星くず雑記

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「哀しみのコルドバ」の衝撃

2015年12月04日 22時23分32秒 | OSK・宝塚(OG含む)
雪組全国ツアー「哀しみのコルドバ」を観た。

申し訳ないのですが、雪組の方に思い入れがないので
純粋に作品を楽しめました。

強いて言えば、男役としては華奢だった大湖せしるが、
綺麗な大人のお姉さんにジョブチェンジして大活躍中なのが印象的でした。
咲妃みゆと望海風斗も、想像以上に迫力があって良かった。

台本や主題歌CDで想像していた以上に
宝塚以外ではあり得ない、
実にドラマチックで美しい物語で、
柴田先生の秀作中の秀作でした。




(以下ネタバレあり)
独白から始まるプロローグのSuite Española, Op.47 - Asturias
という曲が鳥肌もの。
主人公の独白が、緊張感を盛り上げる。

ストーリーは悲劇なので、切なくも激しく進行する。
初恋の女と再会し、主人公は闘牛士としての名誉を捨てようとする。
しかし、彼女と永遠に結ばれないことを知った主人公は、
悲壮な決意を胸に、引退試合に臨むのだった。

その直前である。

物語の序盤、主人公の親友は、
人妻と恋に落ち、闘牛士の地位を捨て、駆け落ちする。

その親友が、引退試合を控えた主人公の元を訪れ
近況を報告するのだ
「ふたりで小さな花屋をやってる」と。

引退試合の途中、主人公は自ら闘牛に身をゆだね
死を選ぶ。
そこにプロローグの独白がかぶさる
闘牛士の「栄光と死」、主人公はそれを体現するのだった…


ザッツ宝塚


いやー、
この「花屋をやってる」が凄まじいインパクトだった。

何という鮮やかな対比だろうか。

主人公がヒロインと結ばれないにしても、
二人で慎ましく暮らしました、めでたしめでたし
という結末は、まさに
宝塚のトップスターには許されないのである

宝塚の主役は、あくまでも美しく
そしてドラマチックでなければならない。

もちろん、穏やかな物語もあるし
微笑ましいハッピーエンドもある。そういう作品も好きだ。

だが、この「哀しみのコルドバ」は
宝塚でしか在り得ない、
華やかでドラマチック、切なくて激しい物語だ。

主人公はトップスターが演じる役故に
幸せな結末は許されなかったのである。

それが不自然だとかどうとかいう議論は無駄である。

宝塚とは、こういうものだ。

柴田先生の作品の中でも、傑作中の傑作で、
実に素晴らしかった。
現実世界を忘れて、激しい恋や慟哭のドラマを
楽しむことが出来ました。