今日も霜が降りた。
霜を見るとついつい志貴の皇子の歌を思い出す。
葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕は大和し思ほゆ
魅力的な万葉集の歌の中でもとりわけ志貴皇子の歌につよく共感を覚える。
志貴皇子は天武朝全盛の時、天智系の皇子として何ら重要なポストに就くこともなく、不遇な生涯を送った。
その歌には清涼感とある種の諦めが感じられる。
采女の袖吹きかえす明日香風都を遠みいたづらに吹く
この主流に乗れない傍観的な気持ちにとても魅かれた。
石ばしる垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも
にもかかわらず、そこに自分だけの喜びを、希望を見いだす。
そこにとても魅かれる。
志貴皇子は恵まれなかったけどその子は天皇になった(光仁天皇)。
そして孫(桓武天皇)は新しい時代、平安京を築いた。
孫の代になって、萌え出づる春が実現した。