いかつい顔の押し売りが
ピカピカのリンゴを売っていた
ボロいトラックに満載させて
ピンポーン
( お宅の嬢ちゃん、リンゴが食べたいんだってよぉ )
男は素手でパカンとりんごを割り、一口かじって奥さんに渡す
奥さんは、男に視線を合わせず
( 5個、おいくら? )
( 2000円 )
奥さんは財布の最後の千円札を男に渡す
男は堂々とお札をひっつかむと
リンゴを6個置いて出て行った
私は押し売りにニコニコバイバイする
奥さんは姿勢をたてなおし、鼻歌をたてなおして
台所へ消えた
30秒後、
奥さんは、
私をしっかり
だきしめた