になります。(1式)と(2式)に用いる総括原価(A円)は、実績値では無く予想値です。総括原価(A円)の予想値を水増しして大きく見積もると利益(E円)が大きくなります。然し、余り大きく見積もり過ぎると、国がイチャモンを付ける恐れが有ります。

電力会社の利益 :(E円)=A円✕(B%/100) ・・・(2式)

電力の予想販売量を『CkWh』を少なく見積もると、(1式)から電気代(D円/kWh)が大きくなります。従って、鉛筆を適当になめて予想販売量を少な目にして、沢山売ったら電力会社は儲かるのです。

【総括原価方式の問題点】
 上記の3っつの法律を検討していた時、政治家の一部と官僚達は、総括原価方式には問題点が有る事に気が付いていたと想像します。然し、経済安全保障(安定供給の確保)を最優先課題とすると、他に妙案が浮かばなかったのでしょう?! 先週投稿した様に、日本の電気代が高いので1995年に(電力10社には総括原価方式の電気料金を認めたままで、)部分的な電力自由化を実施しました。

問題点❶ :総括原価方式で、電力会社が利益を大きくする為には、燃料をマスコミが問題にしない範囲で、出来るだけ高く買えば良いのです。→→「少し安くなるかも?知れないスポット契約では無く、メンドクサク無い長期契約を主に採用しました。」→→ウクライナ戦争で燃料の国際価格が高騰しましたが、電力会社の購入価格は(国際的には)比較的安価と言う事になりました。

問題点❷ :電力自由化の前は、古くて効率の悪い設備が、電力会社にとっては『お宝』でした。燃料が沢山必要になりますから、総括原価が増えます。そして、点検/修理費として多額の予算が組めます。→→電力自由化が始まると、効率の悪い設備は厄介な『屑(ぐず)』になりました。→→ドンドン廃棄しました。

問題点❸ :総括原価方式が適応されていた時代(電力自由化の前)は、国が認める範囲で発電所を増設したり、新発電所を建設しました。→→総括原価が増えて、利益が大きくなるからです。→→電力自由化が始まると、稼働率を高くすると利益が増えるので、発電所の新設は殆どやらなくなりました。

 電力自由化によって、電力会社10社は、古い旧式の発電所を破棄して、発電所を新設しなかったので、去年から夏季と冬季の電力不足を心配しなければならない事態になったのです。

問題点❹ :発電設備と配電設備にはメンテナンスが不可欠です。その費用も総括原価に含まれます。従って、イチャモンが付かない範囲で、メンテナンス費を水増しすると電力会社の利益は大きくなります。某電力会社ではメンテナンスを随意契約にして、(工事内容を決めないで)毎年1月頃に翌年度の発注金額を決めていました。 金額が決まっているので、工事会社は仕事が少ない方が儲かる仕組みです。

《水増しの手段の一例》 発電所の塗装工事を見学した事が有ります。現場にペンキの入った一斗缶を沢山置いていましたが、聞いたことの無い塗料メーカーのシールが貼られていました。塗装業者がメーカーのシールを剥がして、「高価な特殊な塗料を使用している」と偽装していたのです。(その後、その業者を訪問した時、シールの貼り替え作業をしていました。)

問題点❺ :発電所(特に原子力発電所)の周辺の市町村に、電力会社は種々の名目で『金』を配ります。この金も総括原価に含まれ、国はイチャモンを付けません。 関西電力と故・森山栄治氏の問題を覚えておられますか?

《故・森山栄治氏の問題》 森山氏が関電の歴代の重役達に多額の金品を渡した事件は、種々報道されました。然し、関電と森山氏の関係は大昔からですから、まだ報道されていないヤバイ話しが沢山有るのでは?と想像します。

 森山氏が柳田産業の相談役に就任した経緯を、某氏から2010年に聞きました。「柳田社長と森山氏はほぼ同じ年齢で、性格が『水と油』の様に相性が悪い。関電から強い要請が有ったので仕方なく相談役に迎えた。」、「出社は年に何回かしか無く、仕事は一切しない。」、「関電は、将来、森山氏の協力を必要とする問題が発生するかも知れないので、複数の会社から給与が貰える様にした。」、「関電の為に、原子力発電所関係の胡散臭い事を色々やってきた様なので、口封じの意味で一生森山氏が金を得られる様にしているのでは?」・・・と言っていました。

 森山氏は瑞宝双光章を貰い、秘密を全て封印して2019年に90歳で亡くなりました。問題が報道される様になったのは、死後のことです。

★ 1987年~?年 :吉田開発(建設会社)などの顧問や副社長に就任
★ 1987年~18年 :柳田産業相談役・・・関電の原子力発電所の工事会社
★ 1997年~18年 :オーイング取締役・・・関電の原子力発電所の警備会社
★ 1997年~18年 :関電プラントの顧問
★ 2003年 :瑞宝双光章
★ 2019年3月 :森山栄治氏死去(90歳)
★ 2019年9月頃から :関西電力と森山栄治氏の問題が報道される様になった。

(余談 :高給料亭の御節料理) 某電力会社の発電所に出入りしている、メンテナンス会社(Y社)は、毎年年末の31日に、10万円ほどする高給料亭の御節料理を発電所関係の課長職以上の社員・数十名の自宅に届けていました。勿論、この金も総括原価に含まれます。 (この話は10年程前に、御節料理を届ける役をやっていたY社の複数の社員から聞きました。今でも続けている可能性が有ります。)

 「受け取って貰えない方もいるでしょう?」と聞いたら、「皆さん、待ってくれていて、喜んでくれる!」と言っていました。

 複数の都道府県に跨がっていたので、二人一組のチームを沢山作って、自分達の車で配達していた様です。「特別手当が出るのか?」と聞いたら、「日ごろお世話になっている方達に届けるのだから、会社からは一銭も出ないけど、皆、喜んでやっている」と言っていました。



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