イランと北朝鮮。この二カ国はいずれもブッシュ政権時代に
合衆国から「悪の枢軸国」と名指しで非難を受け、経済制裁の憂き目にあう。
イランは核兵器を持っているかもしれないという理由だけで随分と辛酸を舐めさせられたが、
外国との協調を重んじる現政権になって協議が進み、ついに制裁が解かれた。
制裁解除が順調に進んだ背景として、イランのエネルギー資源が重要な役割を果たしている。
イラン、欧州へのガス供給開始へ
イラン 欧州向け原油を値引き
イランはサウジアラビアやロシア、アメリカと比べれば
それほど多く石油を生産してはいないが、潜在する石油量はかなりのものだと思われる。
「あるのかないのかよくわからない核兵器のために石油ビジネスが停滞するくらいなら」
という思惑が制裁国にあったのではないだろうか?(現在、欧州はロシアとの関係が悪化している)
お互い、利用し利用される形で決まった妥結だが、
これまでイランが受けた経済的被害を思えば、制裁国は英断を下したものと評価したい。
(実はこの制裁国の中には日本も含まれる)
ところが、ここ最近、再びイランに
新たな形で制裁を加えようとする動きが出ている。
米国 イランのミサイルプログラムに対して追加制裁
仏 ミサイル実験を受け、新たな対イラン制裁を提案
---------------------------------------------------------
フランス政府は、イランが最近実施したミサイル実験を受け、
EU指導部に対し、新たな対イラン制裁の発動について検討するよう提案した。
AP通信が28日、EUの匿名代表者2人の話として報じた。
EU代表者らによると、現在EUはフランスの提案を検討しているという。
なおEUの大多数の加盟国は、フランスの提案について、
対イラン制裁解除後のイランとの政治・経済関係構築にとって非生産的だと考えているという。
EU代表者らによると、
フランスは、対イラン制裁解除後まもなく開かれたEU外相理事会の会合で提案した。
なお同時にAP通信によると、匿名を希望する欧州の別の外交官は、会合で
この問題は話し合われなかったと指摘したという。一方で同外交官は、「フランスが
イランに対する新たな制裁の検討を提案しなかったか?」との問いに答えることは拒否したという。
またフランス政府も、AP通信へのコメントを拒否したという。
先にイランのロウハニ大統領は、イタリア訪問を終え、フランスへ向かった。
続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20160128/1508409.html#ixzz3yY3Uf1gm
------------------------------------------------------------
『現代思想』2016年1月臨時増刊号(中東問題に関心のある方は読むのを薦める)や
『経済』2016年2月号によると、シリアにむけての軍事干渉(武装組織への支援や空爆)は
アメリカよりもフランスやイギリス、サウジアラビアのほうが積極的だったそうだ。
とはいえ、やはりアメリカの威嚇というものは凄まじいもので、次のような事件が起きている。
「イラン当局 オマーン湾で米国空母を追い払う
イランは、同国の海上軍事演習が行われているオマーン湾から、
米国の空母を退去させるよう求めた。通信社タスニムが報じた。
米国の空母は、演習が行われている領域までかなり接近したが、
イランが警告をした後、すぐに同領域から去ったという。
なおイラン海軍の司令部は、そのまま演習を続けたという。
続きを読む http://jp.sputniknews.com/us/20160128/1503396.html#ixzz3yY5rJI71」
日本に置き換えてみれば、沖縄なりどこなりで自衛隊が演習をしていると、
どこからともなく中国やロシアの軍艦が現れ近づいてきたような事件である。
どれだけ不気味な威嚇を行っているかは想像に難くないが、
これが北朝鮮の非核化にも悪影響を与えるという指摘がされている。
-----------------------------------------------------
ロシア科学アカデミー東洋学研究所コリア課のアレクサンドル・ヴォロンツォフ課長は、
ラジオ「スプートニク」のインタビューで、
北朝鮮指導部はイランの「核合意」を経験として捉えていると述べ、次のように語った
「北朝鮮はイランの状況を注視している。
制裁を解除した後でまたそれを元に戻すという、
これほど矛盾した行為は、米国政府の約束を信じる根拠はないという
北朝鮮指導部の確信を強めるだけであることに疑いはない。
これらの条件において、北朝鮮は平等な協議形式しか設けない可能性がある。
もし米国とその同盟国がそれに反対し、北朝鮮に力と抑えつけの制裁という立場で
対応していくだけならば、もちろん北朝鮮が、『米国は自分たちが必要だと考える政策を行えばよい。
我々は、核プログラム開発という手段も含め、自分たちの防衛力を全面的に強化する道を進み続ける』
という立場に確信を持ち続けることは大いにあり得る」。
~中略~
さらに「スプートニク」は、米国とその同盟国に、
北朝鮮の核問題解決に向けた制裁アプローチが無益であることを説得するためには、
どのような論拠が有効か?と質問した。ヴォロンツォフ課長は、次のような見方を表した‐
「中国とロシアは現在、
まず当事者たちに協議を呼び掛けるなど、よりバランスの取れた文書にしようとしている。
ロシアと中国は、北朝鮮の今回の核実験について、制裁は機能しておらず、
北朝鮮の核プログラムの発展を止めることはできないことを証明しただけだと考えている。
これで交渉に代わるものはないということが明らかとなった。
一方で、まだ我々には、このような建設的な提案が、米日韓の賛同を得ると期待できる根拠はない。
この3カ国は、最も強力な制裁の策定、軍事協力の強化、
そして北朝鮮に対する軍事・政治的圧力の強化に夢中になっている」。
続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20160128/1506800.html#ixzz3yY8UfAf3
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リビアもまた、欧米との対話により自国の非核化に努めたが、
その結果が空爆による国の消滅と内乱の勃発だった。
「核に関する制裁」を解除して「ミサイルに関する制裁」を開始する一連の動きは、
北朝鮮の耳にも届いているはずだ。大国の不遜な態度は確実にアジアを不安定化させる。
あわせて考えたいのが、現在、中国にとって脅威なのは北朝鮮の核ではなく、
南シナ海や東シナ海における米韓日比の軍事的プレゼンスの拡大であるということだ。
そして、韓国・日本・フィリピンいずれも現地の住民は米軍基地を望んでいないということだ。
現在、米軍基地の撤退を求める運動は別個に行われていて、いまいち団結に欠ける。
仮に「アジアからのアメリカ軍の排除」というものを第一目標とすれば、これら運動と
北朝鮮の非核化および米朝間の平和条約の締結を目指す動きを一本化することができるだろう。
ところが、現在、日米韓による中国や北朝鮮に対する封じ込めというものは
右翼だけでなく左翼も共有しているものであり、それゆえに強力な抵抗勢力が生まれていない。
(ウソだと思うなら、中国脅威論、北朝鮮脅威論に毅然と非難・抵抗する動きが
どれだけ左翼の間にあるのか考えてみれば良い。少なくとも論壇ではそういう動きはない)
こういう弱さを克服するためには、
私は、やはり多くの左翼が認識している歴史観(世界観)の克服が必要だと思う。
①東西ドイツ統一や東欧諸国やソ連の社会主義の放棄を手放しに礼賛するような歴史観、
あたかも「正義は勝つ。悪は負ける」と言わんばかりの歴史観から脱却すること、
②社会主義国家の消滅は西側国家とのパワー・ポリティクスに敗北しただけにすぎず、
現地では民主化ではなく軍事・経済的属国化が起きたということ
(ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』などが参考になるはず)
③これら2点が強く意識されない現在、欧米諸国の中東・アジア・アフリカへの
軍事・経済的干渉は基本的に無批判のまま実行されており、それゆえに
ウクライナ政権の自国民への空爆やサウジアラビア軍のイエメン市民の虐殺が
まるで問題視されず、逆に中国やイラン、北朝鮮などの「人権問題」の解決への努力が
国内の保革団結(主流左翼の右傾化)の下、着々と行われる時代に突入している
という認識を持つべきだろう。
合衆国から「悪の枢軸国」と名指しで非難を受け、経済制裁の憂き目にあう。
イランは核兵器を持っているかもしれないという理由だけで随分と辛酸を舐めさせられたが、
外国との協調を重んじる現政権になって協議が進み、ついに制裁が解かれた。
制裁解除が順調に進んだ背景として、イランのエネルギー資源が重要な役割を果たしている。
イラン、欧州へのガス供給開始へ
イラン 欧州向け原油を値引き
イランはサウジアラビアやロシア、アメリカと比べれば
それほど多く石油を生産してはいないが、潜在する石油量はかなりのものだと思われる。
「あるのかないのかよくわからない核兵器のために石油ビジネスが停滞するくらいなら」
という思惑が制裁国にあったのではないだろうか?(現在、欧州はロシアとの関係が悪化している)
お互い、利用し利用される形で決まった妥結だが、
これまでイランが受けた経済的被害を思えば、制裁国は英断を下したものと評価したい。
(実はこの制裁国の中には日本も含まれる)
ところが、ここ最近、再びイランに
新たな形で制裁を加えようとする動きが出ている。
米国 イランのミサイルプログラムに対して追加制裁
仏 ミサイル実験を受け、新たな対イラン制裁を提案
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フランス政府は、イランが最近実施したミサイル実験を受け、
EU指導部に対し、新たな対イラン制裁の発動について検討するよう提案した。
AP通信が28日、EUの匿名代表者2人の話として報じた。
EU代表者らによると、現在EUはフランスの提案を検討しているという。
なおEUの大多数の加盟国は、フランスの提案について、
対イラン制裁解除後のイランとの政治・経済関係構築にとって非生産的だと考えているという。
EU代表者らによると、
フランスは、対イラン制裁解除後まもなく開かれたEU外相理事会の会合で提案した。
なお同時にAP通信によると、匿名を希望する欧州の別の外交官は、会合で
この問題は話し合われなかったと指摘したという。一方で同外交官は、「フランスが
イランに対する新たな制裁の検討を提案しなかったか?」との問いに答えることは拒否したという。
またフランス政府も、AP通信へのコメントを拒否したという。
先にイランのロウハニ大統領は、イタリア訪問を終え、フランスへ向かった。
続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20160128/1508409.html#ixzz3yY3Uf1gm
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『現代思想』2016年1月臨時増刊号(中東問題に関心のある方は読むのを薦める)や
『経済』2016年2月号によると、シリアにむけての軍事干渉(武装組織への支援や空爆)は
アメリカよりもフランスやイギリス、サウジアラビアのほうが積極的だったそうだ。
とはいえ、やはりアメリカの威嚇というものは凄まじいもので、次のような事件が起きている。
「イラン当局 オマーン湾で米国空母を追い払う
イランは、同国の海上軍事演習が行われているオマーン湾から、
米国の空母を退去させるよう求めた。通信社タスニムが報じた。
米国の空母は、演習が行われている領域までかなり接近したが、
イランが警告をした後、すぐに同領域から去ったという。
なおイラン海軍の司令部は、そのまま演習を続けたという。
続きを読む http://jp.sputniknews.com/us/20160128/1503396.html#ixzz3yY5rJI71」
日本に置き換えてみれば、沖縄なりどこなりで自衛隊が演習をしていると、
どこからともなく中国やロシアの軍艦が現れ近づいてきたような事件である。
どれだけ不気味な威嚇を行っているかは想像に難くないが、
これが北朝鮮の非核化にも悪影響を与えるという指摘がされている。
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ロシア科学アカデミー東洋学研究所コリア課のアレクサンドル・ヴォロンツォフ課長は、
ラジオ「スプートニク」のインタビューで、
北朝鮮指導部はイランの「核合意」を経験として捉えていると述べ、次のように語った
「北朝鮮はイランの状況を注視している。
制裁を解除した後でまたそれを元に戻すという、
これほど矛盾した行為は、米国政府の約束を信じる根拠はないという
北朝鮮指導部の確信を強めるだけであることに疑いはない。
これらの条件において、北朝鮮は平等な協議形式しか設けない可能性がある。
もし米国とその同盟国がそれに反対し、北朝鮮に力と抑えつけの制裁という立場で
対応していくだけならば、もちろん北朝鮮が、『米国は自分たちが必要だと考える政策を行えばよい。
我々は、核プログラム開発という手段も含め、自分たちの防衛力を全面的に強化する道を進み続ける』
という立場に確信を持ち続けることは大いにあり得る」。
~中略~
さらに「スプートニク」は、米国とその同盟国に、
北朝鮮の核問題解決に向けた制裁アプローチが無益であることを説得するためには、
どのような論拠が有効か?と質問した。ヴォロンツォフ課長は、次のような見方を表した‐
「中国とロシアは現在、
まず当事者たちに協議を呼び掛けるなど、よりバランスの取れた文書にしようとしている。
ロシアと中国は、北朝鮮の今回の核実験について、制裁は機能しておらず、
北朝鮮の核プログラムの発展を止めることはできないことを証明しただけだと考えている。
これで交渉に代わるものはないということが明らかとなった。
一方で、まだ我々には、このような建設的な提案が、米日韓の賛同を得ると期待できる根拠はない。
この3カ国は、最も強力な制裁の策定、軍事協力の強化、
そして北朝鮮に対する軍事・政治的圧力の強化に夢中になっている」。
続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20160128/1506800.html#ixzz3yY8UfAf3
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リビアもまた、欧米との対話により自国の非核化に努めたが、
その結果が空爆による国の消滅と内乱の勃発だった。
「核に関する制裁」を解除して「ミサイルに関する制裁」を開始する一連の動きは、
北朝鮮の耳にも届いているはずだ。大国の不遜な態度は確実にアジアを不安定化させる。
あわせて考えたいのが、現在、中国にとって脅威なのは北朝鮮の核ではなく、
南シナ海や東シナ海における米韓日比の軍事的プレゼンスの拡大であるということだ。
そして、韓国・日本・フィリピンいずれも現地の住民は米軍基地を望んでいないということだ。
現在、米軍基地の撤退を求める運動は別個に行われていて、いまいち団結に欠ける。
仮に「アジアからのアメリカ軍の排除」というものを第一目標とすれば、これら運動と
北朝鮮の非核化および米朝間の平和条約の締結を目指す動きを一本化することができるだろう。
ところが、現在、日米韓による中国や北朝鮮に対する封じ込めというものは
右翼だけでなく左翼も共有しているものであり、それゆえに強力な抵抗勢力が生まれていない。
(ウソだと思うなら、中国脅威論、北朝鮮脅威論に毅然と非難・抵抗する動きが
どれだけ左翼の間にあるのか考えてみれば良い。少なくとも論壇ではそういう動きはない)
こういう弱さを克服するためには、
私は、やはり多くの左翼が認識している歴史観(世界観)の克服が必要だと思う。
①東西ドイツ統一や東欧諸国やソ連の社会主義の放棄を手放しに礼賛するような歴史観、
あたかも「正義は勝つ。悪は負ける」と言わんばかりの歴史観から脱却すること、
②社会主義国家の消滅は西側国家とのパワー・ポリティクスに敗北しただけにすぎず、
現地では民主化ではなく軍事・経済的属国化が起きたということ
(ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』などが参考になるはず)
③これら2点が強く意識されない現在、欧米諸国の中東・アジア・アフリカへの
軍事・経済的干渉は基本的に無批判のまま実行されており、それゆえに
ウクライナ政権の自国民への空爆やサウジアラビア軍のイエメン市民の虐殺が
まるで問題視されず、逆に中国やイラン、北朝鮮などの「人権問題」の解決への努力が
国内の保革団結(主流左翼の右傾化)の下、着々と行われる時代に突入している
という認識を持つべきだろう。