miss pandora

ONE KIND OF LOVE

愛にはいろいろ種類があるの
全部集めて地球になるの

ダットンの事

2019-12-11 07:24:17 | A●●-PUNKs
ダットンの事

私の5才の誕生日の前に、ママが赤ちゃんを産んだ。私は、彼女が生まれるまでの数ヶ月、日常で母を独占して毎日ママにお腹の赤ちゃんの絵を描いてもらっていた。私がお家の絵を描いて、そこに来る赤ちゃんの絵だ。毎日、絵を描いてもらいながら、私は《本物のお姉さん》になるのに、はりきっていた。サンタクロースは、ほとんど本物みたいなオシッコをたれる赤ちゃん人形をくれたし、白湯とミルクの哺乳瓶も洗い替えのオムツセットも付いていた。サラシで母が作った本物のオムツも畳み方を教えてもらって、本当の赤ちゃんがいつ来てもいいように、白い藤の籠に入れたり出したりしていた。ブティックのように、赤ちゃんとママと私のお揃いのドレスや靴下や特別の食器やベビーベッドや…ママのお腹が膨らんでいくと同時に家の中が素敵に変わっていった。
私は、どっちかというと妹が欲しかった。突然ママが居なくなって、幼稚園の先生をしている結構子供に厳しい従姉妹のお姉さん達が仕切った家で、我慢しながら兄と待っていた。ママが帰ってくることを…
黒い電話が鳴った。お兄ちゃんが電話をとった。無事に赤ちゃんが生まれたと父からの電話だった。しかも女の子の赤ちゃんだと!私は、ちょっぴりしかオヤツをくれない従姉妹への不満やママが恋しくてしかたないことなど、全て飛ばして嬉しかった。本当のお姉さんでしかも妹のお姉さんになったことが、誇らしかった。
ふくふくと真っ白で、私と違って上品な小さなお口の赤ちゃんが、ママとパパと一緒に帰ってきた。見ても見ても、どんなに見ても可愛らしくて優雅で、兄と私は数えきれないほどため息をついたと思う。
妹の1才前後に、パパが私たち女の子にクマのぬいぐるみをくれた。私には、ピンクの熊、妹には、赤い熊。妹は、自分の赤い熊を可愛がらないで、私のピンクの熊をダットンと呼んで抱っこしていた。気前のいい私は、その熊さんの持ち主を取り替えた上で、赤い熊を抱っこしながら庭の犬小屋を見た。(ロッキーには、お人形がないのね!)本物のお姉さんは、赤い熊を愛犬ロッキーにあげた。ロッキーは、喜んで、、、、あっと言う間に赤い熊ちゃんを噛んでめちゃくちゃにしてしまった。私の熊ちゃんもロッキーにあげた熊ちゃんも、いなくなった。。。
私は、多分、本物のお姉さんだから、鷹揚に装ったと思う。

その後、寡黙な赤ちゃんの妹は、ピンクのダットンとは饒舌に話していた。父は、2匹くらいのダットンを持っていて、あまりにもダットンがくたびれると、お昼寝の間に、そっとダットンを取り替えた。妹の難病が発覚して2才くらいで北大病院に入院した時もダットンは一緒だった。長い入院で、私と兄は、妹が帰りたくなるとかわいそうだからと一度も会いに行けなかった。退院した妹は、私のことを忘れていた。私は、ダットンにとりなしてもらって、妹に近づいた。。。




画像*色紙・鉛筆・パステル Ari Nakamura2019
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