時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

上からの解決 -慰安婦問題における日韓の妥結について

2015-12-29 23:19:55 | 国際政治
恐らく日本の右翼も左翼も納得が行かない最悪の決着のつけ方だったと思う。
とりあえず、このニュースがロシアでどう報じられているかを見てみよう。


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Japan finally ready to apologize for using South Korean female sex slaves during WWII
(日本、ついに第二次世界大戦中の韓国人女性性奴隷の使用について謝罪する用意をする)


Japan has finally reached the stage
   where it is ready to apologize for enslaving thousands of ‘comfort women’
     from South Korea during World War II
      – something that has long been a source of contention between the neighbors.

(日本は、第二次世界中に韓国で数万の従軍慰安婦を奴隷化したことに対して
 謝罪する用意をする段階に、ついに到達した。
 長い間、従軍慰安婦は隣国同士の対立の原因となっていた。)

The agreement on Monday between South Korea and Japan
     is considered a landmark deal and concerns decades of animosity
  because of failure to agree that
      Korean women were forced into sex slavery run
       by the Japanese empire for the purpose of comforting soldiers.

(https://www.rt.com/news/327241-japan-comfort-women-korea/)
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重要なのは韓国人の女性を性奴隷にしていたと日本政府が認めたという認識。
誰がどう言おうと、今後、日本政府はこの合意に反する行動はできない


中国外交部(外務省)は以下のようにコメントしている。

「慰安婦の強制連行は、
 第二次世界大戦中に日本の軍国主義がアジア諸国の人々に対して行った深刻な非人道的犯罪だ。
 日本は侵略の歴史を正視・反省し、責任ある態度で関連問題に対処するべきだ。
(http://j.people.com.cn/n/2015/1229/c94474-8996836.html)


安倍政権にとっては、これで今後、慰安婦問題でケチをつけられることもあるまいと
思ったかもしれないが、今回の妥結は上記の歴史認識について公的な反発が出来ないことを意味する

すでに台湾やインドネシアでは自国も韓国同様の待遇をするように求めている。
臭いものにフタをしたつもりで、逆にフタを開けてしまったかもしれない。


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ロシアの東洋学者、ドミートリイ・ストレリツォフ氏によれば、
問題解決の兆しはここ数か月、肌に感じられていた。2014年初頭には
安倍首相の就任以来凍結されていた両国の政治コンタクトが再開していたからだ。


「11月、日中韓の3か国サミットが行われた。
 その中で、安倍首相とパク大統領の首脳会談も初めて行われた。
 これは両者の妥協への努力の表れだった。米国というファクターも影響を与えた。

 米国は東アジアの最重要同盟国である日韓の紛争が
 長引いていることを強く懸念しており、日韓対話の再開に全力を挙げていた。

 米国はこの問題においては韓国の側に立ち、
 ほとんど恒常的に日本に心理的圧力をかけていた。

 米国の多くの州に慰安婦記念像が建立されさえした。
 この間米国は、妥協すべきは日本の側だ、という立場を明確にしていた


今回見いだされた慰安婦問題の解決の形式は、韓国側をも満足させるはずだ、とストレリツォフ氏。

「10億円規模の特別基金の創設には、日本の国費が投じられる。
 これは韓国にとっては極めて重要なことだ。というのも、
 これまで日本側は、政府の参加なき人道手段による問題解決を図ってきた。

 過去の朝鮮植民地化に関する問題は、国家レベルでは、
 1965年の外交関係再開宣言の時点で解決がなされている、という立場からだ。

 それが今回、日本は、ほぼ初めて、この立場を去り、
 国費から費用を拠出することを決めたのだ


続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20151228/1381062.html#ixzz3vinrzOKA

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繰り返すと国際政治の場では
日本の慰安婦制度は絶対悪であり、今回の妥結は
日本がようやく己の悪を認めたという認識がされている。


これは韓国に限らず、中国、ロシア、イラン、フランス、アメリカ等に通じるものである。


「The Japanese military used Korean, Chinese, Taiwanese,
 Dutch and Australian women as sex slaves for soldiers during World War II.
日本軍は韓国人や中国人、台湾人、オランダ人、オーストラリア人の女性を
  兵に向けての性奴隷として第二次世界大戦中に使役した
)」

 (ラジオ・フランス・インターナショナルの記事より

今回の日本政府の決断は上の事実を公認したものである。



慰安婦日韓合意でネトウヨが「安倍、死ね」の大合唱!
でも安倍の謝罪は二枚舌、歴史修正主義はさらに進行する


安倍本人は、このことに気づかず、あるいは意図的に忘れ、
形ばかりの謝罪と賠償を行い、歴史の改竄を続けるつもりかもしれないが、そうは問屋が卸さない。

国際的な圧力は前より強まったものであることは自覚して欲しいものだ。







慰安婦問題妥結で解決遠のく強制徴用問題


[社説]法的責任なき慰安婦問題の最終解決はない

慰安婦被害者・挺対協「少女像の移転は認めない」

他方で問題点も多く存在する。

第一に、今回の解決法は村山政権時のアジア女性基金と同じ方式であること。
第二に、日本政府の法的責任が曖昧にされたままであること。
第三に、今後、慰安婦本人や家族、遺族、支援団体の行動や発言が抑制される可能性が高いこと。
第四に、慰安婦像設立などの下からの社会運動を完全に否定するものであること。

大まかに言っても、これだけの問題点が存在する。
この点についてはハンギョレが詳しく論じているので、関心のある人は紹介記事を読んで頂きたい。


慰安婦合意…父と娘、半世紀超えた拙速“瓜二つ”
被害者が眼中にない“最終解決”…対国民談話まで


何よりも、今回の妥結は市民の意志を完全に無視したものであることが問題である。
今、韓国は軍事政権時代の大統領、チョン・ドファンを批判しただけで逮捕されるような有様だ。

[ニュース分析]全斗煥風刺ポスターが有罪…失われる表現の自由

こういう軍事政権時代の批判が公に言えなくなっていく中で、
慰安婦に一言も相談せずに勝手に決められた今回の妥結。少女像を作成したキム・ウンソン氏は
少女像には韓国政府も自省し、反省しなければならないという意味も込められている。
「国がちゃんとしていれば、国民がそのような被害を受けることはなかったはずだ」
と語っている(http://japan.hani.co.kr/arti/politics/22911.html)。


金氏が指摘するように、今後、慰安婦像の撤去を皮切りに韓国政府が
慰安婦や市民団体の活動にまで干渉・制限してくる可能性は十分考えられる。
(反日国家、反日国家と小うるさいが、韓国の与党、セヌリ党は親日派の政党である)

「帝国の慰安婦」朴裕河教授の在宅起訴に学者ら54人抗議声明(全文)

最後に、これは大変重要な指摘だが、今回のような日韓関係の改善を重視する「解決」は
実は、日本や韓国の反共左翼が盛んに主張してきたことだ
ということである。


①自分たちは誰よりも慰安婦のためを思っていると主張し、
②事実の正誤や法的責任の有無の確認よりも早急の解決を優先し、
③慰安婦問題未解決の責任を日本政府から挺対協(韓国の主要な市民団体)に転嫁し、
④アジア女性基金型の解決方法を強く推す

こいつらの特徴を簡単に説明すると上のようになる。
私は反共が主軸であるがために、同目的を持つ右翼と簡単につるんでしまう左翼を
反共左翼と呼び、厳しく批判しているが、上の共同声明にも地味に右翼知識人が混ざっている。

案の定、今回の妥結の背後には、
中国をけん制するために日韓の政治的軍事的結びつきを固めたいアメリカの動きがあったようだが、
この連中も究極的には、中国や北朝鮮に対する否定的な感情が声明を決意した背景にあるのではないか?
(実際、北朝鮮バッシングの代表者やイラク戦争支持者などがリストの中に微妙に混ざっている)

どちらが飛車か銀かで揉めているだけで、
アメリカという王将の指示に従い、棒銀戦法を忠実に実行しようとする点で両者に変わりはない。


以前、このように表現したわけだが、今回の妥結はまさにその見本のような例で、
加えて、上のような政治や外交を優先した上からの解決を、
他ならぬ両国の左派系知識人が支持し、反対者を攻撃している。

こういう冗談では済まされない日韓左翼の右傾化を見逃してはならないだろう。


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