気がつくと アセチレンランプがあるような
フェリーニのサーカス小屋の周りのような
しかも日本の村祭りの
わずかに懐かしいお香がまじった 泥水があるような匂い
そんなところに独りでいたんだ
手前では 今にも夜の顔に変身しそうなピエロが
そらせた指先で 笛をふいて場所限定で きらびやかにみえるモノを誘ってる
(レシートだらけのお財布には265円と家の鍵しかないなぁ・・・)
続く夜店と夜店の 間道と裏道をあるく
泥んこ道の上澄みには 不思議な今夜が映ってるよ
あたしは ボール当てゲームの前で
ポッケに手をつっこんだ ひょろ長い影法師みたいな あなたを 見つけた
忍び足でそばに行ったのに 83分前から そんなあたしを知ってるような余裕で
ポッケから懐かしい手を出して ひらひらさせる
(何が欲しい? 僕、とってあげるよ)
あたしは 抱えるくらいの赤いフカフカした ブタのぬいぐるみが欲しくなった
と、同時に今までぬいぐるみ取りなんてしたことないし、してもらったことないし、
大体どうしてぶぅちゃんが欲しいのかもあやふやになる
(あの赤いフカフカぶぅちゃんが、あたしを連れてって♪言ってたんだ)
あなたは ポッケから裸のコインを３枚だして 右半分が愉快そうで左半分がめんどく
さそうな店のオジサンに渡した
オジサンは、背中からシャボン玉色のボールを取り出して、あなたに投げた
回転する籠は 遅くなったり早くなったり・・・
あなたはあたしにウィンクしてから シャボン玉色のボールを籠に投げた けれど
はずれちゃったんだ
あたしは １秒くらい予感してた (はずすかも)って怖さがプクプクしたけれど
あなたは そのプクプクをなでつけるように口の端っこで笑って
利き手側のポッケから裸のコインを３枚だして。。。。
当たりっ。。。。
あたしは右半分のおじさんから 赤いぶぅちゃんを受け取ったの
あなたは ぶぅちゃんごと あたしをぎゅっっと抱きしめて 幸せそうに目を大きくする
あたしは ちょっと恥ずかしくて嬉しくて きょろきょろしそうになる
(幸せなふたりのとき 目をあけていたいんだ)
あなたは たまにぶぅちゃんの鼻をつつきながら 何か 優しげな言葉をかけてて
あたしはなるべく目をあけていようってそんなことに気をとられつつ
のんびりな夜の道を歩く
あたしたちは二人とも携帯電話を忘れてたよ。。。。
(連絡しなくちゃっ)
ふたりとも思って 電話ボックスを探す
お祭りのような半径１.6キロは ジャングルの冒険みたいで
でもインチキっぽくて あたしは 多分独りで嬉しくなる
だって あなたがインチキがすごく好きとは思えないでしょ。。。
あたしは出来るだけ あなた範囲をはみ出さないように してるつもりでいる
(ぁぁ・・・)
想像どおりの学習塾と電話屋さんっていう
最もインチキっぽいお店に たどり着いちゃったんだ
店の中はガリバーのラピュタみたいに とても真面目にへんだった
糸電話みたいな紙コップ付の電話ブースが並んでて
薬屋さんの動く象さんについてるような料金箱がある
あなたが はずしたコインが出てきたポッケから また コインを出そうとしたら
コインは みんなM&Mのピーナツチョコみたいになってる
いやいや、ピーナツチョコじゃなくって
桃の種に色付のお砂糖を コーティングしたものだよ と 付け髭をした老人が言った
とてもコインサイズじゃないのに
色とりどりの桃の種はどんどん料金箱に吸い取られていく
紙コップを両方の耳にあてると しばらくは 遠い空気の音がする
交換手は塾とダブルで担当しているので忙しくて せかすように他人行儀
(誰に連絡するんだっけ。。。。)
あたし達は 誰に連絡するか忘れてて 思い出した
相手は あたし達だったのよ。。。
ね
あなたは赤いぶぅちゃんに 軽くパンチをあてた手を あたしの脇腹にまわして。。。
(ぁっ、目つむっちゃった・・・・)
覚めない夢のフチを いっしょにブラブラ歩いた
