ZED氏のサイト記事および神奈川新聞の記事より。
伊勢崎賢治が最近スゲー事になっていた
http://www.kanaloco.jp/article/69095/cms_id/73812
平和の創り方 伊勢崎賢治さん「犠牲者を出す覚悟はあるか」
http://www.kanaloco.jp/article/69095/cms_id/73812
筆者が気になったのは次の部分。
----------------------------------------------------
-9条は米国の利益にもなるのですか。
「アフガン戦争は終わっていません。
逆に(国際テロ組織の)アルカイダ的なものは拡大している。
テロの背景には社会の腐敗や貧困がある。
構造的な暴力の被害者たちが宗派や言語などで集団化し、
衝突して内戦に発展してしまう。ロシアとチェチェン共和国の関係や
中国の新疆ウイグル自治区もそう。世界が共通して抱えている病気です。
この病気との戦争が9・11以降始まった。
その戦いの中で日本が果たせる役割がある」
-役割とは。
「テロの根絶には構造的な社会問題にメスを入れ、テロを嫌う社会、
過激な思想を生まない社会をつくっていかなければならない。
当事国の内政に入り込み、変えていくしかない。
それは優しく、平和的にしかなし得ない。
危険でも武装勢力の中に入って調停したり、
停戦を監視したりすることも求められている」
http://www.kanaloco.jp/article/69095/cms_id/73812
------------------------------------------------------
東京外語大で国際政治学を担当されている同氏ですが、
私も彼の著作を2点、購入して読んだことがあります。
そのうちの1冊、講談社現代新書の『武装解除』からの引用。
日本の平和論議にありがちなのは
「紛争の原因は、銃を取らなければならない経済事情と、
それが生み出す差別や抑圧にある。だから貧困の元を断てば解決できる」
という議論である。
これを標榜する人は、局地的な紛争への直接的な介入は
「対症療法」に過ぎないと言う。しかし、対症療法なしで、
本当に病理がわかるだろうか?(P.217)
紛争の原因の1つは、貧困かもしれない。
しかし、「貧困をなくせば紛争がなくなる」というのは、
「風が吹けば桶屋が儲かる」の議論に等しい。(P.219)
・・・・・・
テロの背景には社会の腐敗や貧困がある。
構造的な暴力の被害者たちが宗派や言語などで集団化し、
衝突して内戦に発展してしまう。
テロの根絶には構造的な社会問題にメスを入れ、テロを嫌う社会、
過激な思想を生まない社会をつくっていかなければならない。
http://www.kanaloco.jp/article/69095/cms_id/73812
神奈川新聞の記事を読んだ限りでは、
かつて自分が唱えた意見を否定しているような……
ま、まぁ、『武装解除』の出版年度が2004年ですから、
この10年間で大きく考え方が変わったのでしょう。
そういう言葉を彼の口から聞いたことはありませんが。
『武装解除』や『国際貢献のウソ』には、アフガン・イラク戦争の
その後が如何に悲惨なのか、その正義が薄っぺらいものだったのか
が現地で武装解除を行った自身の体験から告白されており、
何だかんだで、これら書籍の価値はあるものだと私は思います。
しかしながら、非武装だろうと何だろうと、
伊勢崎氏(というより国際NGO)が行ったこと(武装解除)は、
とどのつまりは、アメリカ政府にとって都合のよい行動であり、
同政府の支援にしかならなかったのでは?と読みながら思ったこともまた事実。
まず間違いなく、テロの背景は、未だに先進諸国に
国内の資源を牛耳られている途上国の実情があるでしょう。
イラク戦争などはその典型で、フセインが打倒されてから
かいらい政権が生まれましたが、それに納得のいかない人たちが
武装し、政権に抗う選択をとりました。アフガニスタンもまた同様です。
ですから、テロを撲滅するためには、
まず先進諸国との不平等な関係の解消が求められるでしょう。
私は、伊勢崎氏は著書でかなり厳しいアメリカ批判を行っていましたから、
当然、同氏がイラクやアフガンをテロ地帯の具体例にして、
アメリカの内政干渉に対する批判をなさるものだと思っていました。
ところが、神奈川新聞のコメントでは、
アメリカが勝手に始めた「テロとの戦い」を否定するどころか、
むしろ「日本はこの戦いに参加せよ」と呼びかけていますし、
なぜかアメリカの仮想敵国をテロが行われている代表地域にしている。
「独裁体制だ」と批判する国家が、なぜか、その時々のアメリカが
政権崩壊してくれないかと望んでいる国家と一致している政治学者、
ジーン・シャープと同様に、伊勢崎氏も一見するとノーを言っているようで、
その実、手元ではゴーサインを送っているように見えるのは私だけでしょうか?
政治学者でもない私が何を言っているのだという話ですが、
テロの背景が貧困と差別だと主張して、ウィグル自治区を
具体例にし、アメリカと共に集団的自衛権に参加せよというのは、
手段がナイフから書類に変わるだけで、中国への内政干渉に日本も参加しろ
と言っているようにしか思えないのですが…(そして遠まわしに、
現中国政権をテロが発症するだけの抑圧体制と誹謗している)
伊勢崎氏は「『9条は日本にはもったいない』と新聞に寄稿したら、
護憲団体から講演に呼ばれなくなりましたが」と自己分析していますが、
私からすれば、同氏の干渉主義に対して拒否反応を起こしたのではと思います。
とはいえ、伊勢崎氏が今も、日本の平和運動を牽引する立場にいますし、
彼の支持者が左翼に多いこともまた明らかなこと。
ZED氏も主張していますが、彼を良心的な文化人と宣伝し、
共闘している左翼文化人たちは、もう少し考えるべきです。
私は最近の反共(=戦後の主流)左翼が最近となえている
「左右の壁を乗り越えて」とか「共闘姿勢」といった意見を
物凄く怪しんでいるのは、「ちゃんと相手を選べよ」という意味も込めているんですよね。
では、最後に本記事のオチを。『国際貢献のウソ』の帯紙より。
「国際貢献」は愛がなければできないが、愛だけでは空回りする。
ここには、現場で苦闘してきた筆者だから書ける戦略がある。
池上彰氏推薦!
伊勢崎賢治が最近スゲー事になっていた
http://www.kanaloco.jp/article/69095/cms_id/73812
平和の創り方 伊勢崎賢治さん「犠牲者を出す覚悟はあるか」
http://www.kanaloco.jp/article/69095/cms_id/73812
筆者が気になったのは次の部分。
----------------------------------------------------
-9条は米国の利益にもなるのですか。
「アフガン戦争は終わっていません。
逆に(国際テロ組織の)アルカイダ的なものは拡大している。
テロの背景には社会の腐敗や貧困がある。
構造的な暴力の被害者たちが宗派や言語などで集団化し、
衝突して内戦に発展してしまう。ロシアとチェチェン共和国の関係や
中国の新疆ウイグル自治区もそう。世界が共通して抱えている病気です。
この病気との戦争が9・11以降始まった。
その戦いの中で日本が果たせる役割がある」
-役割とは。
「テロの根絶には構造的な社会問題にメスを入れ、テロを嫌う社会、
過激な思想を生まない社会をつくっていかなければならない。
当事国の内政に入り込み、変えていくしかない。
それは優しく、平和的にしかなし得ない。
危険でも武装勢力の中に入って調停したり、
停戦を監視したりすることも求められている」
http://www.kanaloco.jp/article/69095/cms_id/73812
------------------------------------------------------
東京外語大で国際政治学を担当されている同氏ですが、
私も彼の著作を2点、購入して読んだことがあります。
そのうちの1冊、講談社現代新書の『武装解除』からの引用。
日本の平和論議にありがちなのは
「紛争の原因は、銃を取らなければならない経済事情と、
それが生み出す差別や抑圧にある。だから貧困の元を断てば解決できる」
という議論である。
これを標榜する人は、局地的な紛争への直接的な介入は
「対症療法」に過ぎないと言う。しかし、対症療法なしで、
本当に病理がわかるだろうか?(P.217)
紛争の原因の1つは、貧困かもしれない。
しかし、「貧困をなくせば紛争がなくなる」というのは、
「風が吹けば桶屋が儲かる」の議論に等しい。(P.219)
・・・・・・
テロの背景には社会の腐敗や貧困がある。
構造的な暴力の被害者たちが宗派や言語などで集団化し、
衝突して内戦に発展してしまう。
テロの根絶には構造的な社会問題にメスを入れ、テロを嫌う社会、
過激な思想を生まない社会をつくっていかなければならない。
http://www.kanaloco.jp/article/69095/cms_id/73812
神奈川新聞の記事を読んだ限りでは、
かつて自分が唱えた意見を否定しているような……
ま、まぁ、『武装解除』の出版年度が2004年ですから、
この10年間で大きく考え方が変わったのでしょう。
『武装解除』や『国際貢献のウソ』には、アフガン・イラク戦争の
その後が如何に悲惨なのか、その正義が薄っぺらいものだったのか
が現地で武装解除を行った自身の体験から告白されており、
何だかんだで、これら書籍の価値はあるものだと私は思います。
しかしながら、非武装だろうと何だろうと、
伊勢崎氏(というより国際NGO)が行ったこと(武装解除)は、
とどのつまりは、アメリカ政府にとって都合のよい行動であり、
同政府の支援にしかならなかったのでは?と読みながら思ったこともまた事実。
まず間違いなく、テロの背景は、未だに先進諸国に
国内の資源を牛耳られている途上国の実情があるでしょう。
イラク戦争などはその典型で、フセインが打倒されてから
かいらい政権が生まれましたが、それに納得のいかない人たちが
武装し、政権に抗う選択をとりました。アフガニスタンもまた同様です。
ですから、テロを撲滅するためには、
まず先進諸国との不平等な関係の解消が求められるでしょう。
私は、伊勢崎氏は著書でかなり厳しいアメリカ批判を行っていましたから、
当然、同氏がイラクやアフガンをテロ地帯の具体例にして、
アメリカの内政干渉に対する批判をなさるものだと思っていました。
ところが、神奈川新聞のコメントでは、
アメリカが勝手に始めた「テロとの戦い」を否定するどころか、
むしろ「日本はこの戦いに参加せよ」と呼びかけていますし、
なぜかアメリカの仮想敵国をテロが行われている代表地域にしている。
「独裁体制だ」と批判する国家が、なぜか、その時々のアメリカが
政権崩壊してくれないかと望んでいる国家と一致している政治学者、
ジーン・シャープと同様に、伊勢崎氏も一見するとノーを言っているようで、
その実、手元ではゴーサインを送っているように見えるのは私だけでしょうか?
政治学者でもない私が何を言っているのだという話ですが、
テロの背景が貧困と差別だと主張して、ウィグル自治区を
具体例にし、アメリカと共に集団的自衛権に参加せよというのは、
手段がナイフから書類に変わるだけで、中国への内政干渉に日本も参加しろ
と言っているようにしか思えないのですが…(そして遠まわしに、
現中国政権をテロが発症するだけの抑圧体制と誹謗している)
伊勢崎氏は「『9条は日本にはもったいない』と新聞に寄稿したら、
護憲団体から講演に呼ばれなくなりましたが」と自己分析していますが、
私からすれば、同氏の干渉主義に対して拒否反応を起こしたのではと思います。
とはいえ、伊勢崎氏が今も、日本の平和運動を牽引する立場にいますし、
彼の支持者が左翼に多いこともまた明らかなこと。
ZED氏も主張していますが、彼を良心的な文化人と宣伝し、
共闘している左翼文化人たちは、もう少し考えるべきです。
私は最近の反共(=戦後の主流)左翼が最近となえている
「左右の壁を乗り越えて」とか「共闘姿勢」といった意見を
物凄く怪しんでいるのは、「ちゃんと相手を選べよ」という意味も込めているんですよね。
では、最後に本記事のオチを。『国際貢献のウソ』の帯紙より。
「国際貢献」は愛がなければできないが、愛だけでは空回りする。
ここには、現場で苦闘してきた筆者だから書ける戦略がある。
池上彰氏推薦!