春に君がグランパの名前だけ磨いた墓標が220日白かった
そして石板の最後のスペースがマリア…で『白く』埋まってた
最初と最後だけ白い名前
アルファとオメガの復活蝋燭みたいだ
石工のプロコーピイチは、カビと汚れで黒くなっているクリスチャンネームも名前も無視した。洗い清める墓参者が存在しない証だ。プロコーピイチは、石板の最終位置にマリア…の名前を請負った。石工の手間賃や拘束時間に、墓石板を洗う事は含まれていないんだ。いや、そうだろうか。プロコーピイチは12年前黒御影の石板の6人目で彫り損じた。石板を白御影石に替えて…コツコツ彫り直したのが12年前よね。その白御影石は21人目で満席になった。黒御影を掘り損じて親方に怒鳴られて新たな白御影の材料代も運賃もプロコーピイチの月給から引かれた。今年、プロコーピイチ爺さんは12年前に背負った借金から解放された。
「石工さんは、新たな死者の名前を彫る前に、墓石を洗い清めないの?」
「はい。墓石のお名前が縁の方に心を込めて洗われて、白い塗料が見えたその時、はじめてクモの糸が垂れるんですよ。私は、お墓参りが尊いことだと思っていますので。私には先祖代々のお墓はありませんが石工になってから美しい石目や祖先への敬意を教わりました。私は難しい事は分かりませんが…
「蜘蛛の糸ですか? ほほぅ。」
「ありのままの状態は、私の抗議かもしれないなぁ。お寺や神社の仕事がほとんどでね…コロナで多くの神社は祈りの場所をもっと清潔に美しくしましたね。何代にもわたる氏子さん達の祈りが形になって、通りすがる人も動物も植物も…抱きとめるんだな。本当に清々しく作り直されたり、季節の花で飾られたりね。。。
まっ、私がこの見かけ通り、親が人種違いのあいのこでして、父親には生まれてこのかた会ったこともないですが。日本人の母親には、わかり得ない胸騒ぎがあるんですわ。どっかこっかで、自分の境遇や見かけに似た人を探してるような…。棘がついた鞭をね、自分の背中に打って血を滲ませたいようなね。昔は西洋の人達一絡げに「肉食ってるから」っていうね。だからあの酷い十字架のイエズス像見ながら、ハッピーイースターだの一神教謳っているのに自分が信仰してる聖人様に願掛けしたりね。。。そんなことを感じましたさ。母親が反抗期の俺を持て余してね、ちょっと教会の孤児院にいた事があったんですよ。何かを信じられればね、やっと安心するのかもしれんね。いつも自分は、なんか複雑な感じで…
仕事柄、故人とその家族をたくさん想像するんですよ。ぁぁ、うちの会社は営業がやりとりしますんで、私は注文の石を刻むだけですわ。・・・私は、横浜生まれでね、似たような容貌の兄さんが、まっ本当の兄さんではないのですが、目と眉の間の間隔って言うんですかね、そんな細かいところが似通ってる雰囲気がありまして・・・5年前までここで墓守の仕事をしてたのですよ。兄さんと言ってもちょっと思ってても、俺らは話したこともないですがね、その兄さんが主のご要望に沿って墓をほじくって別に移したり、掃いたり拭いたり祈ったりねぇしてたんですわ。兄さんが墓守に雇われていた時も、信者だか檀家だかわかりませんが、ここの墓参りの人たちは何か急いでいましてね、仏教の方達みたいに墓石を洗ったりお線香を上げたりする余裕が無いんですかね。」
「ぁぁ、そうですね。野外ミサのように神父様が侍者に香炉を持たせて・・・そんな私にとっては牧歌的なこともコロナ禍以後しませんもの。。。私がというと出来ませんもの、資格がないし・・・」
「5代は続かないとと思いますよ。ここは鎌倉ですからね。宗派的な信心はわかりませんが、ここの管理の看板も教会ではなくて石材屋ですよ。なんだかなぁ。私は、生きている人の真心を信じたいんですよ。だからあるがままに、新しい名前を彫って、古い汚れた名前は洗いません。それが本当のことだと思うからです。あれあれ、もうすぐ雨が降りますよ。あの雨雲が近づいていますから、傘が無いなら濡れますよ」
「ありがとうございます。良い話をして下さって、ありがとうございます」
「まぁまぁ、へんなお話してしまって、すみませんね。。。。(お墓参りご苦労様でした。私には今年孫が生まれましてね。ありがたいことに。。。嫁が教育上とか言うんですよ。ほら、役所も生涯教育とか言うでしょ。つくづく、私の3世代目に向かって俺は真心を現したいって言えば大袈裟ですがね、せめて爺ちゃんはかっこ悪くない・・・みたいな、はははっ、そんな気持ちを持ちたいんです。長くなりましたね。かっこ悪いですね。さようなら)」
そして石板の最後のスペースがマリア…で『白く』埋まってた
最初と最後だけ白い名前
アルファとオメガの復活蝋燭みたいだ
石工のプロコーピイチは、カビと汚れで黒くなっているクリスチャンネームも名前も無視した。洗い清める墓参者が存在しない証だ。プロコーピイチは、石板の最終位置にマリア…の名前を請負った。石工の手間賃や拘束時間に、墓石板を洗う事は含まれていないんだ。いや、そうだろうか。プロコーピイチは12年前黒御影の石板の6人目で彫り損じた。石板を白御影石に替えて…コツコツ彫り直したのが12年前よね。その白御影石は21人目で満席になった。黒御影を掘り損じて親方に怒鳴られて新たな白御影の材料代も運賃もプロコーピイチの月給から引かれた。今年、プロコーピイチ爺さんは12年前に背負った借金から解放された。
「石工さんは、新たな死者の名前を彫る前に、墓石を洗い清めないの?」
「はい。墓石のお名前が縁の方に心を込めて洗われて、白い塗料が見えたその時、はじめてクモの糸が垂れるんですよ。私は、お墓参りが尊いことだと思っていますので。私には先祖代々のお墓はありませんが石工になってから美しい石目や祖先への敬意を教わりました。私は難しい事は分かりませんが…
「蜘蛛の糸ですか? ほほぅ。」
「ありのままの状態は、私の抗議かもしれないなぁ。お寺や神社の仕事がほとんどでね…コロナで多くの神社は祈りの場所をもっと清潔に美しくしましたね。何代にもわたる氏子さん達の祈りが形になって、通りすがる人も動物も植物も…抱きとめるんだな。本当に清々しく作り直されたり、季節の花で飾られたりね。。。
まっ、私がこの見かけ通り、親が人種違いのあいのこでして、父親には生まれてこのかた会ったこともないですが。日本人の母親には、わかり得ない胸騒ぎがあるんですわ。どっかこっかで、自分の境遇や見かけに似た人を探してるような…。棘がついた鞭をね、自分の背中に打って血を滲ませたいようなね。昔は西洋の人達一絡げに「肉食ってるから」っていうね。だからあの酷い十字架のイエズス像見ながら、ハッピーイースターだの一神教謳っているのに自分が信仰してる聖人様に願掛けしたりね。。。そんなことを感じましたさ。母親が反抗期の俺を持て余してね、ちょっと教会の孤児院にいた事があったんですよ。何かを信じられればね、やっと安心するのかもしれんね。いつも自分は、なんか複雑な感じで…
仕事柄、故人とその家族をたくさん想像するんですよ。ぁぁ、うちの会社は営業がやりとりしますんで、私は注文の石を刻むだけですわ。・・・私は、横浜生まれでね、似たような容貌の兄さんが、まっ本当の兄さんではないのですが、目と眉の間の間隔って言うんですかね、そんな細かいところが似通ってる雰囲気がありまして・・・5年前までここで墓守の仕事をしてたのですよ。兄さんと言ってもちょっと思ってても、俺らは話したこともないですがね、その兄さんが主のご要望に沿って墓をほじくって別に移したり、掃いたり拭いたり祈ったりねぇしてたんですわ。兄さんが墓守に雇われていた時も、信者だか檀家だかわかりませんが、ここの墓参りの人たちは何か急いでいましてね、仏教の方達みたいに墓石を洗ったりお線香を上げたりする余裕が無いんですかね。」
「ぁぁ、そうですね。野外ミサのように神父様が侍者に香炉を持たせて・・・そんな私にとっては牧歌的なこともコロナ禍以後しませんもの。。。私がというと出来ませんもの、資格がないし・・・」
「5代は続かないとと思いますよ。ここは鎌倉ですからね。宗派的な信心はわかりませんが、ここの管理の看板も教会ではなくて石材屋ですよ。なんだかなぁ。私は、生きている人の真心を信じたいんですよ。だからあるがままに、新しい名前を彫って、古い汚れた名前は洗いません。それが本当のことだと思うからです。あれあれ、もうすぐ雨が降りますよ。あの雨雲が近づいていますから、傘が無いなら濡れますよ」
「ありがとうございます。良い話をして下さって、ありがとうございます」
「まぁまぁ、へんなお話してしまって、すみませんね。。。。(お墓参りご苦労様でした。私には今年孫が生まれましてね。ありがたいことに。。。嫁が教育上とか言うんですよ。ほら、役所も生涯教育とか言うでしょ。つくづく、私の3世代目に向かって俺は真心を現したいって言えば大袈裟ですがね、せめて爺ちゃんはかっこ悪くない・・・みたいな、はははっ、そんな気持ちを持ちたいんです。長くなりましたね。かっこ悪いですね。さようなら)」