テドロス・アダノム事務局長は演説で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で、「世界は依然として非常に危険な状態にある」と述べ、一部の先進国にワクチンが集中している現状の是正を訴えた。
世界のワクチン接種の75%が、わずか10か国に集中している点を挙げ、「恥ずべき不公平だ。
ワクチンを手にした少数の国々が、世界のその他の命運を左右している」と批判した。
これまで接種されたワクチンを合わせれば、世界の医療従事者や高齢者に接種するのに十分な量だったとし、「公平に分配されていれば、我々はもっとよい状況にいられたはずだ」とも語った。
テドロス氏は今年9月までにすべての国で人口の少なくとも10%、年末までに30%にワクチン接種を済ませる目標を掲げ、加盟国にはワクチン分配の国際的枠組み「COVAX(コバックス)」への提供を、製造者にはワクチン増産を求めた。
演説中、医療従事者をたたえるため参加者に拍手を求め、約30秒間にわたって手をたたく場面もあった。
フランスのマクロン大統領は総会にビデオメッセージを寄せ、感染症発生時にWHOの調査権限を強めるよう訴えた。
ドイツのメルケル首相も、「WHOは引き続き、世界の保健に主導的な役割を果たすべきだ」と述べ、今後の大流行に対処するパンデミック条約採択を支持した。
総会は6月1日までで、これまでの新型コロナ対応の検証や、WHOの機能強化について議論する。
【ウィーン=細川倫太郎】世界保健機関(WHO)は12日、新型コロナウイルスのワクチンについて3回目の接種をすべきではないとの見解を示した。
追加接種が必要との科学的根拠はないとし、ワクチンの普及が遅れている途上国に優先供給するよう訴えた。
テドロス事務局長は12日の記者会見で「今、優先しなければならないのはまだ接種をしていない人々だ」と強調した。
米製薬会社のモデルナとファイザーを名指しし、「追加接種のために接種率が比較的高い国へのワクチン供給を優先するのではなく、低・中所得国への供給に全力を尽くす必要がある」とも指摘した。
イスラエルは12日、免疫力の低い成人を対象に3回目の接種計画を発表した。
一定期間後にワクチンの効果が低くなる可能性にも備え、この他にも複数の国が追加接種を検討している。
WHOは多くのワクチンに必要な2回目接種後、1~2年以内の追加接種には否定的な見解を示している。
子どもの予防接種、コロナ禍でも続けて WHOが危機感
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は、新型コロナウイルス対策の影響によって世界で子どもへのポリオやはしかなど通常のワクチン接種が停滞していることを取り上げ、「命への大きな脅威となる」と22日の記者会見で危機感を示した。
この者達のターゲットは、子供と老人である・・・
テドロス氏は、新型コロナの影響で通常のワクチン接種の活動が「少なくとも68カ国で大幅に停滞し、8千万人の子どもが影響を受けている」との分析を報告。
「命を救う多くのワクチンが既にあり、それを子どもたちに届け続けなければならない」と述べた。
WHOは新型コロナ対策と両立させる形でのワクチン接種活動の指針を発表するとしている。
会見には、ワクチン接種の推進でWHOと協力する国連児童基金(ユニセフ)のヘンリエッタ・フォア事務局長も参加。
フォア氏は、医療機関が新型コロナ対応で手いっぱいになったり、移動制限で親が外に出なくなったりしてワクチン接種が進まず、渡航制限の影響で供給も滞る現状を報告し、「子どもの権利の危機になることを恐れている」と訴えた。
また、人と人との距離をとりながら通常のワクチン接種を継続しているラオスなどの例を紹介した。