星くず雑記

日々の出来事は煌めく星くずのように…

藤子不二雄『定年退食』

2011年03月17日 18時55分02秒 | 藤子不二雄
東日本大震災で、極めて甚大な被害が生じております。

私が、考えているのは、最終的に
一体どれほどの人が生き残り、地域を再建していくのかということです。
とにかく、今は死者・行方不明者数が増えないことを願うばかりです。


さて、今回ご紹介する『定年退食』は、
地球環境悪化に伴い、食糧問題が深刻化した未来の話です。

(あらすじ)
主人公(74歳)は、食事や健康に気をつかっていた。
「二次定年」特別延長の抽選に申し込むが
外れてしまい、役所へ赴く。
役所は抗議や質問のために訪れた老人で、ごった返していた。
すると、そこに奈良山首相の緊急演説のニュースが始まった…

(以下、ネタばれを含みます)



「健康にして文化的な生活、これは憲法に定められましたる大前提であります。
われわれはこれを「定員法」制定により現実のものとし、今日に至りました。

一次定年を56歳とします。それ以上の生産人口をわが国は必要としません。
二次定年を72歳とします。それ以上の扶養能力をわが国は持ちません。

73歳以上のかたがたは、本日をもって定員カードの効力を失うものとします。
年金、食糧、医療、その他一切の国家による保障を打ち切ります。

情において忍び難きこと多言を要しません。
しかし、現在、人類がさらされております未曾有の危機に思いをいたせば
氷の如く冷徹なる理性的行動!
今や、それだけが人類を救う唯一の道なのであります。」


主人公は散歩中に体調を崩すが、もはや一切のサービスは受けられない。

友人とともに公園のベンチに座っていると、
若者(孫)が、席を変われと言う。
友人の抗議の声をよそに、主人公は席を譲る。
「わしらの席は、もうどこにもないのさ」


なんとも表現に困るラストです。
やむを得ないとは思うけれど、積極的に肯定はできないなあ。

ある意味、究極の「トリアージ」

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藤子不二雄『絶滅の島』

2006年04月23日 11時13分18秒 | 藤子不二雄
藤子・F・不二雄少年SF短編集 (2) (小学館コロコロ文庫)

<あらすじ>
本当なら高校生・・・のシンイチとカオリは
一昨年の夏・秘島ツアーに参加して以来、
他のツアー参加者らと27名で生活している。

やつら、宇宙人は来襲して3ヶ月あまりで5大州を制圧。
それもラジオのニュースで聞いたわずかな情報だった。
「戦争なんてものじゃなかった
一方的に焼きつくし、破壊つくし、殺しつくし・・・
人間をまるで雑草か何かのように・・・」

とその時、ついに宇宙人がこの島に来襲した。
シンイチとカオリはかろうじて難を逃れるが、煙が見える。
足を負傷したカオリをジャングルに残し、キャンプへ向かうシンイチ。
しかし住民が無惨に殺されていくのを目撃する。
「なんて残酷な・・・やつらは悪魔だ!」
生き延びた中年男性と共にカオリのもとへ向かうが
すでにカオリは連れ去られた後だった。
二人休息を取り、闇に紛れ救出のチャンスを窺うことにする。

「ミツユビムカシヤモリって知ってるかい
…そうこの島にだけ残っていた珍しいヤモリなんだ。
学者が気付いたときにはもう遅かった。
人間の手で取り尽くされて絶滅したんだよ。
そのヤモリの黒焼きが肺病の特効薬だという俗信があったお陰でね。
その島で今度は人間が絶滅させられようとしているわけだ」

「あいつら悪魔ですよ。血を流して楽しんでるんだ。まるで虫けらみたいに」
「他の動物を殺すも生かすも、人間さまの心しだい。
今度人間が狩られる立場になったとしても、
えらそうに文句をいう資格はないんじゃないかと」

そして二人はカオリ救出に向かう。村はやけに明るい……
殺された人々が串刺しにされ、煙で燻されていたのだ。。
しかしカオリはまだ殺害されておらず、救出に成功。
ところが宇宙人に発見され中年男性が犠牲に。
シンイチとカオリは船着き場を目指すが、
襲撃され二人とも捉えられてしまう……

新手の宇宙人とのやり取りがあった後。。。★
大怪我をしていたシンイチは治療され、
何故かカオリと共に解放される。

★部分の宇宙怪物語・日本語訳
「チキューケナシザルは保護獣に指定された
密猟者は逮捕する」
「すんません。チキューケナシザルの黒焼きが
円形脱毛症に効くと聞きましたので」
…「あやうく絶滅させるところだった。安心して暮らしなさい」

<感想>
…すっごいブラックな話。他の生物の立場から見れば、
人間なんてこの話の宇宙人に相当するかと思うと…

このチキューケナシザルというネーミング何とも言えない。
「ケナシザル」という部分は、
人間も所詮、猿の一種であることを痛感させると同時に、
他の生物をけなしている、おとしめている、
と言う意味が込められているのでは?

人間も動物の一種・霊長類 - ヒト科 - ヒト種(ホモ・サピエンス)
である以上、(生物として)生きている目的は子孫を残すこと!
ただ心があり、知能があり、社会がある人間は
また別に社会的な意味も持っていますが。
このことを学校で言ったら超びっくりされた。
人間は特別な存在な訳じゃない。たかだか最も繁栄している動物と言うだけ。
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藤子不二雄『ノスタル爺』

2006年04月10日 23時07分51秒 | 藤子不二雄
この前買った、SF全短編集「みどりの守り神」&「カンビュセスの籤」
いやー、これだけ短編がたくさんあると、気になるものもいっぱい出てきます。。
その一方で、時代を感じさせるものも結構あったり。
人口45億人突破で…大きな危機にはならなかった。結局。
まぁいいや。やっぱり圧倒的に藤子作品は素晴らしいと思えるもん

さて70年代は、まだ戦後30年余りと、第2次世界大戦のなごりが残っているんですね。
「TPぼん」もそういう話がありました。。(これは79年が舞台)
「ノスタル爺」はそんなお話。

藤子不二雄異色短編集〈4〉ノスタル爺 (ゴールデン・コミックス)

<あらすじ>
浦島太吉は戦後30年あまりジャングルで戦い続け、
やっと故郷に帰ってきたが、その村はすでにダムの底となっていた。
妻の里子の墓にも手を合わせる。
太吉は里子を不幸にしたことを悔やむ。
あの時ガンと断れば…

浦島家の跡取りだった太吉は、父や親戚の強い勧めで
学徒動員で出征直前、幼なじみで許嫁の里子と結婚する。
しかし生きて帰れないと思い、また自分の死後の里子の幸福を願い
彼女を抱こうとしなかった…
庭に出てなおも、泣く里子を拒むが
そのとき浦島家の倉に閉じ込められている
気ぶりの爺さんが「抱けえっ!」と絶叫する…

再び戦後、太吉はおじから離れひとり水際へ。
不思議なことに、水没したと思った辺りには、まだ里子との思い出の場所が残っていた。
太吉にはある予感があった。それは遂に確信となり、彼をせき立てる…
以下ネタばれ



角を曲がるとそこには失われたはずの村があった。
太吉は郷愁に果てしなく溺れる。
と、そこに一人の少女が…それは幼き日の里子だった。
太吉は思わず抱きついてしまい、里子は怯えて泣き出してしまった。
太吉は捕まり、縁者らしいと浦島家に連行される。
事情を話すがもちろん理解されず、追い出されそうになるが
「一度失ったものを二度と失いたくない」と
倉に閉じ込められてでも、村に残ることを願いでる。
倉には太吉と里子の仲の良い声が聞こえてくる…


本当に、太吉と里子は幸せにはなれなかったのだろうか。
唯一の謎は「気ぶりの爺さん」が、いつ狂ったか。
でも、彼の数十年にも及ぶ戦場の日々を思うと…
村に残ることを願い出る辺りまでは、精神状態のちゃんとしていたようだし。
気ぶりって言われるのは、事情を理解してもらえなかったからなら、
もしかしたら狂っていなかったのかも知れない…

でも、せっかくなら太吉&里子にも説明して
説得すれば良かったのに…

-----
(11/3/15 追記)
箱舟はいっぱい (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)
にも収録。

現在刊行中のシリーズ:藤子・F・不二雄大全集の
「少年SF短編1」には収録されていません。
今後に期待です。
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これは家宝だ!

2006年04月06日 15時47分29秒 | 藤子不二雄


ついに買ってしまいました・・・
藤子不二雄 SF全短編 みどりの守り神&カンビュセスの籤
(中央公論社)

夏休みに図書館にこれの第3巻「征地球論」があり、
藤子ワールドの新たな一面…

少し不思議で、かなりブラック

を知ってしまい、更に最近図書館で
SF名作集を読んで再び火がついたのが切っ掛け。
これで1冊750円なら超お買い得だと判断しました。
ちなみに昨日、征地球論だけ1500円と言われ(何故でしょうか)
しかも今日棚から消えていたので買えませんでした。。


内容はおいおいご紹介しようかと思います。。

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