「ガイズ&ドールズ」BD・DVD発売の日
宝塚の公式ショップはすごい行列だったらしい。
たまたま、その日、東京公演の「こうもり」を観劇したら
ものすごいアドリブだった。
北翔海莉扮する、才能はあるが垢抜けない青年が
ブロードウェイのエンジェル(これがまた強烈!)に導かれ
秘密授業を受けてスターに成長していくシーン…
ベニー・カメレオンから男の美学を学ぶ際
落ち着いた大人=老人に扮するところ。
北「DVDより生の舞台の方が良いと思うんだが」
紅「でもガイズは今やってないからじゃない?」
北「ビデオ撮りの日は、映像に残せないからアドリブもできないし」
といった趣旨の会話。
そして、観客に稔幸が来ていることに触れる、
長い長いアドリブでした。
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次公演で退団する、北翔海莉のトップ人生は短いものになる。
1999年の「ノバ・ボサ・ノバ」で早くもソロが与えられ、
中日公演「ベルばら」での2番手大羽と
順調に昇進していたはずが、
宙組での3番手、と言うよりは2.5番手と言って差し支えなかろう
期間が長く、まさかの専科移籍。2番手格とは言え
後輩たちの後塵を拝し続けながら
「メリー・ウィドウ」「風の次郎吉」と主演公演の成功。
すんなりスターになれた人たちと、どこで道を違えたのかな…
宝塚には香寿たつきといい、安蘭けいといい、
実力がありながらも2~3番手時代が長期化して
短いトップ人生となる人が少なくない。
良いように使えるからかな。
昔のことは、もう取り戻せないけれど・・・
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予約して手に入れた「ガイズ」BDは、満足の出来。
スカイは「救世軍の伝道師サラを口説けるかどうか」
(※と宝塚ではマイルドに表現されているが、実際は…)
という賭けに勝つため、サラは伝道所に「1ダースの罪人」を呼び込むために、
二人はハバナでデートをする。
ハバナに連れだしたサラに酒を飲ませて、泥酔させることに成功するが
予想外にサラが羽目を外し、スカイに甘えてキスをせがむ。
開放感の中で、二人の間に真実の愛情が生まれる。
という、1幕最後のシーンは、ロマンチックで美しい。
妃海風は歌が上手いわけではない。
だが声が美しく、耳に心地よい。
そして、親しみやすい「たぬき顔」で、
トップスターのファンからすれば、感情移入して応援したくなるような娘役である。
故に、甘える仕草が実に愛おしい。
そして、我らの北翔海莉である。
「こうもり」を見て思った。「ガイズ」を見て思った。
キスが優しい
唇を近づける(演技)の直前の眼差しが実に優しい。
そして、相手役の後頭部に回す手が優しい。
だからその場面全体が優美で甘い雰囲気になる。
私の中で「ガイズ」の萌えポイントは、
サラを追い回す時の「こっちの頬は空いてるぜ」と
言わんばかりのオラオラ感だったのだが、
BDではハバナ~教団前までをリピートする有様。
逆に、誤解の末のハッピーエンドはどうもイマイチ。
ここでは不思議と良かったねーと言う気持ちにはならない。
お互いの心が近づくか触れるかギリギリの、初々しさや優しさ
そしてときめきこそが、
みっちゃんの、そしてみちふうコンビの魅力であるように思う。
だから「こうもり」の、華麗な晩餐会の饗宴の中で、
思いがけず愛情が芽生えていく様も、じつに優しくて好き。
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そして気が付いた。
ショーのプロローグで、このコンビが階段を下りてくるとき、
階段上左右袖から出てきて、
中央で手を繋いで一緒に降りてきてたのね。
ここもすごく好き。
映像には残らないかもしれない。
だけど、コンビとして(=プロの舞台俳優として)
互いの信頼感、コンビを演じ切るというプロ意識
そして二人の優しい雰囲気が、実ににじみ出ている。
みっちゃんの表情は実に充実していた。
黒燕尾での大ラインダンスは圧巻だけど、
みっちゃんの下級生時代を思い起こして
フィナーレのパレードでは、ついに涙が滲んでしまった。
トップとしての時間が短くとも
語り継がれるスターはいる(例:順みつき)
良いトップだったねと振り返られるスターはいる(例:壮一帆)
短期だからこその疾走を、最後まで応援したい。