時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

加藤哲郎氏は、ウクライナ問題になぜ沈黙するのだろうか

2014-04-29 22:35:39 | 反共左翼
加藤哲郎氏のネチズン・カレッジを久々に閲覧しましたが、
ロシアに滞在(おそらく研究目的)しているにも関わらず、
ウクライナ問題に対して何も語らないのは不思議でなりません。


何度も言及しましたが、現在のウクライナは、EUやアメリカに支援され、
ネオ・ナチが政権の中枢に君臨している異常事態になっています。

各地では自警団も結成されていますが、彼らの中には
ナチス・ドイツのシンボルであるカギ十字に×マークをした
旗を掲げている者もおり、こういった人たちの動きがNHKをはじめとした
日本のメディアでは一切、取り上げられないままロシアが批判されているわけです。


この批判者のなかには共産党もいます。
もともと、共産党とロシアは非常に仲が悪いので、
今回のような態度は容易に想像がつきました。逆を言えば、
共産党が何だかんだで冷戦から抜けきれないまま今に至るということです。


だとすれば、日本共産党を否定している加藤氏は
必ずや、日本共産党はロシアを批判しているが、
実際には、簡単にロシアを否定できる問題ではないと
それこそ、声を大にして叫ぶはずだと思っていたのです。


ところが、サイトを見る限りでは二ヶ月前から騒がれている事件であるにも
関わらず、一切のノーコメントの状態です。これは不思議でなりません。


正直、共産主義国研究の泰斗であり、市民運動にも積極的に参加し、
講演を精力的に行っている加藤教授が語ってくれたほうが、
私のような名もなき草の根の小僧が弱小ブログで書くよりも説得力があるのですが…


これは先生が普段から熱をこめて批判している共産党の言動にも
ケチをつけられる絶好の機会でもあるのですけれどねぇ……


加えて、日本国内では「ロシアの声」や「ロシアNow」、「ロシア・トゥデイ」
などの海外メディアのサイトでしか向こうの側に立った情報が得られないのが実情です。


ロシア本国で、同問題がどのように語られているのかを紹介するだけでも、
私たちの国際政治に関する間隔を磨く格好の材料になるはずです。
(まぁ、加藤教授に限らず、ロシア政治研究者は向こうの
 政府批判者と仲良くなっているのが常ですが…)


これをなぜ行わないのか・・・
その理由は定かではありませんが、結局のところ、
彼の沈黙はアメリカの公式見解を支持していることになるでしょう。
(日本国内では、アメリカ側の情報・意見ばかり氾濫しており、
 それらに異議を唱えないのは、黙認と同義の行為であるため)


結局、アメリカに都合のよい態度をとっている。

北朝鮮への極右と協力してまでの非難活動や、アラブの春の礼賛など、
ことごとくアメリカの利益を侵害しない限りでの人権運動を行っている
加藤教授ですが、現在でも世界各国を巡り、資料収集と研究者との交流を重ね、
その辺の椅子に座っているだけの名ばかり研究者よりもよっぽど働いている、
そんな研究者の鏡とも言える方が、なぜこのような裏切りを平然と行うのか。

私には理解できないことです。

「裏切り」と表現しましたが、おそらく教授にとっては、
 ものすごく筋が通った行動なのだと思います。

 また、こういう行動をとってしまうのは彼に限ったことではなく、
 戦後の主流左翼全体に見られる重大な欠陥だと思われます。


しかしながら、実のところ、この種の欠陥を抱えた左翼、
反対のポーズをとりながら、その実、支持をしている左翼、
「ノー」と言いながら「ゴー」のサインを指で作る左翼は、
海外のみならず日本における社会発展の上でも非常に問題があるでしょう。

アメリカのツィッターによるキューバ政権転覆作戦

2014-04-29 21:12:24 | リビア・ウクライナ・南米・中東
冷戦の半ばから、ゲリラよりも現地の市民運動家を支援したほうが、
敵国の政権転覆が容易に行えることに気がついたアメリカは、
民主化運動支援を駆使して、各国で工作をしかけています。



悪の枢軸と名指しされた、
イラク・リビア・シリア・イラン・北朝鮮・キューバの6カ国のうち、
イラクとリビアは文字通り消滅し、残りも制裁を受けており、
文字通りの存亡の危機にある状態です。

朱色の筆で、一つ国が消えるごとに横線で国名を打ち消して、次の行動に移る。

「中国の脅威」などとは違って、これは本物の脅威です。

名指しされた諸国家は、実際に現在進行形で、
次々と侵略・制裁をされているのですから。



イラクやリビアではアメリカの傀儡政権が君臨し、
国内で反対勢力が武装し、テロを連日起こしています。

他方、シリアは危うく爆撃されかけ、
イランや北朝鮮は核を口実に執拗に経済制裁をかけられています。

キューバもまた、そのようなアメリカに攻撃をされている国の
ひとつで、経済制裁はもちろんのこと、政府転覆の工作が
常に行われており、気を緩めてはいけない状況だと言えるでしょう。


さて、そのキューバに対してアメリカがツィッターを利用して
政権を転覆しようと画策していたことが判明しました。

赤旗からの記事です。


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キューバ向けツイッター
米の政権転覆作戦だった
国際法違反と非難



米国が2009年から11年にかけて
“キューバ向けツイッター”を立ち上げ、
同国のカストロ政権転覆を狙う秘密作戦を画策していたことが、
4月初めに米国の報道機関によって暴露されました。



キューバ側は国際法違反と非難しています。
その拠点が置かれたコスタリカ政府も、事前の了解なく
自国領土を他国への干渉の拠点とされたことに反発。
両国間の外交問題に発展する事態となっています。

報道によると、“キューバ向けツイッター”の名称は「スンスネオ」。
キューバのハチドリのさえずりの意味だといいます。

キューバ当局による厳しいインターネット規制を避けて、携帯電話網を活用。
若者を中心に一時は約4万人が登録したとされていますが、12年に活動を中止しました。


内容は当初、個人的メッセージや気象情報、スポーツや音楽の話題が中心でした。
米国側は一定の人数が集まった段階で、政府批判のメッセージを流し、
抗議デモなど政府転覆の行動を呼びかける計画だった
と報じられています。




米国の政府機関、米国際開発局(USAID)の予算で実行されたもので、
同局と契約した民間会社がコスタリカ国内の拠点から「スンスネオ」を管理していました



キューバ外務省のビダル米国局長は問題が暴露された翌日4日の声明で、
米国が「不安定な情勢をつくり出すことをめざす
対キューバ反体制計画を放棄していないことを示すものだ」と批判。

米政府に国際法と国連憲章の尊重や秘密作戦の中止を改めて要求しました。
ボリビアやベネズエラも米国の行動を厳しく批判する声をあげています。


米政府高官は、キューバ社会に情報・通信の場を提供するのが目的で、
「秘密行動ではない」と説明しています。しかし、今回の問題は、
米国と比較的良好な関係をもつ周辺国にも波紋を呼んでいます。


http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-04-29/2014042906_01_1.html
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米国の政府機関と契約した民間会社が
ツィッターなどの最新の情報技術を駆使して
若者をターゲットにして「民主化運動」を促す。


実は、この手の工作は、オバマが大統領選挙でとった
戦術と同じもので、エジプトでのアラブの春でも行われました。

以前、書きましたが、このエジプトの民主化運動も、
蓋を開ければ、彼らに具体的な戦術を伝授していたのは
米国の民主化支援団体だったというオチがついており、
結局は米国の手のひらで転がされる形で展開されました。


この手の作戦の目的は政府の転覆(或いは政権交代)であって、
治安の安定や経済の復興といった、その後の問題は丸投げされたものです。

エジプトの経済や失業率が全く改善されないままであることは
決して偶然ではなく、必然の結果であるとも言えるでしょう。



海外のニュースサイトの記事を精力的に翻訳している
「マスコミに載らない海外記事」様では、以下の記事が紹介されています。





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USAIDは自らを“極端な世界の貧困を終わらせ、潜在能力を現実化する為に、
はつらつとした民主的な社会を可能にすべく活動する主要アメリカ政府機関”だとしている。

しかし、この機関は、特に中南米で、政権転覆を推進し、
この地域の住民達に対し、他の犯罪を行なってきた長い残忍な実績がある。

1960年代と、1970年代、この機関のOffice of Public Safety=公安部
(現在閉鎖されている)は、中南米の警官をに、拷問と暗殺を含む
対ゲリラ戦術訓練を行なった。

中でも最も悪名高い職員に、農業顧問を装って働き、ブ
ラジルとウルグアイで、ホームレスの男達を街頭から拉致し、
集めた警察官の前で拷問し、殺害する講義をしたダン・ミトリオーネがいる。

エボ・モラレス大統領は、昨年、この機関が政権を不安定化する目的で、
非政府組織、反政府集団や一部の農民組合に資金援助していたと非難して、
ボリビアから、USAIDを追放した。

ラファエル・コレア大統領が同様に、
この機関が政敵に資金を注ぎ込み、エクアドルの内政に干渉していると非難して、
エクアドルがそれに続いた。

ベネズエラでは、USAIDは、
そのOffice of Transition Initiatives(移行イニシアチブ局?)と、
全米民主主義基金NEDとで、ウゴ・チャベスとニコラス・マドゥロの政権を
不安定化する取り組みに、何百万ドルも注ぎ込んできた。

ベネズエラで過去二ヶ月間行なわれている
暴力的抗議行動を組織している主要団体が、この資金の主な受け手だ。

シリアでは、USAIDは、いわゆる反政府派に資金を注ぎ込み、
Socialist Organization(国際社会主義協会?)等の似非左翼集団によって、
ある種代用的な“革命家”だとしてもてはやされている、
いわゆる現地調整委員会の作戦に資金援助している主要機関だ。

ウクライナでは、自らの活動と、NEDの活動を通して、
USAIDは、何億ドルをも右翼政党や団体に注ぎ込み、
ファシストが率いた最近の親NATOクーデター準備を助けた。

アメリカ政府は、ウクライナを巡るロシアとの対立では、
小国の擁護者で、国家主権の旗手のようなふりをしているが、
ウクライナそのものからキューバに至る、USAIDや、
その契約業者やルートの諸々の作戦行動が、
アメリカの権益に服従する政権を押しつける為、
世界中で違法で暴力的な介入を行なう上での、
アメリカ帝国主義の真の役割を暴露している。

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/usaid-b104.html
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不思議と、この種の帝国主義的横暴を繰り返すアメリカに対して
日本の政治研究者は、なぜかアメリカに都合のよい見解ばかり述べて
ろくに抗議を行おうとすらしません。


むしろ、彼らは北朝鮮などの悪の枢軸に対して、
もっと彼らを弱まらせるよう圧力をかけよと言っているのです。

[http://blog.goo.ne.jp/sanzenri2010/e/aa8232065ea787454cddc79e8ce48ded]


一時期、共産党に攻撃的な左翼集団が絶賛したカレル・ウォルフレンしかり、
共産国研究の泰斗である和田春樹しかり、中東研究者である酒井啓子しかり、
悪の枢軸国が文字通り悪であることを強調するばかりで、
客観的に見れば、アメリカが正義だったと追認する内容になっています。


和田氏などは、かなり巧妙で、他方では北朝鮮バッシングに対して
否定的に取り扱っているのですが、上に紹介したように、
拉致問題よりも核のほうが大事という路線で、
「捨てろ、核捨てろ」と圧力をかけている。

もちろん、北朝鮮が自国の核放棄の条件として、
韓国や米国の核放棄と在韓米軍の撤退、軍事威嚇の中止を
挙げていることを一言も言及していません。

アメリカや韓国が銃をこちらにむけている中で、
平和のために武装解除せよと叫んでいるわけで、
これは、投降と同義に受け止めても過言ではないでしょう。


これを三流学者ではなくて、その分野の権威が語っているというのがポイントです。

加藤哲郎氏といい、和田氏といい、
左翼を自称し、そう認められている人間の中には
致命的な欠陥を抱えている方も決して少なくはありません。

これをなぜかと考えると、やはり民主主義という思想へ対する
過度な期待があるように思えてなりません。


民主主義は政治制度の一つの形態に過ぎず、絶対視するものではない。
また、現在の民主化運動は、その実、特定の集団の利権獲得のために
展開されており、決して慈善活動でない。その点を無視して同運動を
神聖視し、手放しに礼賛すると、結果的には権力者を支援することになる。


以上の見解を持つことが今後の社会運動には必要なことだと思われます。


アメリカのアジア戦略と日本の軍拡

2014-04-29 20:18:37 | 軍拡
私がアメリカ研究を始めて間もないころ、バラク・フセイン・オバマが
ジョン・マケインに勝ち、アメリカ大統領になったニュースを読み、
胸がスッとした思いだったのを今でも覚えています。

あの頃の私は、民族論・ナショナリズム論というのを
あまり真面目に研究しておらず、しかも親米だったので、
アメリカには自浄作用があり、変われる国なのだと本気で信じていました。

他国と比べると、合衆国には改革の気運があり、そうであるからこそ、
世界有数のNPO大国であるという認識は今でも変わりません。
(それは貧困や差別が看過できないレベルである裏付けでもある)


しかし、今ではオバマを「食えない男だな」以外の感想が持てなくなっています。

その発端は、普天間基地の移設が問題化した2010年。
どうにかして話を聞いてもらおうと対話を持ちかける鳩山氏を
冷たくあしらったオバマ氏を見て、アメリカの怖さに気がつきました。


普段は、対話だの友好だの、差別解消だの、反核だのを訴えていたオバマも、
こと米軍基地の話になると、沖縄住民の代弁者に対して徹底無視を決め込んでしまう。

(少なくとも当時の首相は、沖縄住民の立場から基地の県外移設を訴えていた)


私の中のアメリカ像がガラガラと崩れていく瞬間でした。

以降、改めてアメリカ外交史と、それに伴う途上国へ対する干渉、
および国内における社会運動および民主主義思想の問題点等々に
取組み、この国の独善性や一見正しく見える行為の裏側に何があるのか
を観察してきました。北朝鮮や中東、東欧、南米への本サイトの批評も
その研究の産物といっても過言ではないでしょう。
(もっとも、レポート以下の感想文ではありますが)


さて、連日、安倍とオバマの対談について記事を書いていますが、
今回は、実は日本の軍拡は米国のアジアにおける軍事的拡張と
連動している
ということをここに指摘しておきたいと思います。

以下、赤旗からの記事です。

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米国とフィリピン両国は28日、10年期限の新軍事協定
「防衛協力強化協定(EDCA)」を締結しました。

比軍基地内に施設を建設し、
米軍部隊の「一時的」駐留をおこなうことを認めるもの。

同日午後には、アジア歴訪最後の訪問先として
オバマ米大統領がフィリピン入りし、アキノ大統領と会談しました。

終了後の記者会見でオバマ氏は、同協定について、
中国の「封じ込め」が目的ではなく、「平和的台頭」を歓迎すると表明。

アキノ氏も南シナ海の領有権問題で「平和的解決」を強調しました。


~(中略)~

国内では「米軍が復帰するのではないか」と懸念する市民らが、
大統領宮殿近くで新協定締結反対の抗議行動を起こしました。



現地からの報道によると、政治評論家ラモン・カシプル氏は新軍事協定締結の背景に、
中国の域内での台頭にたいする国防力強化を「切迫した」課題とするフィリピン側と、
「アジアにおいて再度その関与を模索している」米側の思惑の一致がある
と指摘しています。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-04-29/2014042907_01_1.html
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状況が、日本のそれと完全に一致してますね?


フィリピンを日本、アキノを安倍、市民を沖縄県民と置き換えれば、
そのまま、沖縄の米軍基地問題と同じ内容になります。


どちらにおいても、対話や平和的解決を建前としながら、
軍備拡張に舵をきっており、中国へのけん制を目的としている。


オバマの狡猾なところは、責任をアキノに転嫁し、
自分は平和論者であるかのようにごまかしている点。


かつて、冷戦時代にアメリカは、自らの手を汚さず、
現地のゲリラや独裁者を支援し、間接的な支配を行ってきましたが、
それは冷戦終結によって終わったわけではありません。


アメリカにとっては、中国とのトラブルは避けたい一方で、
同国の台頭を防ぎたい思惑もあり、日本やフィリピンのような
中国と衝突のある国を焚きつけて、高みの見物を決め込んでいるわけです。


冷静に考えれば、現地の住民の意思を無視してまで、
アメリカの走狗になる義理などない
のですが、
アキノも安倍も米国を後ろ盾に自己の確固たる権力を築きたい野心がある。

結果的に、支配する側の権力者が支配される側の権力者を懐柔して、
本来なら敵対する国家が逆に主従関係を結んで行動している
わけです。

アメリカは、その歴史を紐解くと、綿花やタバコ栽培のための土地を
アメリカ・インディアンから奪い取るために、その部族と敵対する
部族と友好関係を結び、彼らを孤立させた上で武力侵攻して絶滅させて
いったのですが、こういう巧妙な政治の駆け引きはさすがだとしか言えません。

似たようなことは、実は大日本帝国やイギリス、フランスといった
旧帝国主義国も行っているのですが、まぁ、この点にかけては
アメリカの右に出るものはいないのではないでしょうか?