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社会保障を「施し」から「権利」へ変える

2023年06月15日 | 生活

~「全世代型社会保障」のあるべき姿

井手英策(慶応義塾大学経済学部教授)

Imidasオピニオン2023/06/14

 

自己責任が前提の「勤労国家」

 政治の世界で「全世代型社会保障」という言葉を耳にするようになった。政府の説明によれば、人生100年時代の到来を見すえ、高齢者だけでなく、子ども、子育て世代、さらには現役世代全体を射程に収めた、持続可能な制度改革をめざす、とされる。

 なぜこうした裾野の広い改革が必要なのか。まずはその背景を探ることから始めよう。

 私は日本の福祉国家を「勤労国家(Industrious State)」と定義してきた。勤労国家の前提にあるのは、勤勉に働き、倹約、貯蓄を行うことで将来不安に備えるという「自己責任」である。子育てや教育、病気や老後の備えに関して、日本における政府の保障は十分でなく、とりわけ現役世代への給付は、先進国最低の水準に甘んじてきた。

 想像してほしい。大学の授業料、医療費、介護費のいずれも自己負担が求められる。これらのサービスが無償化ないし低負担化されている他の先進国との差は明白だ。また、義務教育でさえ、修学旅行費、給食費、学用品費といった負担が重くのしかかり、貧困層には生活保護、低所得層には就学援助をつうじて財政支援が行われている。

 この勤労国家が、近年、〈逆機能〉し始めている。逆機能とはどういうことか。それは、自己責任で生きていくための前提条件である経済成長、所得の増大が困難になり、自己責任の美徳が社会に深刻な分断を生みだしている、ということだ。

平成元年(1989年)と平成31年(2019年)を比較しつつ、日本の経済データを追跡してみよう。

 一人あたりGDPは世界4位から26位へと順位を落とした。企業時価総額トップ50社のうち32社を日本企業が占めていたが、平成の終わりにはわずか1社になった。勤労者世帯の実収入は平成9年(1997年)がピークであり、平成31年には世帯収入300万円未満の世帯が全体の約33%、400万円未満が約45%を占めた。この比率は平成元年とほぼ同じである。また、あるデータでは、2人以上世帯の3割、単身世帯の5割が「貯蓄なし」と回答している。

 自己責任が前提の勤労国家では、経済的に自立できない人たちは〈道徳的失敗者〉とみなされる。

 アジア通貨危機が直撃した1997年から98年にかけ、失業者が約50万人増加した。自己責任という社会的責務を果たせなくなった人たちの一部は、失業給付を利用するでも、生活保護を利用するでもなく、命を絶つという決断をした。1年で自殺者の数は8000人以上増え、14年にわたって3万人を越えた。中心は住宅ローンや家族の暮らしを背負わされた40〜60代の男性労働者だった。

 所得が少なく生活保護を利用できる人たちのうち、スウェーデンでは8割、フランスでは9割が制度を利用するが、日本では2割程度しか利用しない。他者に頼るのを恥ずべきことと考え、生活が困窮しても社会的責務から逃れられない人びと。通俗道徳の根深さがハッキリと浮かびあがる。

「弱者」への関心が低い〈分断社会〉の誕生

 平成をつうじて晩婚化と少子化が進んだことは周知の通りである。くわえて、外食や旅行、衣類や履物の購入が控えられ、持ち家率も大きく低下した。私たちは貧しくなった。ところが、生活を切り詰め、自己責任をまっとうしようと努力する労働者たちは、自分たちが依然として中間層に踏みとどまっていると感じている。

 内閣府の「国民生活に関する世論調査(令和元年6月調査)」によると、自らの生活水準を下流とみなす人は4%しかおらず、93%が中流と考えている。さらに、「国際社会調査プログラム(2019年)」では、「中の下」と考える日本の回答者の割合は、28の調査国の中で1位である。

 貧しくなっても、生活を切り詰め、歯を食いしばって働き続けなければならない社会。その裏返しとして、弱い立場に置かれた人たち=「弱者」への関心が薄れつつある。

「国際社会調査プログラム(2016年)」のなかに、政府の責任を問う質問がある。以下の施策を政府の責任とみなさなかった日本の回答者割合を見てみると、

・「病人が病院に行けるようにすること」35カ国中1位

・「高齢者の生活を支援すること」35カ国中1位

・「失業者の暮らしを維持すること」34カ国中2位

・「所得格差を是正すること」35カ国中6位

・「貧困世帯の大学生への支援」35カ国中1位

・「家を持てない人にそれなりの家を与えること」35カ国中1位

である。他国と比べ、日本の「弱者」への関心の低さは際立っている。

 寛容さをなくした社会は財政の再分配機能も弱い。OECDの調査(2008年)によると、低所得層への給付による格差是正効果、富裕層への課税による格差是正効果は、調査対象21カ国のなかでそれぞれ19位、最下位である。かつては北欧とならんで平等主義国家と呼ばれた日本だが、OECDデータ(2018年)によると、相対的貧困率は調査対象国のなかで9番目に高く、所得格差の大きさを示すジニ係数の大きさも11位という状況だ。

  勤労国家では、経済が衰退し、所得水準が低下すれば、多数者が自らの生活防衛を優先するほかない。「弱者」の苦しみを他人事とみなす〈分断社会〉の誕生である。現役世代は自己責任、就労を終えた高齢者と貧困層の生活に限定して保障するという勤労国家は逆機能し、自己責任の痛みが社会の分断を加速させている。

分断と対立を生む「全世代型社会保障」構想

 最初の問いに戻ろう。現役世代の受益の乏しさ。深まる生活苦。これらの事実を念頭におけば、保障の範囲を現役世代や子どもにまで拡充し、自己責任の領域を縮小する全世代型社会保障が構想されたのは、もっともなことだといえよう。

 だが、現段階の政府の構想によって、人びとの将来不安が払拭され、社会的な分断が緩和するか、と問われれば、答えはNOである。

 まず、全世代型社会保障では、1)子ども・子育て支援、2)働きかたに中立的な社会保障、3)医療・介護の制度改革という3本の大きな柱が立てられている。政策のリストは広範にわたる。だが、令和5年度(2023年度)の改正で、現実に具体的な制度改革に結びついたのは、出産育児一時金の増額やかかりつけ医の法制化支援など、ごく一部だ。

 むしろ議論の焦点は、現役世代の受益を大胆に拡大することよりも、高齢者の負担を増大させ、現役世代の不満を和らげることにあった。事実、介護サービスの利用時負担の引きあげ、国民年金の保険料納付期間の延長、75歳以上の後期高齢者医療の保険料の引きあげ等、財源問題は陰に陽に議論の俎上に載せられた。

 統一地方選挙前という事情もあって、実現したのは、後期高齢者医療の保険料引きあげだけだった。乏しい財源を高齢者に求め、出産を控えた世帯に現金を配る、現役世代の保険料負担を軽減するというこぢんまりとした政策パッケージが選択された。

 この現実を見て、全世代型社会保障といわれても、誇張の感をぬぐえないのは私だけではないだろう。政府は、出産育児一時金が42万円から50万円に大幅に増えた、というが、子どもにかかる膨大な教育費の前では焼け石に水である。かかりつけ医の法制化も欧米で実施されている本格的な制度には程遠い。

 さらにいえば、負担者=高齢者、受益者=子育て世代という線引きは世代間の分断を生む。同世代の間でも、出産する世帯とそうでない世帯との間に対立の芽が生まれる。社会的分断の緩和という視点からすれば、むしろ反対のベクトルを持つ制度設計なのである。

ベーシックサービスで人間の尊厳を平等に

 社会の分断状況を打破するカギは、限られた財源のなかで世代間のバランスをとるのではなく、すべての人たちの生活を保障し、世代間の対立、そして所得階層間の対立を無効化することである。

 私はこうした視点に立って、税を財源として、すべての人びとに、教育、医療、介護、子育て、障がい者福祉等の「ベーシックサービス」を提供することを提案してきた(『どうせ社会は変えられないなんてだれが言った?』小学館、『幸福の増税論』岩波書店)。

 ベーシックサービスとは、誰もが必要とする/必要としうる基礎的なサービスである。ILOが「GDPの2〜3割を要する」と警告を発したベーシックインカムとは異なり、ベーシックサービスは必要な人しか使わないため、財源を大幅に節約できる。私たちは、現実主義に立脚し、病を抱えても、失業しても、長生きしても、子どもをもうけても、貧乏な家庭に生まれても、誰もが人間らしく生活できる社会をめざすのである。

 もちろん、無年金の高齢者、シングルマザー、障がい者など、就労が困難な人たちは現金を必要とする。それゆえ、私は、ベーシックサービスとあわせて、「品位ある最低保障(Decent Minimum)」を提案する。

 すでに指摘したように、日本社会では、「弱者」に対する配慮が成立しにくく、「弱者」もまた、施しをきらう。そこで、政治戦術として二つのステップが必要となる。

 まず、ベーシックサービスの無償化で中間層の将来不安を解消し、低所得層への財政支援に対する嫌悪感を緩和する。自分たちの生活が守られるのであれば、生活扶助、失業給付の拡充、住宅手当の創設等、どうしても働けず、財政支援に頼らざるをえない人たちへの生存保障(=品位ある最低保障)は許容されやすくなる。

 もう一点、ベーシックサービスをすべての人たちに保障していくことで、「助けられる領域」を大胆に縮小させる。医療や介護、教育が無償化されれば、生活保護の医療扶助、介護扶助、教育扶助、さらには修学援助も大幅に削減されることとなる。

 確認しておきたいことがある。勤労国家のもとでは、中間層であっても、運が悪ければ将来不安に直撃される。共稼ぎで年収1000万円の世帯であっても、一方が病に倒れ、職を失えば、将来不安はたちまち現実になる。

 品位ある最低保障は低所得層への施しではない。あらゆる人びとが直面しうるリスクに対する最低保障、すべての人たちのセーフティネットだ。すべての人びとの生存・生活保障が徹底されれば、中間層の低所得層に対する疑念、嫉妬、低所得層の後ろめたさも解消される。所得だけでなく人間の尊厳を平等にできる。全世代型社会保障は、パッチワークではなく、真に包括的な制度改革として構想されねばならない。

6%の消費税増税でかなう、自己と他者の幸福が調和する社会

 大胆な改革には財源が必要であるが、ここでも分断社会の解消がめざされる。

 私は消費税を財源の中心に据え、これに所得税の累進性強化、減税の続いた法人税率の回復、金融資産や相続財産への課税強化、逆進性の強すぎる社会保険料の改正等をセットで議論すべきだと考えている。

 なぜ、逆進性のある消費税が財源の中心なのか。それは、低所得層も含めすべての人たちが納税者となることで、給付を「施し」から「権利」に変えたいからである。納税という責務を果たせば、社会の一員としての自尊心が育まれる。同時に、納税者としてサービスを利用するのは当然だ、という社会規範も生まれる。

 たしかに消費税を柱とすることへの批判は強い。だが、税の累進度の強いアメリカは所得格差が大きく、累進度の弱いスウェーデンは所得格差が小さい事実をどう考えるか。逆進的であっても、貧しい人も負担するがゆえに豊富な税収をうむ消費税を利用し、手厚い給付を行えば、所得格差は小さくできる。

 医療、介護、大学教育、障がい者福祉を無償化する。また、義務教育で必要となる給食費、学用品費等も無償化し、さらには保育士や介護士等の給与も引きあげていく。これに品位ある最低保障である、生活扶助・失業給付の3割拡充、住宅手当の創設がくわわる。

 以上の財源として、消費税なら6%の増税、つまり16%への引きあげが必要となる。大増税に聞こえるが、じつは主要先進国の平均程度の税負担でしかない。そして、住宅手当を全体の2割に相当する低所得層に月額2万円給付するから、6%の増税でも、低所得層は年間で約15万円も得をする計算になる。それだけではない。社会的分断は緩和され、すべての人びとの生活が楽になり、施しは権利に変わる。

 哲学者イマヌエル・カントは、『道徳形而上学原論』のなかで、人間が互いを同等な存在とみなし、人間自身を手段ではなく、目的として扱うことで尊厳が守られる、と論じた。

 所得や年齢で人間の扱いを変えるのではなく、〈あらゆる人間にとってのニーズ〉を基準に人間の扱いを変えないからこそ、社会的分断は緩和される。全世代型社会保障はゴールではない。人間の尊厳を重んじ、自己と他者の幸福が調和する社会への変革こそがゴールだ。社会保障改革はその手段に過ぎない。


園のようす。

咲いた咲いた
チャイブ

メドウアネモネ

バラ

色づき始めたハスカップ


突然、パソコン画面が真っ黒、鳴り響くアラーム音 焦った女性は、表示されたサポートセンターに電話した

2023年06月14日 | 生活

神戸新聞NEXT 2023.06.13

 パソコンの画面が急に真っ黒になり、警報音が響く。「あ、データが消えちゃう」。わらにもすがる思いで画面に出てきたサポートセンターに電話すると、実は詐欺集団でお金をだまし取られる-。そんな「サポート詐欺」が多発している。5月31日に被害に遭った兵庫県西宮市の女性(72)は「多くの人に知ってほしい」と状況を語った。(高田康夫)

■突然、画面が真っ黒に

 女性は、自宅のパソコンで文字を点字に変える点訳ボランティアをしている。5月31日昼ごろ、休憩しようと思い、ふと日本語の検索サイト「ヤフージャパン」の「ゲーム」を押した。いろいろなゲームが出てきた。何度かクリックするうちにかわいらしいカラフルな画面になった。それを押した瞬間だった。

 画面は真っ黒に。アラーム音が響き出した。「データが消えてしまう」とパニックになるうちに、「パソコンがウイルスに侵されています」というメッセージとサポートセンターの電話番号が表示された。「ここに電話すれば何とかなる」と思い、すぐに電話した。その間もアラーム音は鳴り続けていた

 電話に出た人は、日本語のイントネーションがおかしく、「日本人じゃない」と感じた。東京都港区所在だという会社で、パソコンを遠隔操作で修理すると説明された。すぐに音が消え、元の画面が出てきた。「助かった」と信じていた。

■「パソコン壊れる」と指示され

 その後、画面に「修理代5万円」の表示が出た。だが、女性は年金暮らし。5万円も払えない。「無理です」と電話で言うと「あなたのパソコン、壊れるよ」と言い、再びアラーム音が鳴り始めた。そのうち「3万円にする」「1万円でいい」と値段を下げてきた。

 この時点で少し疑問を持った女性は「詐欺なんですか」と聞いた。すると電話相手は「なんてことを言うんですか」と怒って、音を再び鳴らし威嚇した。

 「どうやって入金するのか」と聞くと、「コンビニで1万円のGoogle Play(グーグル・プレイ)カードを買ってきて」と言われ、近くのコンビニへ。パソコンはそのままにするよう指示された。

 買って自宅に戻ると、カードの裏に書かれた番号をパソコン画面に入力するよう求められ、打ち込んだ。「確認する」と数分待たされ、次に言われたのは「この番号は間違っている」「もう一回、1万円分のカードを買ってきて番号を入れて」。住所と名前を入力すれば「郵便為替で返金される」とも言い出した。

■詐欺に気付き、通報

 その時点でようやく確信した女性は「絶対詐欺ですよね」と言い切り、電話を切って警察に通報。警察官2人が駆けつけた。

 警察官は女性に言った。「この手の詐欺がかなり横行している。サポートセンターに電話してしまうと、コントロールされてしまい、カードを5~10枚買ってしまう人も多い」。女性は被害届を出した。

 その夜、仕事から戻った夫に詐欺の話をすると、夫の仕事先には数日前にセキュリティー会社から注意喚起のメールが来ていて、詐欺だと知っていたという。

 「その話を聞いていれば被害には遭わなかったのに」と女性。翌日、パソコンを修理に持っていくと、さまざまなデータが「ごみ箱」に捨てられ、身に覚えのないソフトが入っていた。同様の被害で修理に持ってくる人が多いことも店員から聞いた。

 高齢者もパソコンを使う時代だけに、女性は「被害の情報共有が必要。知ってもらうことで同じような被害を減らしたい」と話す。

     ◆

 兵庫県警はホームページなどで「サポート詐欺」への注意を呼びかけ、パソコン画面の疑似動画も公開している。

【被害を防ぐポイント】

 ①パソコンの画面にウイルス感染の警告を表示させ、警告音や音声が流れるのは、修理サポート代金をだまし取る詐欺の手口。

 ②突然、偽の警告画面が表示されても慌てず、まずはブラウザ(ウェブサイトを閲覧するためのソフト)を閉じる。ブラウザが閉じない場合は、端末を再起動するか、強制終了すれば表示されなくなる。

 ③警告画面に表示された電話番号には、電話をかけないように。

 ④「コンビニで電子マネーを買って番号を教えて」は詐欺。


実はわたしも経験者だ。
何かの宣伝画面をクリックしたときに現れた。
大音量でアラームが鳴り響き、「電源を切らないでください」「再起動しないでください」「すぐサポートセンターへお電話ください」の音声。
Microsoftと書かれ、電話番号が載っている。
この大音量を消さなければと焦る。
幸運にも電話は通じなかった。
そしてPCの強制終了。
これで問題解決である。

昨日畑から帰る途中豪雨に見舞われた。
いい雨だった。これで畑も潤われる。
そして今朝畑に出ると様子がおかしい。
雨など降った形跡もない。
自家製の雨量計を覗いても乾ききっていた。
また逃げられてしまった。

園のようす。
946さんの記事にホ~の木の花が咲いたとあったので調べてみた。
ありました。

ツルアジサイも咲きだしました。

芍薬も

サクラソウ・タマザキクサフジ・ブルーベル

自家用のいちご

アイスクリームにアロニアのシロップをかけて載せて食べました。


戦争を望む国民世論の形成が狙いか 古賀茂明

2023年06月13日 | 生活

「防衛産業強化法」で誕生する“国有”武器メーカー 

政官財の罪と罰

古賀茂明

AERAdot 2023/06/13 

 6月7日、「防衛産業強化法」が成立した。大きな反対もなく、気づかない人も多かっただろう。しかし、この法律は非常に危険な法律だ。

 その内容を端的に言えば、日本の武器産業を世界中に輸出できるほど強大化し、大きな戦争にも十分対応して武器を供給できる産業にする法律である。そのために武器メーカーに助成金を出し、さらには、武器メーカーの事業継続が困難な場合に製造施設や設備を国が取得、保有までできることにする。つまり国有武器企業を作るのだ。

共同訓練にあたったインド空軍の戦闘機「スホイ30MKI」(中央)と航空自衛隊のF2戦闘機(左)、F15戦闘機(右)=2023年1月、茨城県の空自百里基地
共同訓練にあたったインド空軍の戦闘機「スホイ30MKI」(中央)と航空自衛隊のF2戦闘機(左)、F15戦闘機(右)=2023年1月、茨城県の空自百里基地

 直近の動きで懸念されることがある。「防衛装備移転三原則」の見直しだ。

 元々日本は「武器輸出三原則」で武器輸出を禁止していた。しかし、安倍政権のときにこれを廃止。「防衛装備移転三原則」を定め武器輸出を解禁した。その際、この三原則の下に「運用指針」を定めたが、殺傷能力のある装備品の輸出は認めなかった。

 輸出先も「安全保障面での協力関係がある国」に限定していたのだが、ウクライナに防弾チョッキやヘルメットを提供するために、指針を改定し、対象国に「国際法違反の侵略を受けているウクライナ」を加えた。指針さえ変えれば、武器輸出の対象国を自由に拡大できるのだ。

 現在、自民党と公明党の間で、さらなる指針改定の協議が行われている。岸田政権としては、G7の議論を通じて日本だけが「殺傷能力のある武器」の提供をしていないことが浮き彫りになったことが追い風だ。ウクライナのためなら仕方ないという理屈で殺傷能力のある武器の提供を認める改定を行うだろう。

 それと同時に、日本の武器の東南アジア諸国への輸出も進む。安全保障面での絆を強めるという名目だが、経済成長著しく急速に軍拡が進む同地域の武器需要を取り込み、日本の武器産業の拡大を狙う戦略である。

そして、最後のステップが、台湾有事の際の台湾への武器提供だ。台湾を見捨てるなという国民世論を高め、それを背景に台湾に武器提供を行う可能性は十分にある。中国との戦争につながる非常に危険な道のりだ。

 だが、それで終わりではない。武器産業の強大化でさらに深刻なことが起きる。それは、国民の多くが、戦争を望むようになることだ。

 欧州も同じだ。米英仏などの有志国連合がシリアを空爆していたころのフランスのニュースを思い出す。フランスの戦闘機「ラファール」が、中東諸国などに数十機単位で大量に売れたため、戦闘機メーカー・ダッソー社の下請けを含めて3000人の雇用が創出され、工場の5年間フル操業が決まった。工場労働者と地元住民がはしゃぐ姿とともに、ラファールがシリア空爆でその威力を証明したことが成約の原動力だったと報じられた。戦争は最高の武器見本市なのだ。

 最近、フランスやドイツのテレビで同様の報道が続いている。冷戦終了後、欧州では武器工場が次々と閉鎖され、多くの失業者が出た。それらの古い工場が、ウクライナ特需で再生した。弾薬工場が復活したフランスのある地方では失業していた男性が雇用されて屈託ない笑顔を見せ、住民も街の景気が良くなると手放しで喜んでいた。

 これが武器産業と戦争の現実だ。

「戦争では敵も味方も失うものばかり」と言われるが、実際には、「正義の衣」を身にまとう「悪魔の軍需産業」が陰で大もうけをしている。だが、本当に怖いのはその先だ。工場で働く一般の労働者もその地域の住民も喜ぶようになるのだ。

 最近、「継戦能力」という言葉をよく聞く。台湾有事に参戦した場合、相手が中国だから長期戦になる。その間の武器弾薬の補給を可能にするには、巨大な武器産業が不可欠だ。巨大な武器産業は大きな政治力を持ち、関連の労働組合も強大になる。全国に武器工場城下町もできる。

 そんな状況で、「台湾有事だ!」という事態が生じたとき、参戦反対の声は、「台湾を見捨てるのか!」という正義を装う声にかき消され、それでも抵抗する人たちには、「非国民!」という言葉が投げかけられるかもしれない。その裏で多くの国民が密かに戦争を喜ぶことになる。

 戦争を止める最後の砦。それは国民世論だ。しかし、その国民が、歯止めになるどころか、旗を振って自衛隊を送り出す。そんな光景が繰り広げられる未来が見える。

 今回の法案にどの政党が賛成したのかを見てほしい。

 自民、公明、維新、国民民主に加え、立憲民主まで賛成した。社民党も反対でなく退席。反対すれば、多くの国民の支持を失うと考える議員が多かったのではないか。

 安倍政権のときからの経緯、そして、立民でさえ恐れる「軍拡を容認する国民世論」への変化。加えて、巨大軍事産業が地方を支える経済になれば日本がどうなるのか。

 私の懸念は決して「杞憂」ではないと思うのだが、いかがだろうか。


日本共産党と参院会派「沖縄の風」は反対。
何か、恐ろしい社会が待ち受けているようだ。
今のうちに潰さねば。
戦争反対!
戦争は直ちにやめよ!


「LGBT理解増進ではなく、理解"抑制”法案」

2023年06月12日 | 生活

パートナーシップ制度の抑制も意味する、その問題点とは?

「LGBT理解増進法案」の問題点とは?自民党議員は「自治体による行き過ぎた条例を制限する抑止力が働く」ためのものと強調。有識者は「パートナーシップ制度すら抑制される内容だ」と警鐘を鳴らします。
 
「LGBT理解増進法案」について、「裏切られた気持ち」だと吐露する松中権さん(右)

LGBTQ当事者への理解を広めるとしている「LGBT理解増進法案」の与党案の修正案が6月9日、衆議院内閣委員会で可決された。

法案では「全ての国民の安心に留意する指針を、政府が策定する」という条文が加わった。

一見、問題なさそうな内容だ。しかし有識者によると、この条文は「政府や自治体、学校などで『多数派が“安心“できる範囲』でしか理解を広げない」という解釈が可能になるという。

つまり、性的マイノリティ当事者への理解を広めるための法案が、実質的には「マイノリティよりも多数派への配慮」を求めることになり得るのだ。

LGBTQ当事者の人権保護を促進する国際団体『Pride7(P7)』日本実行委を構成する3団体は同日、会見して「自治体のパートナーシップ制度や差別を禁止する条例、学校でのLGBTQに関する教育などの取り組みを抑制する内容に後退しています。このままでは当事者が、不幸になってしまう」と警鐘を鳴らした。

ハフポスト日本版は、法案の問題点を検証した。

◆「理解増進法案」の修正内容は?

LGBT理解増進法案の推移

衆院内閣委で可決されたのは、自民・公明の案に、日本維新の会、国民民主両党の主張を取り入れつつ修正したものだ。立憲、共産、れいわ新選組は反対したが、今後、衆参両院の本会議で可決され、21日の国会会期末までに成立する可能性が高い。

2月の前首相秘書官の差別発言などがきっかけに議論が始まった。自民党議員が中心となり「差別は許されない」という文言を「不当な差別はあってはならない」に変更するなど、マイノリティの権利擁護面で後退を繰り返してきた。

今回の修正案の問題点を、会見の内容などをもとに5つのポイントにまとめた。

1.「全ての国民が安心して生活することができること」「政府は、運用に必要な指針を策定する」と明記

法案に「措置の実施等に当たっての留意」を新設。以下の文言を追加した。

第十二条 この法律に定める措置の実施等に当たっては、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする。この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする。

実行委を構成する『LGBT法連合会』の神谷悠一事務局長は、「『全ての国民が安心して生活することができる』という言葉は、これ自体だけを見ると素晴らしいものです。ですがこれまでの経緯や『政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする』という文言をつけることで、LGBTQに関する取り組みに制限をかけることができる、この法案の中で最も問題といえる部分です」と指摘する。

この指針は、「法案に基づく、国、自治体、企業、学校のすべての取り組みに適用される」と国会で答弁されている。

実際に自民党の保守系議員らは、この法案を規制の道具ととらえているようだ。古屋圭司氏(衆院岐阜5区)は自身のブログで「この法案はむしろ自治体による行き過ぎた条例を制限する抑止力が働くこと等強調したい」。西田昌司氏(参院京都府選挙区)は自身のYouTubeなどで、LGBTQに関する教育について「規制するためにLGBT法案が必要だ」などと発信している。

2.「性自認」について「性同一性」(自公案)から「ジェンダーアイデンティティ」に変更

行政文書などで使われている「性自認」について、「ジェンダーアイデンティティ」に変更した。

自公案は「性自認はあくまで自称。自らの認識で性を決定できると解釈されれば、浴場や女性用トイレをはじめ、社会の混乱を招く懸念がある」といった誤った認識から「性同一性」としており、折衷案として提案されたとみられる。

神谷事務局長は「各自治体の文書や法案は現在『性自認』になっており、書き換えなくてはならないと受け止めます。その際に各自治体が、議論の過程をもとに性自認を『性同一性』に変えてしまう可能性すらあります」と懸念を示す。

法案の第一条に、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解が必ずしも十分でない現状に鑑み」という文言を追加した。

神谷事務局長は「理解が十分でないから、取り組みはすべきではないと抑制したい意志が滲み出ています。例えば政治家が『国会での私たちの理解は十分ではないんです』と言った上で、『そこに合わせてください』と主張することにもつながると思います」と指摘する。

4.学校での教育や啓発について、「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ」と文言を追加

学校の設置者に対し、教育や啓発を行う場合について、 「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ」という文言を追加した。

文部科学省の学習指導要領は「異性愛」が学びの前提で、性の多様性には触れていない。この法案の議論でも、議員から「教育は必要ない」という言葉が繰り返された。

LGBTQ当事者の子どもたちは困難に直面することが多く、認定NPO法人『ReBit』が2022年に実施した調査では、10代のLGBTQ当事者のうち48.1%が過去1年に自殺を考えたことがあると回答した。そういった実情を受け、各学校ではLGBTQ当事者を招いた講演などを開いている。

5.国・地方公共団体の施策について、「民間団体等の自発的な活動の促進」を削除

「知識の着実な普及等」について定めた第十条から、「民間団体等の自発的な活動の促進」を削除した。

現在各自治体は、NPO法人などが行う講演活動や居場所づくりなどの支援などに対し支援を行っているが、「支援しないようにするメッセージとなり得る」(神谷事務局長)という。

法解釈の上で「差別的取り扱いをしたい」思惑を考慮される

結婚の平等を目指す弁護士らでつくる『公益社団法人Marriage For All Japan ―結婚の自由をすべての人に』の寺原真希子共同代表は、一見すると問題のないように見えるこの法案について「法律を解釈するときに、法律の文言だけでなく、どういった背景や審議の経過を辿ってその文言になったかという事実が、必ず考慮をされます」と補足する。

例えばこれまで、『性自認』が『ジェンダーアイデンティティ』、『差別は許されない』が『不当な差別はあってはならない』などと変更されてきた。寺原共同代表は「議論の上で何度も『性的マジョリティのことを考えて』という言葉が上がるなど、にじみ出ていた『差別的取り扱いをしたい』という思惑に則って、自治体などがこの法を解釈をしないといけなくなります。それは、悪用されてしまうことが懸念されることを意味します」と指摘する。

◆「理解増進ではなく理解抑制法案だ」

性的マイノリティの人権が守られているとはまだまだ言えないが、議会の外では、少しずつ理解が広がっている。

寺原共同代表は、「5つの判決に共通するのは、『同性カップルや性的マイノリティが置かれている状況は非常に過酷で、個人の尊厳を侵害している。だから、国会は速やかに動かないといけない』というメッセージです」と指摘。

「だからこそ、国会議員が『行き過ぎた条例を制限する抑止力』などと発信する理解増進法案の中身は『理解抑制法案』とも言え、司法が発している国会へのメッセージと相反するものです」と訴えた。

実際、議論の過程では国会議員が、「マジョリティの人権」「マジョリティへの配慮」という言葉を何度も繰り返した。

同法人の松中権理事は、「差別を受けているLGBTQ当事者のため、理解を広げるための法律のはずなのに、結局マジョリティのことをケアすることしか考えていないのではと思うくらい、苦しかったです」と吐露した。

「LGBT理解増進法」は2021年、超党派の議員が法案をまとめたが、「差別は許されない」との文言に対し、自民党内で「訴訟の頻発を招きかねない」などと批判が集まり、見送られた経緯があり、松中さんはこう訴える。

<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>


マイナンバー事業1兆円に群がる政官業“腐敗”の三角形…相次ぐトラブルの裏に巨額利権の甘い蜜

2023年06月12日 | 社会・経済

日刊ゲンダイDIGITAL 2023/06/10 

 絵に描いたような政・官・業の癒着ぶりだ。約13万件もの不適切な公金受取口座のひもづけが発覚するなどマイナンバー事業はトラブル続出。デメリットだらけの国民を尻目に巨額利権に群がり甘い蜜を吸う連中がいる。

 マイナカード発行など事業の中核を担うのは「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」。国と地方公共団体の共同運営法人で、副理事や理事は所管の総務省出身者が務める。2014年の設立当初から、即戦力の民間人材を活用する名目で、特定の企業からの出向者が多数在籍。出向元となっているのは、マイナンバーの制度設計に深く関与した電機・通信などの大手企業だ。

 制度設計を担ったのは、11年に内閣官房に創設された「情報連携基盤技術ワーキンググループ(WG)」だ。メンバー21人のうち、13人は民間企業の管理職が務めた。

 NTTコミュニケーションズ、NTTデータ、NEC、日立製作所──当時、WGに名を連ねた大企業が、現在は機構の出向元となり、「出向者が4割を占める部署もある」(機構関係者)というほど密接な関係を築き上げている。

契約額9割独占の見返りに…

 問題は出向社員が在籍しながらも、機構側が出向元企業への受注を制限していないことだ。本紙は、機構が公表した昨年度の契約実績を分析。すると、驚愕の「お手盛り」実態が見えてきた。

 発注事業211件(計約783億円)の受注先には前出の大手4社がズラリ。同じくWGに参加した富士通、NTT、セコム、日本IBMを含めると計137件、全体の約64.9%を請け負っていた(関連会社、共同事業体含む)。多くは競争を経ない随意契約で、受注件数に占める割合は実に75.9%。契約額は計約718億円に達し、全体の9割を優に超える。

 制度設計段階から関わったホンの一握りの大企業が、マイナンバー事業を独占とはムチャクチャだが、その見返りだろう。受注先には幹部官僚が天下りしている

 21年4月から22年12月の間にNTT、富士通、日立、NEC、セコムの本社や関連企業には、総務省など関係省庁OB26人が再就職していた。加えて日立、NTTデータ、NECは関連企業を巻き込み、自民党の政治資金団体「国民政治協会」にセッセと献金。その額は21年までの3年間で計2億5750万円に上る。

 ランニングコストに毎年、数百億円もの税金が投じられ、事業規模はトータル1兆円ともいわれるマイナンバー事業。河野デジタル相は腐った癒着構造に切り込めるのか。得意の「突破力」の真価が問われる。


腐りきっているといえる状況で国民のプライバシーなど考えられることでしょうか?
一番効果的な戦いは「返納」でしょう!
ご検討ください。

昨日はおじさんの49日納骨でした。
午前中で、昼を食べて終わりですから、明るいうちに帰るつもりでした。
でもみんなでおばさんを家まで送りそこでわたしの兄弟姉妹の家族で話が弾み、夕方にはわたしの子ども、孫が・・・
そんなわけで更新できませんでした。


小林節が斬る! 国際常識を逸脱した入管法改正案 日本は文明国家でも国際国家でもないのか

2023年06月10日 | 生活

日刊ゲンダイDIGITAL  2023/06/10

 難民条約(1951年採択、54年発効。日本は81年に批准)31条は、「庇護申請国へ不法入国しまたは不法にいることを理由として、難民を罰してはいけない」と規定している。さらに33条は、「難民を彼らの生命や自由が脅威にさらされる『おそれがある』国へ強制的に追放したり、帰還させてはいけない」とまで明記している。

 にもかかわらず、今回の入管法改正論争を見ていると、「日本にしがみついている不法滞在外国人を早く母国へ追い払いたい」という国家の強い意思しか伝わってこない。

 思い起こしてほしい。かつて第2次世界大戦の敗者としてどん底まで落ちたわが国は、世界の諸国から助けられ、また、世界の諸国を利用して、立派に復興を遂げることができた。だから、今こそ、転換期の大混乱の中にある世界において、戦争以外の方法で「名誉ある地位」(憲法前文)を目指すべきである。

 難民は、母国から迫害されている証拠など持ち出せずに逃げて来た者が、事柄の性質上ほとんどである。だから、その者に「証拠」を求めるなどという無理なことはせずに、「疑わしきは申請人の利益に」という原則に改めるべきである。

 また、公正な難民認定を目指すと標榜するならば、その手続きに、人権先進諸国の例に倣って、司法手続き(公正な第三者)を当然に組み込むべきであろう。

 もうひとつ、出入国在留管理庁の組織としての人権軽視のような体質が気にかかる。最近、収監者の死亡事故を断食による自死と疑った愚かな国会議員がいたが、百歩譲ってそうだと仮定したとしても、その収監者の状態を監視していた入管職員がそれを察知して内科医に診せれば点滴で一命を取り留め得た事例である。にもかかわらず、医師でもない入管職員が、その者の詐病を疑って精神科医に診せて放置して死に至らしめた、その「人を人とも思わない」組織の感覚が恐ろしいと気づくべきである。

 いずれにせよ、アフガニスタン、ミャンマー、スリランカなど、世界は大混乱に陥っている。日本も、もはや移民受け入れ政策を確立すべき時が来ているのであろう。

小林節慶応大名誉教授

1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)


「日本国憲法 前文」より掲載。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
 
こんな素晴らしい日本国憲法、岸田にとっては目の上のタンコブ。
 
園のようす。(蝶の写真アリ)
ベニバナイチヤクソウそろそろ終わりが近づいてきた。

雨が降るということで、急いでカボチャの定植を終わらせ、ジャガイモもまき終えた。しかし雨は期待に反し、表面を濡らしただけだった。
あと残るのは豆類とスイカ、他。もう少しだ。

入管難民法改正案の残された問題とは

2023年06月09日 | 生活

疑念だらけなのに議論打ち切り 

 「外国人の命が危機」の声上がる

「東京新聞」2023年6月9日
 
 外国人の収容・送還のルールを見直す入管難民法改正案が8日の参院法務委員会で可決された。これまでの国会審議で、出入国在留管理庁(入管庁)の難民審査の問題点や、大阪出入国在留管理局(大阪入管)の医師が酒に酔った状態で診察していたことが明らかになった。だが、議論は尽くされぬまま、法案が成立に向かっている。支援者は「外国人が命の危険にさらされる」と警戒する。(池尾伸一)

◆「難民、見つけることできない」発言の参与員に重点配分

 改正案では3回目の難民申請以降は、難民認定すべき相当の理由がなければ強制送還できるようになる。この前提には2回目までの審査で、母国で迫害のおそれがあるかどうかを調べ、難民として保護すべき人を保護する体制が確立されていることが必要だ。ところが、審議では難民審査への疑念が浮上した。
 入管庁が難民ではないと認定した外国人が、不服を申し立てた際に2次審査を担う「難民審査参与員」。111人いるが、NPO法人名誉会長の柳瀬房子氏に全件の4分の1に当たる1231人(2022年)分が集中し、多くは書類審査だけで処理されていたことが判明。入管庁は、柳瀬氏の「難民を認定したいのに、ほとんど見つけることができない」との発言を申請回数を制限することが必要な根拠として引用してきた。
 一方で、年に数件しか任されていない参与員もおり、入管問題に詳しい高橋済弁護士は「入管庁が1次審査結果を覆さない参与員にばかり重点配分している」と語る。

◆「説明は尽くした」と言うが…

 さらに、収容施設内の医療を巡り深刻な問題が明らかになった。21年にスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=が、名古屋入管で十分な医療を受けられず死亡したことを受け、医療体制強化が図られた。その一環として大阪入管が雇用した常勤医師が今年1月、酒に酔った状態で診察していたことが5月末に発覚した。斎藤健法相はこの問題を2月に把握していたが公表せず、審議で隠蔽いんぺいを指摘する声が高まった。
 
 だが、問題点に応えないまま、「説明は尽くした」(斎藤法相)と参院での審議を終え、法相の問責決議案も否決された。
 「日本政府が外国人の命は軽くしか考えていないことが分かった」。トルコの少数民族クルド人男性(47)は失望する。日本人女性と結婚しているのに5回の難民申請は不認定で、在留特別許可も得られていない。母国では政治運動を理由に逮捕状が出ている。改正案では送還対象になるため、帰国したら「トルコの空港で逮捕される」とおびえる。
 難民問題に詳しい安藤由香里・大阪大招聘しょうへい教授は「少子高齢化でますます外国人との共生が必要になるのに、共生と逆行する法案を通してしまった。人権尊重に消極的な国として評価が下がり、高度人材も含め働きにくる人も減る可能性がある」と説く。

Colabo 東京都の非情対応 辛淑玉 × 安田浩一 × 北丸雄二 【マイノリティ・リポート】

園内に咲く花


金子勝 5年で43兆円の軍拡狙う軍拡財源法案

2023年06月08日 | 生活

慶応大名誉教授(財政学) 金子勝さん

「しんぶん赤旗」2023年6月8日

歯止めなく歴史に禍根を残す 今こそ財政民主主義の回復を

 軍拡財源法案をめぐる国会審議が正念場を迎えています。慶応大の金子勝名誉教授(財政学)は、4月21日の衆院財務金融委員会で、参考人として「このまま法案を通せば、歴史に禍根を残す」と痛烈に批判しました。同法案をはじめとする岸田文雄政権の軍拡財源について聞きました。(斎藤和紀)

 ―岸田政権は軍事費を国内総生産(GDP)比2%に増額し、5年間で43兆円の軍拡を狙っています。

 政府は、ロシアのウクライナ侵略や台湾有事などを理由に「必要なものを積み上げた」と言いますが詭弁(きべん)です。安倍政権以降のなし崩し的な軍事費増大が本当の原因です。

 米国の要求で、米国製兵器の“爆買い”を続けた結果、軍事ローンである後年度負担が2013年度の約3兆円から22年度は約6兆円に急増。後年度負担が年間の防衛省予算を上回るまで膨れ上がりました(グラフ)。その結果、国内軍事企業への支払いが滞り、軍需産業からの企業撤退が相次ぎました。

 結局“爆買い”によってローンが膨らみ、必要な武器を計画的に買えなくなり、なし崩しで「2%」にしたのです。さらに悪いことに、23年度の後年度負担は10・7兆円という異常な額に膨れ上がりました。ローンだけでも2%を突破する恐れもあります。

 ―参考人として「法案を通せば、歴史に禍根を残す」と訴えたのはなぜですか。

 岸田政権は、財政の原理原則を無視し、歯止めが全くきかなくなっているからです。特に赤字国債を軍事目的に活用しないという歯止めを壊しているのは重大です。

 軍事費の財源として挙げている決算剰余金にカラクリがあります。決算剰余金は、年度中に使いきれずに余ったお金で、半分以上は国債の返済に充て、残りは次年度に繰り越されます。しかし、20年の新型コロナウイルス流行以降、過剰な予備費を計上し、決算剰余金を大量に生み出し、基金をためこむ予算運営が行われています。

 予備費は、災害など例外的な場合に限って国会審議を経ずに支出できるもので、原資の大半は赤字国債です。東日本大震災の時でさえ2兆円規模でしたが、20~22年度の3年間で約30兆円、23年度も5兆円が計上されており、乱用しています。本来、国債返済などに充てる決算剰余金を軍事費に回せば、赤字国債を決算剰余金を経由して、軍事費に充てるのと同じです。私は「国債マネーロンダリング」と呼んでいます。

 財源確保のための「歳出改革」の具体策が示されていませんが、大量に余っている基金を削って軍事費に回せば決算剰余金と同様の問題になります。政府は近年、補正予算で基金に多額の予算を充てる一方、補助金交付などの本来の業務を全く行わず、支出が人件費などの管理費だけという「休眠基金」が27もあります。全基金で計約13兆円も積みあがっています。必要ないのに赤字国債などで基金を積み立てて、「歳出改革」と称して軍事費に回せば「マネーロンダリング」です。

 軍拡財源法案で創設される「防衛力強化資金」に充てられる国立病院機構や地域医療機能推進機構(JCHO)の積立金も、もともとはコロナ対策の予備費で、赤字国債が原資です。

 良いか悪いかは別として、増税して軍事費を賄うならば、増税による国民の痛みという歯止めがあります。しかし、決算剰余金などを通じて赤字国債を軍事費に充てれば歯止めがありません。自衛隊艦船などの建造に建設国債を充てるのも歯止めがないばかりか、武器が経済や国民生活を豊かにすることもないので最悪です。

 ―財政上の歯止めを失えば、どのような結果を招きますか。

 戦前の誤りを繰り返すでしょう。1937年に日中戦争が始まると、臨時軍事費特別会計を創設。そこで赤字国債の大量発行で財源を調達し、国会のチェックもなく、一度も決算を行いませんでした。そして戦後に、膨大な財政赤字などが原因でハイパーインフレが起こり、国民は食うや食わずの状態に陥りました。政権がやろうとしている「国債マネーロンダリング」も、間接的か直接的かの違いはありますが、やっていることは臨時軍事費特別会計と同じです。

 憲法83条で財政民主主義を明記したのは、軍事費を国債に依存すれば国を破滅に導くとの反省からです。後年度負担や予備費は「単年度予算主義」から外れており、国会の監視が行き届いていません。もともと憲法は租税法律主義から始まり、議会が歳出歳入を決めるのが基本原則です。その原則が壊されており、今こそ財政民主主義を回復させるべきです。

 ―岸田政権の軍拡は経済にどのような影響を及ぼしますか。

 岸田政権はアベノミクスを継承し、金融緩和を続けていますが、賃金が上がらないのははっきりしています。富裕層は働かなくても、金融緩和で株価が高くなり潤っていますが、貯蓄のない層への恩恵はなく、格差が猛烈に広がっています。

 財政や金融でお金をばらまいてごまかしてきましたが、政府の産業戦略は失敗しています。政府の戦略は、いわば「自動車一本足打法」で、ITや医薬品などで膨大な貿易赤字が出る一方、再生可能エネルギーが世界の主流であるのに原発の新増設に固執しています。貿易赤字は2022年度で21・7兆円と過去最大です。実質賃金が25年近く低迷している先進国は日本だけです。年間出生数は22年に初めて80万人を割り、人口減少も深刻です。国債発行残高は戦時中に匹敵する1千兆円を超え、その半分以上を日銀が保有する異常な事態になっています。

 こういう状況で日本は、「防衛力強化」のために約10兆円を費やす余裕がある国でしょうか。社会保障削減や増税は避けられず、国民の暮らしを壊します。産業や経済を立て直すには人への投資が必要です。教育や基礎研究への予算を抜本的に増やすべきです。さらに非正規雇用が大幅に増えているため、大企業が賃上げしても全体の賃金の上昇につながっていません。最低賃金をあげるには中小企業支援が不可欠で、そこにも予算が必要です。

 しかし、なし崩し的に軍事費を膨張させた結果、本来やるべき政策の財源がなくなっています。実際、首相は子育て予算の財源の議論を年末に先送りにしました。軍事ではなく格差是正や経済のリスクを減らすために予算を充てるべきです。

かねこ・まさる 1952年東京生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得修了。専門は財政学、制度経済学、地方財政論。著書は『平成経済 衰退の本質』『人を救えない国』、『現代カタストロフ論』(共著)ほか多数


鉄線が見頃です。

ようやく最低氣温を氣にしなくてもよくなりました。
ハウスを開けっぱなしにして帰ることができます。
閉めて帰れば、朝日が昇るとゆっくりと眠ってはいられません。
これで少し楽になります。


マイナカード 性急に運用拡大するな

2023年06月07日 | 生活

「東京新聞」社説 2023年6月7日 

 健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化する改正マイナンバー法など関連法が成立した後も、カードを巡るトラブルが相次いで発覚している。
 岸田文雄首相は信頼回復に向けシステムの再点検やミス防止策の徹底を河野太郎デジタル相に指示したが、問題点を徹底的に洗い出し、国民の不信が払拭されるまで運用拡大は見合わせるべきだ。
 マイナカードを巡ってはこれまでも、コンビニでの別人の証明書交付やマイナ保険証への他人の情報ひも付け、マイナポイントの誤った付与などのトラブルが明らかになり、改正法成立後も、希望しない人へのマイナ保険証発行や別人のカードへの公金受取口座登録などが次々と明るみに出た。
 国民の多くは特に、健康保険証がマイナ保険証に一本化され、現行の保険証が廃止されることへの懸念を募らせている。
 全国保険医団体連合会のアンケートでは、高齢者施設の九割以上が申請の代理や暗証番号を含むカードの管理はできないと答えた。独居や寝たきり高齢者のマイナ保険証管理はより困難だろう。
 個人情報のデジタル化には政府と国民との信頼が不可欠だが、マイナカードは前身となる住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)のカードと同様、国民側の必要性から生まれたものではない。
 カード取得率が低いと見るや、政府はポイント付与というなりふり構わぬ普及策を講じ、最後には「取得は任意」という前提を覆して、健康保険証廃止という事実上の強制に転じた。これではとても信頼は得られまい。
 これまでに発覚したトラブルの原因は、システムの不具合や人為ミスなど多岐にわたり、性急なカード普及策のしわ寄せがきていることは否めない。
 事業の受注企業は下請けに丸投げし、自治体の現場は混乱した。トラブルの一部は昨年発生したにもかかわらず、各担当大臣への報告は今年五月に入ってから。政府が監督責任を果たしていなかったことも混乱の一因だろう。
 政府は二〇二六年中にも券面に記載する情報を見直し、プライバシーに配慮した内容とする新しいカードの導入を検討しているという。それまでは性急に運用を拡大せず、制度の抜本的な見直しに充ててはどうか。少なくとも現行の健康保険証は維持すべきである。

私、マイナンバーカードを返納してきました。

年金、ガク↓

楽しみにしていた今月の年金。
昨日年金通知書が届いた。
確かに2866円上がっている。
何ということか!oh my god!

だけど、介護保険料が3100円も上がっているのだ。
結局、支給総額は-234円。
爆発!!!

 


大崎事件 「再審認めず」は汚点だ

2023年06月06日 | 事件

「東京新聞」社説 2023年6月6日 

 大崎事件で殺人罪などで服役した原口アヤ子さんに再審が認められなかった。他殺とする客観証拠すら不十分で被害者は事故死との鑑定もあるのに、再審の扉を開かない判断は不合理ではないか。
 冤罪(えんざい)は刑事司法であってはならないことだ。無実の人を罰する不正義と、真犯人を取り逃がす不正義が起きる。ぬれぎぬを晴らすまで何十年もかかり、その人生を奪ってしまう不正義もある。
 鹿児島県大崎町で一九七九年に男性遺体が見つかった大崎事件は、親族の原口さんら四人で男性を絞殺したとされる。だが、客観証拠がほとんど存在しないという希有(けう)な事件でもある。
 原口さんも捜査段階から一貫して「無実」を訴えている。それでも福岡高裁宮崎支部は五日、再審を認めなかった。共犯者とされた原口さんの親族の「自白」に寄りかかった判断といえよう。
 だが、この親族らはいずれも知的障害などがあり、取り調べに迎合しがちな「供述弱者」だった。彼らは厳しい取り調べの結果、虚偽の「自白」をしたことを告白し、原口さんに謝罪もしている。
 目撃者とされる別の親族の供述も不確かなはずだ。弁護側による供述鑑定では、不自然な点が何点も浮かび、ほころびがある。裁判所は「自白や供述が相互に補完し合い強固」というが、いずれも「供述弱者」なら捜査側に迎合した結果とも受け止められる。
 被害者は事件当日、朝から酒に酔い、自転車で側溝に転落し、道に横たわっていたところを夜になって近所の二人に自宅に運び込まれた。弁護側は今回、その時点で既に死亡していたという救命救急医の鑑定を出していた。
 そもそも事件当初の法医学者の鑑定も「他殺を想像させる」程度のあいまいさだった。かつ被害者が側溝に転落した事実を知らされず、後に「他殺か事故死か不明」と変更されてもいる。
 だから過去に三回も地裁・高裁で「再審開始」の決定があったのだ。そのたびに検察が不服を申し立て、最高裁が再審開始を取り消したのは二〇一九年のことだ。これに対しては法学者や法曹関係者から厳しい批判が相次いだ。
 「疑わしきは被告人の利益に」の原則は、再審にも認められる。これを忘れたかのような、今回の「再審認めず」の判断は司法の逆行で、汚点に見える。
 
⁂     ⁂     ⁂
 

「再審の扉」はなぜなかなか開かないのか?──冤罪被害にあう可能性は誰にでもある

再審法改正を考える

鴨志田祐美(弁護士)

Imidasオピニオン 2023/06/05

再審開始決定のニュースを聞くたびに、どうしてそんなに時間がかかるのだろう? 冤罪の可能性のある裁判をなぜもっと早く見直せないのか? と疑問に思う。第4次再審請求においても福岡高裁宮崎支部が即時抗告を棄却(2023年6月5日)して、またもや裁判のやり直しが認められなかった「大崎事件」。この事件が起きたのは1979年だ。大崎事件再審の弁護人・鴨志田祐美弁護士に、日本の再審制度について聞いた。

日本の「再審法」条文は、大正時代につくられたもの

──2023年3月、1966年に起こった「袴田事件 」の再審開始決定が大きな話題になりました。この事件で最初に再審請求が出されたのは1981年ですが、それ以外にも、数十年にわたって再審請求が続けられている事件は少なくないと聞きます。なぜ再審そのものでなく、「再審を開始する」こと自体に、これほど時間がかかるのでしょうか。

 まず根底にあるのは、制度面での問題です。私たちもよく「再審法改正を」という言い方をしているのですが、正確には「再審法」という法律は存在しません。刑事訴訟法の第四編「再審」のところに19の条文があって、これが再審の手続きについて定めた法律のすべてです。刑訴法全体で500以上の条文があることを考えれば、いかに少ないかがわかるのではないでしょうか。

──なぜそんなに少ないのでしょう?

 実はこの条文は、大正時代につくられた旧刑事訴訟法の条文が、ほぼそのままなのです。

 戦後、日本国憲法が公布され、刑事訴訟法もその理念に合わせるための全面改正が行われたのですが、再審を含む上訴から先の手続きについては改正が間に合いませんでした。それでも、すでに終戦から3年以上が経っており、新しい法律に急いで切り替えなくてはということで、見切り発車で新刑訴法が施行されてしまったのです。

 だから、再審手続きについての条文は、旧刑訴法の条文がほぼそのままスライドする形になりました。そして、その旧刑訴法というのは、職権主義といって、裁判所がさまざまなことを裁量で決めて手続きを主導できる、言ってみれば何でもやりたいようにやれるという立て付けのもとでつくられていた。何でも裁量で決められるのだから、具体的な手続きを定めた条文はもともと、ほとんどなかったのです。

 現在の刑訴法445条には、裁判所が再審請求の理由について事実の取り調べをできると書かれていますが、手続きについての記述はほぼそれだけと言ってもいい。どんなふうに証人喚問をやるのか、裁判期日をどう定めるのかなどについても、まったく何も書かれていないのです。

──近年、司法制度改革が謳われ、刑訴法改正も何度か行われていると思いますが、再審手続きに関する部分は改正されてこなかったのですか。

 一度もされていません。つまり、100年以上前につくられた条文が、ほぼそのまま使われているということになります。

 旧刑訴法の時代、刑事裁判というのは「国家の威信をかけて、政府が悪人を捕まえて処罰するためにやるもの」でした。だから、「裁判所の判断が間違っていたからやり直しましょう」なんていう国家の沽券(こけん)に関わるようなことは、よほどのことがない限り認められなかった。その考え方に基づくルールがそのまま残っているのですから、なかなか再審開始が認められず、時間がかかるのも当然だと思います。

「開示されない」証拠が、再審開始の鍵を握る

──では、その刑訴法のもとでの再審請求手続きには、具体的にどんな問題があるのでしょうか。

 まず大きな問題が「証拠開示」についてです。おそらく誤解している方も多いと思うのですが、刑事裁判においては、検察が収集した証拠のすべてが裁判所に提出されるわけではありません。検察は、自分たちに有利な──つまり有罪を立証するのに有利な証拠のみを提出すれば足りることになっているのです。

──逆に言えば、有罪立証に不利な証拠は提出されないし、裁判官はすべての証拠を見て判決を出しているわけではないということですね。

 はい。そして、そうした「提出されなかった証拠」の中に、冤罪を疑わせるような証拠が隠れていて、それによって再審開始、無罪となったケースがいくつもあります。もともとの証拠とは無関係に、最新のDNA判定によって冤罪が明らかになった「足利事件」のようなケースもあるにはありますが、非常に例外的です。

 だから、再審請求の際、弁護側はなんとか提出されていなかった証拠の開示を求めようとします。ところが、実は再審請求の場合、検察がどんな証拠を持っているのか自体を知る手だてがありません。

 通常の裁判においては、2016年の刑訴法改正で、証拠一覧表の交付制度が始まりました。それを見れば、収集された証拠の内容がある程度はわかるので、「リストの何番にあるこの証拠を出してください」と言えるのですが、再審請求にはそうした規定もないのです。

──どんな調書があるのか、どんな鑑定結果があるのかもそもそもわからないということですか。では、どのようにして開示を求めるのでしょう?

 供述調書や捜査報告書などをもとに「こういう証拠があるのではないか」と推測していくのです。たとえば「この調書に『以前もお話ししましたが』という供述がある、ということはその「以前」にあたる調書があるはずだ」とか、「こっちの調書によれば、こういう名前の証拠があるはずなのに見当たらない、請求しよう」とか……。証拠の「痕跡」をたどり、ジグソーパズルのピースを一つひとつはめていくような作業を、涙ぐましい努力で繰り返していくわけです。

 ところが、さらに大変なのは、開示請求をしても自動的に証拠が開示されるわけではないということです。

──請求されたら、証拠を「出さなくてはいけない」というわけではないんですね。

 そうです。そして、検察が自主的に開示することはまずありません。裁判所に開示勧告をしてもらって、ようやく渋々出してくるという感じなのですが、この開示勧告も「出さなくてはならない」という条文があるわけではない。だから、やる気のある裁判官ならどんどん勧告をしてくれるけれど、ない裁判官はなかなか動いてくれません。裁判官の質や、やる気によって再審への道のりが大きく変わってきてしまうわけで、私はこれを「再審格差」と呼んでいます。

 最初にお話ししたように、再審については細かい手続きが条文で定められていないので、「裁判官の裁量」に委ねられる部分が非常に大きいんですね。やれないわけではないけれど、やらなくてもお咎めはない、問題にはならない……。そのことが、証拠開示などを「やる必要はない」という、裁判官の言い訳に使われてしまっているように感じます。

──そうすると、いくら開示請求をしても、いっこうに証拠が出てこないということもあり得る……。

 たとえば袴田事件では、第一次の再審が棄却されるまで約27年かかっているのですが、その間、なんと一つも証拠開示がなされませんでした。第二次再審になってようやく重要な証拠が開示され、それが再審開始にもつながったのです。

 控訴審のとき、犯人が犯行時に着用していたとされるズボンを袴田さんが実際に穿いてみるという「着用実験」が行われたのですが、なんとそのズボンは袴田さんには小さすぎて入らなかった。でも、検察側は「タグに(太った人向けのサイズである)Bというサイズ表記があるからおかしくない、ズボンは犯行後に味噌樽に隠されていたので、味噌に漬かって縮んだのだ」と主張し、この主張がそのまま認定されて確定判決に至りました。ところが、第二次再審では、このズボンを製造した業者が「Bはサイズではなく色を示すもの」だと説明している調書があったことが明らかになったんですね。

──「ズボンは穿けなくても有罪立証には影響ない」という、検察側の主張が完全に崩れてしまうわけですね。

 こんな証拠が最初から開示されていれば、いくらなんでも再審開始までに40年以上かかるようなことはなかったのではないでしょうか。

 そもそも、証拠というのは捜査機関が国家権力を背景に、私たちの税金を使って集めた、いわば公共財です。カナダでは最高裁が「証拠は検察官の所有物ではなくて、私たち国民が正義を知るために使うべき公共財である」という判決を出しているそうですが、日本ではその「公共財」を出すことを検察が拒み、最終的には裁判所のさじ加減によって開示の是非が決まってしまう。そしてそれが、再審開始に至るかどうかを決めてしまうこともあるわけで、あまりにもおかしいと思います。

検察官による「即時抗告」は許されるのか

──また、袴田事件では、2014年にも一度再審開始決定が出ましたが、18年にそれが取り消されてしまっています。こうした、「開始決定が出ても取り消されることがある」というのも、再審開始に時間がかかる原因ではないでしょうか。

 検察官の「即時抗告」によるものですね。ようやく再審開始決定が出たと思ったら、今度は検察官による不服申し立てが待っているわけで、非常に理不尽だと思います。

 戦前の刑訴法では、いったん無罪になった人が再審で有罪とされる「不利益再審」、つまり被告人の不利益となる形での再審が認められていました。しかし戦後、これは憲法39条が定める「二重の危険禁止」(同じ犯罪に対する無罪判決後の二度目の訴追、同一の犯罪に対する複数の刑事処罰を禁じる)に反するとして禁止されたのです。戦前から「ほぼ改正されていない」再審に関する条文の、唯一の例外でした。ということは、現行法における再審とは、「無実の人が間違って有罪にされてしまったのを正して無罪にする」、すなわち冤罪を晴らすためにこそ存在していると言えるでしょう。

 そもそも、再審請求に至るまでには、地裁、高裁、最高裁の三審があって、検察官はそこで主張すべきことはし尽くしているはずです。であればむしろ、再審においては検察庁法4条にある「公益の代表者」として、再審の目的である「冤罪から無実の人を救済する」ために裁判所に協力することこそが、検察官の役割ではないのかと思います。

──もし、検察が「いや、やっぱり有罪だ」と思うのであれば、それはそれとして再審の法廷で中身を争えばいいと思うのですが、そうではなく「再審開始」自体に不服を申し立てるのは、どうしてなのでしょう?

 よく言われるのが「法的安定性」という言葉です。三審制のもとで確定した判決をそんなに簡単にひっくり返してしまっては、裁判という仕組みそのもの、司法に対する国民の信頼そのものを揺るがしてしまうと言うんですね。私にはまったくそうは思えないのですが……。

──むしろ、先ほどお話しいただいた袴田事件の証拠隠しのようなことが行われていることのほうが、「法的安定性」を損なうように思います。

 そうなんです。検察は「法的安定性」をマジックワードのように使うけれど、実際のところは「決まったことをひっくり返したくない」「過去の間違いを正すようなことはしたくない」ということなのではないでしょうか。個々の検察官に考えを問えばまた違う答えが返ってくるのかもしれませんが、組織としてはそういう力学が強く働いていると感じます。

冤罪に巻き込まれる危険性は、誰にでもある

──鴨志田さんは日本弁護士連合会「再審法改正実現本部」の本部長代行を務められていますが、具体的な「改正」の内容として求められているのは、今お話しいただいた2点でしょうか。

 はい。捜査機関が集めた証拠すべてを開示されるようにするためのルールをつくることと、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てを禁止すること。何しろ100年以上前の条文ですから、いろいろ他にも変えなくてはいけないところはあるのですが、まずはこの2点が優先課題だと考えています。私が担当している大崎事件をはじめ、再審請求をしている本人や、死後再審の当事者になっている遺族が高齢化しているケースも多い。今すぐにでもこの2点を変えて、再審が認められやすいようにしないと、時間切れになってしまう可能性もあります。

 袴田事件に関する報道などを見ていると、ともすれば議論が、袴田事件だけ、袴田事件に関わった裁判官や検察官が悪かっただけというふうに矮小化されがちだと感じます。でも、冤罪事件、再審開始までに何十年も費やされた事件はこれまでにいくつもある 。それだけ繰り返されるということは、明らかに個々人のスキルやレベルの問題ではなく、システム自体のエラーでしょう。その事実を正面から受け止めて、制度改革につなげようという動きがないままここまで来てしまったことが問題なんです。

 何もしていない無辜(むこ)の人物が、間違って逮捕されて有罪判決を受けて、もしかしたら死刑になってしまうかもしれない。なんとか死刑を避けられても、無実を証明するのにまた何十年もかかって、人生丸ごと奪われてしまう。そんなことが何度も繰り返されているような国が民主主義国家、ましてや先進国と言えるでしょうか。そして、そうした冤罪に巻き込まれる可能性は、すべての人にあるんですよね。冤罪被害者が自分や自分の大事な人だったらどうだろうか、という想像力を持ってみてほしいと思います。

──ちなみに鴨志田さんご自身は、どうして「再審」の問題に関わり続けてこられたのでしょう?

 再審事件というのは国選弁護人制度もなく、関わる弁護士は基本的には手弁当なので、「やればやるほど赤字」というのが実情です。それでも続けてきたのは、「知ってしまった以上、知らなかったころには戻れない」という思いに尽きますね。

 私が弁護士になってすぐのころから担当している大崎事件 では、夫の弟を殺したとして有罪判決を受けた(原口)アヤ子さんは一度も自白すらしていません。罪を認めていないんです。それなのに、周りの人たちの証言などから引っ張り込まれて有罪にされてしまった。しかもその周りの人たちは、知的障害がある、いわゆる「供述弱者」でした。彼らが狭い取調室で責め立てられたら、言われたとおりに「はい、はい」と頷くことしかできなかっただろうというのは、私にも知的障害のある弟がいるので、手に取るようにわかります。

 私は、司法修習でたまたま、その大崎事件の第一次再審弁護団長がいる事務所に配属されたことで、アヤ子さんの置かれた状況を知ることになりました。その「圧倒的な理不尽さ」に触れ、何もしないではいられないと感じたのが関わりの始まりです。

 しかも、ここまでアヤ子さんを苦しめてきたのは司法の過ち、司法の罪なんですよね。海外では第三者機関が誤判救済を担う場合もありますが、日本ではそうはなっていない。司法の過ちは、司法に携わる者にしか正せないんです。無実の人を救うために最初に声を上げられるのは弁護士しかいないわけで、だったら弁護士としてはやるしかないよね、という思いもあります。

──袴田事件の再審開始決定で、「再審」問題に注目が集まる今、法改正は実現できるでしょうか。

 もちろん、道のりは厳しいと思います。今までの動きを見ても、法務省や検察庁、いわば権力側が、「過去の過ちを認めて、正していく」ということに、とても消極的なのは明らかです。

 でも、だからといって絶望したり、「しょうがない、あきらめよう」と言って済ませたりしてしまうわけにはいきません。私たちはこれからもこの国で生きていくし、その中ではまた同じように苦しむ人が出てきてしまうかもしれない。それを防ぐためには、声を上げ続けないといけないんです。

 そして、状況を変えていけるのは世論だけです。「いつ誰が何十年も冤罪に苦しむかもしれない、そんな怖い国には安心して住めない」という声が大多数になれば、国会だって動かざるを得ません。その意味では、十分とは言えないにしてもこの問題に注目が集まっている今は、千載一遇のチャンスだと言えます。この機会を利用しきれなかったら、また忘れ去られていってしまうかもしれません。そうならないために、ふだん法律とは縁がないというような人にこそ、「これっておかしくないですか」と声を上げてほしい。強くそう願っています。


園のようす。
次々と咲く花。

ベニバナイチヤクソウが見頃です。



 


難民審査 これが実態

2023年06月05日 | 事件

入管元参与員 阿部浩己さんに聞く(明治学院大学教授・国際法)

「言っていない」こと調書に 認定の基本知らない政務官

「しんぶん赤旗」2023年6月5日【社会】

 

 与党が7日の成立を狙う入管法改悪案は、国際法が認めていない難民申請者の送還を可能にするものです。政府の判断で送還した人が難民だった場合、逮捕や拷問、ときには殺害されることを意味します。出入国在留管理庁で難民審査参与員を10年間務め、国会に参考人として出席した阿部浩己さん(明治学院大学教授・国際法)に審査過程の実態を聞きました。(小梶花恵)

 申請はまず、入管庁職員の難民調査官が1次審査をします。不認定となって申請者が不服申し立てをすれば、外部から任命された参与員による2次審査となります。そのとき1次審査の記録である供述調書が参与員に送られてきます。

 調書には、調査官が質問して申請者が答え、その答えに基づいて調査官がさらに質問したように書いてありますが、実際はそんなはずはありません。日本語話者以外の人には異なるコミュニケーションの方式があるので、もっとやりとりを重ねているはずなのです。

信じる物語で作られる証拠

 実際のやりとりが書かれてあれば、調査官の誤解やおかしな質問がわかるのですが、調査官の信じる物語に従って調書が作成されており、本当はどんなやりとりがあったのかが見えにくい。不認定になるのが必然に見えるように再構成することもできる調書の作り方が問題です。それが証拠として2次審査に提出されてくるのです。

 参与員が「1次審査であなたはこう言っていた」というと、申請者は「そんなことは言っていない」ということが多い。「何で書いてあるの」と聞くと「言っていないのに書かれた」と。そんなことが多かったので、調書に問題がありそうだと思うようになりました。きちんと理解して調書に署名したのかが疑わしくなったのです。

 1次審査がなおざりでも、私が調べて認定すべきとの意見を提出したものがあります。

 ある国で夫に先立たれた女性が、不衛生な儀式を強いられるなど親族に虐待され、かつ寡婦として社会的な差別を受ける事案でした。欧米では難民認定例があり、人権NGOも重大な人権侵害として報告していました。1次審査では全く調査がなされず、私人の間のいざこざで難民に該当しないと判断されたのでしょう。私は認定すべきと意見を出しましたが、最終的に認定されませんでした。

 自民党の井野俊郎衆院議員が前回廃案になった入管法改悪案審議の発言で、「法務省の政務官だった時、入管庁の『認定すべきだ』という判断に対してサインを拒否した」と言いました。弁護士もやっていた身として、客観的証拠なしには認定できないというのです。

 難民は避難する時に難民である証拠を持っているわけでなく、供述の信ぴょう性と出身国情報により認定することは難民認定の基本です。そのことを理解していない人が決定的な瞬間にかかわっている。

弱者の処遇が社会あらわす

 難民として保護を求めて来たのに在留資格のない人は、日本の中で最も弱い立場にいる人たちです。最も弱い立場の人たちがどのように処遇されているかが、その国の社会のあり方をよく照らし出すものです。

 弱い立場の人のひどい状況を放置するのは、社会にひどい状況が広がるのを放置すること。すべての人の尊厳が守られることを確保するには、まず弱い立場にいる人を守ることが必要です。国民には関係ないなどと考えるべきではありません。明日はわが身です。


「人権」も何もあったものではない。
まさに、暗黒政治が行われている。

園のようす。
シャクナゲ

キンポウゲ

キノコ・タンポポ

 


ウクライナに兵器を供与し続けることが正義なのか 「停戦」を呼びかけた意見広告から考える

2023年06月04日 | 社会・経済

「東京新聞」2023年6月4日 

 先月中旬、日本では東京新聞などに、米国ではニューヨーク・タイムズ紙に、ウクライナ戦争の停戦交渉を提唱する大型の意見広告が出された。別々のグループによる呼び掛けだが、共通するのは欧米からの大量の兵器投入による戦闘の激化が世界大戦や核使用につながりかねないという危機感だ。日本での意見広告を取りまとめた和田春樹・東大名誉教授と伊勢崎賢治・東京外大名誉教授に提唱の真意を聞いた。(稲熊均)

◆「戦争をあおるのではなく、停戦のテーブルを」

 意見広告は本紙掲載(先月13日)が先進7カ国(G7)首脳らに、ニューヨーク・タイムズ掲載(同16日)がバイデン大統領らに呼びかけた声明となっている。
 日本の発起人は和田、伊勢崎両氏を含め社会学者の上野千鶴子さん、政治学者の姜尚中さん、作家高村薫さんら32人の有識者。米国はジャック・マトロック元駐ソ連大使、デニス・ライヒ退役陸軍少将といった外交官や軍の元高官ら14人が名を連ねる。
 それぞれの趣旨は—。

【東京新聞での意見広告】

 「今やウクライナ戦争は北大西洋条約機構(NATO)諸国が供与した兵器が戦争の趨勢すうせいを左右するに至り、代理戦争の様相を呈している。おびただしい数の犠牲者を出している戦争が続けば、影響は別の地域にも拡大。核兵器使用の恐れもある。広島でのG7サミットに参加する首脳に求めます。武器を供与し戦争をあおるのではなく、ロシアとウクライナの停戦のテーブルを作ってください」
東京新聞に載った意見広告

東京新聞に載った意見広告

【NYタイムズでの意見広告】

 「戦争の直接の原因はロシアの侵略にある。それでもNATO拡大が(ウクライナの加盟で)ロシア国境にまで及ぶ計画が現実味を帯びてきたことで、ロシアに恐怖を抱かせたことは否定できない。ロシアの指導者は30年間、危惧を発し続けてきた。米国内でもNATO拡大の(ロシアの軍事行動を招く)危険性に警告を発する声もあったが、後戻りできなかった。背景には兵器の売買によって得られる利益もあった」
 「(ウクライナ戦争での)衝撃的な暴力の解決策は、兵器の増強や戦争の継続ではない。軍事的な激化は制御不能になりかねない。人類を危機にさらす前に、戦争を迅速に終わらせるための外交に全力を挙げることをバイデン大統領と議会に求めます」
NYタイムズに載った意見広告 タイトルは「米国は世界の平和のための力であるべき」

NYタイムズに載った意見広告 タイトルは「米国は世界の平和のための力であるべき」

◆長引く戦闘で広がってきた危機感

 2本の意見広告が掲載されて約20日たつが、停戦交渉どころか、戦闘はむしろ激化している。広島サミットでも、ウクライナへの軍事支援とロシアへの経済制裁の強化に重点が置かれた。それでも和田、伊勢崎両氏とも、米国でこのような意見広告が出たことに国際社会の停戦機運の大きな変化を感じている。
 
 「昨年5月にも私たちは停戦交渉の開始を国連事務総長に求める書簡を送っている。当時、欧米の有識者にも呼びかけたが、ほとんど応じてもらえなかった。ロシアの非道を許さずウクライナの正義のために軍事支援するというのが民主国家の『正論』で、停戦の呼び掛けはそれに背くものとして受け入れ難かったようだ。今は『正論』にのみ固執することへの危機感も広がっている」(伊勢崎氏)
 「NYタイムズでの声明は元軍人や外交官ら安全保障の専門家の訴えという意味も大きい。この戦争の継続が人類にとって危険という警鐘は多くの市民にも響いている」(和田氏)

◆代理戦争から直接戦争へ 戦術核使用の危機

 現在の戦況は、ウクライナの反転攻勢が間もなく始まると見込まれている。その関連かは不明だが、ウクライナとの国境に近いロシア西部のベルゴロド州で「反プーチン武装勢力」を名乗るグループが破壊活動を散発させている。
 伊勢崎氏は「ドローンによるロシア国内での攻撃も多発している。クレムリンへの攻撃もあった。NYタイムズによると、米国当局者はウクライナが関与していた可能性があるとみている。真偽は不明でも、こうしたロシア国内での攻撃によりプーチン政権が戦術核の使用に踏み切る恐れは否定しきれない」と危惧する。
 
 NATO諸国がF16戦闘機をウクライナに供与することについては、ロシアの元軍幹部が「F16がロシア領内を攻撃した場合、(欧州の)戦闘機の基地を攻撃しなければならない。大戦になりかねない」とけん制している。伊勢崎氏は「現在の『代理戦争』に近い状況が、ロシアとNATOの直接の戦争という悪夢に陥る前に停戦を実現しなければならない」と強調する。
 戦況が激化する中で限りなく不可能にも思えるが、伊勢崎氏は国連職員として世界各地で紛争処理の実務に当たってきた経験から、「歩み寄る糸口は探せば必ずある」と考える。
 「ウクライナの穀物輸出を安全に再開させるためにトルコの仲介でロシアと合意した『人道回廊』の措置は部分的な停戦です。双方の譲歩を引き出せるカードを探し、影響を及ぼせる国が仲介することが重要だ」
 ロシアのウクライナ侵攻から間もない昨年3月末には、両国の停戦協議がトルコで開催され、ロシアが占領したクリミアの地位は15年かけ交渉すること、さらには戦闘の続くウクライナ東部についても両国首脳間で協議することなどで大幅に歩み寄ったこともある。停戦への光明がいったんは見えかけていたのだ。

◆問われる米国、そして日本の役割

 ところがほぼ同じ時期、バイデン大統領がワルシャワでの演説で、専制主義との闘いに「全力を尽くす」と強調し、「プーチン氏は権力の座にとどまってはならない」とまで非難した。その後、キーウ近郊ブチャで惨殺された多数の遺体が発見され、ウクライナ側はロシア軍の虐殺と非難。両国の停戦協議は吹き飛んだ。欧米からウクライナへの軍事支援も急増。ゼレンスキー大統領も今ではクリミアも含めてウクライナ領内からのロシアの完全撤退を要求している。
 和田氏は「バイデン演説は大きな影響力を持ちウクライナを強硬にさせただろう。ただ、最近の米国からの情報ではゼレンスキー大統領の要求には米国も距離を置き始めているようだ。かつて朝鮮戦争の停戦協議で米国は韓国の説得に手を焼いたが、今回の戦争も停戦に道を開く上で、米国がウクライナをどう軟化させるのかも焦点になるかもしれない」と分析する。
 
 伊勢崎氏は一方的に侵攻したロシアの戦争責任を追及するためにも停戦が必要と強調する。「戦争犯罪は国際刑事裁判所など国際司法の場で裁くため、公訴の証拠が必要です。停戦により両軍が撤退しなければ犯罪の証拠を調査できない。ロシアには不利でのみにくい。だからこそ、例えば欧米からのウクライナの兵器供給を停止、あるいは大幅に縮小するとか、大胆な譲歩のカードが必要です」
 そのうえで、こう訴える。「既に中国が停戦を提案している。これにインドはじめ中立の立場を取るグローバルサウスの国々も仲裁に加わることができないか。最も重要なのは米国が停戦にどのような立場を取るかだ。被爆国であり平和憲法をいただく日本には、米国を停戦の仲介者に巻き込む役割を演じてほしい。そうしたかつてない国際的な協調がないと、停戦のテーブルは作れない」

◆デスクメモ

 トルコでの「停戦協議」が行われたのは、ウクライナ侵攻の開始直後。それが実らず、死傷者は増え続け、互いに引くに引けない状況が強まった。憎しみの連鎖は世代を超えて続くだけに、これ以上広げてはならない。「止める」ための提案に、もう一度知恵を絞るべきタイミングだ。 (本)

また珍しい花を園地内で発見。

和名  モイワラン 藻岩蘭 

最初に発見された産地である藻岩山(北海道)にちなむ。

学名 Cremastra aphylla T.Yukawa   1999年に新種として記載された。

分布 北海道、本州、四国

生態と形態 湿気の多い林床に生えて、全面的に菌に寄生する(いわゆる腐生ラン)。

サイハイランのような充実した球茎(バルブ)は見られないし、通常の葉もでない。 花は褐色を帯びた赤紫色で、開き方がサイハイランより小さく、1つの花茎につく花数がサイハイランより少ない。

なお、四国産は葉をつける点でモイワランと異なるといわれるが、地上に葉らしきものが出ているのを見たということは聞かない。

花期 5月~6月

モイワラン/トクシマサイハイラン(四国の野生ラン)Cremastra aphylla (fc2.com)

わたしも初めて見る花だった。色が特異で目につきやすい。

満月です。地震、まだ起きるかも?


マイナンバーカード 堤未果氏に聞く 世界の常識と逆行する「マイナンバーカードが危ない」理由とデタラメの必然

2023年06月03日 | 生活

「日刊ゲンダイ」2023/06/03

 案の定というか、ここにきて、マイナンバーカードを巡るトラブルが続出だ。実はこうした混乱は予測し得たこと。そして、今後はさらに増えていく。

 数々の問題点を以前から把握、指摘してきたのがジャーナリストの堤未果氏だ。

 堤氏は最新著「堤未果のショック・ドクトリン」(幻冬舎新書)でも、こうした問題点を列挙、いわば、今日の事態を予測していた。改めて、堤氏が言う。

「まず、なぜ、こんなにマイナンバーカードの普及を急ぐのか。そこからして邪です。2016年1月にスタートしたマイナンバーカードは最初から国民に不評でした。住基ネットが失敗したものだから、その代わりに出してきたのですが、看板を替えただけで、国民の理解が得られるわけがありません。そこで、マイナポイントという餌をぶら下げて、2兆円超もの税金をつかって普及させることにした。しかし、それでも浸透しない。

 そこで、今度は健康保険証と紐づけることにした。河野大臣がいきなり、“2024年秋に紙の保険証は廃止する”と宣言したのです。強引な進め方には医師会や介護施設から猛反発が起こっています。専用のカード読み取り機が必要になるし、職員にも研修が必要。さらに読み取り機の不具合も報告されています。保険証の代わりの資格確認証の利用は追加料金を取るなどハードルを上げている。これではマイナンバーカードを持たない人、申請したくてもできない人は窓口で全額自費負担になり国民皆保険制度は崩れます」

海外では情報を分散させるのが主流

 そもそも、国民の理解が得られないのは、なぜなのか。

「個人情報のデジタル化には3つの大切な条件があります。1つ目は政府と国民の信頼関係。2つ目は情報の取り扱いに対する透明性と機密性。3つ目は個人情報の持ち主の主権保護ですが、日本はいずれも不十分です。担当大臣は都合が悪くなると、“記憶にない”とすっとぼけるか、自治体のせいにしてしまう。

 これでは信頼は得られませんし、2つ目の透明性について言えば、エストニアは誰が自分の個人情報にアクセスしたかを確認できるシステムがあるし、本人が嫌だと思えば、その情報を削除することもできます。日本はそうした自由を与えないまま、すべての情報をたった4桁の番号で一つのカバンに詰め込もうとしている。

 その情報も当初は災害、税金、社会保障の3つの分野に限定されるはずだったのに、岸田政権はなんと省令で、その範囲をどんどん拡大しようとしています。そのうえ、強制的に情報を取得し、それが漏れても本人はわからず、誰が責任を取るのか、もわからない。個人情報の主権保護も何もありません」

 海外では情報は分散させるのが主流だ。米国にはソーシャルセキュリティー番号があるが、日本のようなマイナンバー制度はない。ドイツは納税者番号はあるが、何もかも一元化された共通番号制度は違憲とされている。イギリスは06年にIDカード法が成立したが、政権交代時に廃止された。政府は「日本はデジタル化に遅れている」みたいな言い方をするが、真っ赤なウソなのである。だとすると、政府は一体、どんな目的で、マイナンバー制度を急ぐのか。ここには大きな疑念がある。

ゆくゆくは思想管理や徴兵制にも使われる恐れ

 マイナンバーカードの問題点は挙げていけばきりがない。

 台湾のオードリー・タン氏は、堤氏の最新著での対談で、デジタル化で一番大事なことは「決して権力を集中させてはいけない」と語り、普及させるポイントは「一番使いづらい人にあわせること」と助言していたが、どっちもできていないのが日本だ。とくに権力の集中については、マイナンバーに紐づけられる情報がどんどん勝手に拡大されている。

「2022年3月4日に運転免許証とマイナンバーカードを一体化させる道路交通法改正案が閣議決定されました。23年3月7日には年金給付の受取口座も国民が拒否しなければ、マイナンバーカードと自動的に紐づけられることが決まりましたが、こちらも閣議決定です。

 怖いのは、“規定された事務に準ずる事務”であれば、省令でマイナンバーカードの利用範囲を拡大できるようになっていることです。“準ずる事務”なんて、どうにでも拡大解釈ができる。こうして、国民の知らない間にどんどん、国民の情報が次々にマイナンバーカードに紐づけられているのです。諸外国では貴重な情報を同じカバンに入れないのは常識で、セキュリティーの概念から、分散化に動いているのに、日本だけが逆行しているのです」

あらゆる個人情報が紐づけられたら…

 マイナンバーカード機能はスマホにアプリ、マイナポータルをインストールすると便利に使える。ただし、アプリの利用規約をよくよく読むと恐ろしいことが書かれている。

<利用規約の変更が(中略)合理的であるときは、本利用規約を改正することができるものとします><マイナポータルの利用にあたり、利用者本人または第三者が被った損害について、(中略)デジタル庁は責任を負わないものとします>などなどだ。つまり、やりたい放題で情報が漏れても責任を取らない。こんな政府に任せていたら、今後は一体どうなるのか。

「国民の個人情報をデジタル化し、ブラックボックスに詰めてデジタル庁が管理する。ゆくゆくはタンス預金なども把握し、国民の資産を可視化して、財務省の悲願であろう財産税徴収も簡単にできるようになるでしょう。さらに私が懸念しているのは脱炭素を理由にした市民の買い物情報の追跡です。中国が導入している信用スコアのように、ステーキを買うと、温暖化への意識が低いとして、信用情報が減点になるなどの怖い使い方が、すでにSDGsの名の下に他国でも始まっている。これは思想管理につながるので注意が必要です。

 9.11後の米国では“落ちこぼれゼロ法”を作って貧しい子供の成績を軍に流させる『経済徴兵制』を整備したし、ロシアは今やデジタル赤紙がスマホに送られてくる。マイナンバーカードを作ってあらゆる個人情報が紐づけられたら最後、今の日本政府の様子では何に使われるかわかりません。防御するにはマイナポータルアプリを削除すること。健康保険証も2024年秋までに紙の資格確認書を申請しましょう。期限1年で毎年更新が必要ですがリスク管理と考えて。私たち国民が抵抗しなければ、政府のやりたい放題がエスカレートする一方ですから」

 便利になることには裏がある。この政権は性悪だという意識に立った方がいい。


わたしも抵抗し続けましょう。

スベリヒユ

栄養満点のスベリヒユ

2021年06月13日 | 野菜・花・植物





コラボ、都補助金断念 仁藤代表“少女の安全守れぬ” 寄付で事業継続

2023年06月02日 | 生活

「しんぶん赤旗」2023年6月2日

 東京都の若年女性支援事業を受託し、虐待や性搾取に遭った少女らに寄り添い活動をしてきたColabo(コラボ)への妨害が激化した問題で、仁藤夢乃代表は1日、都内で会見しました。妨害が続く中でコラボに活動休止を求めた都は4月に支援事業の要綱を変更。コラボは「新たな要綱では少女たちが安心してつながることができない」として都の補助金の申請を断念したと報告しました。

 ネット上で「コラボに公金不正がある」などのデマが拡散される中で昨年末から、少女らに居場所や食料を提供するコラボの「バスカフェ」事業に、複数の男性が訪れ怒鳴るなど妨害が激化していました。都は2023年度から若年女性支援事業の要綱に▽都が求めた時は利用者の個人情報を開示する▽これについて利用者から支援開始の時点で同意を得る―などを盛り込みました。

 仁藤代表は、コラボが支援する少女は、公的機関から適切な保護を受けられず、行政に対し強い不信感を持っていることも少なくないと指摘。「少女たちの個人情報を守ることで関係を築いてきた」としています。

 都からの資金がなくなった現在、コラボの事業は寄付金で行われています。仁藤代表は「資金面では苦しい選択だったが、少女たちの信頼を裏切ることはできないと判断した。夜の街では今も少女たちが性搾取に遭い続けており、都が妨害に屈した姿勢を見せたことで、さらに深刻化している。活動をやめるわけにいかない」と述べました。


一般社団法人Colabo(コラボ) – Colabo(コラボ)は中高生世代を中心とする10代女性を支える活動を行っています! (colabo-official.net)

こちらで事業活動や「支援」などを受け付けております。

園のようす。

大山蓮華

クゲヌマラン



難民審査に携わる「参与員」たちが怒った 「難民見つからない」発言利用する政府に 不可解な実態も暴露

2023年06月01日 | 社会・経済

「東京新聞」2023年6月1日 

 入管難民法改正案の審議が大詰めを迎える中、難民申請の審査に関わる難民認定参与員たちが30日夜、記者会見を開いた。参与員がまとまって会見するのは異例だ。政府が改正の根拠に、「申請者に難民がほとんどいない」という特定の参与員の発言を取り上げていることに異論が続出した。難民認定制度の適正な運営に疑問が膨らんでいるのに、申請回数を事実上制限する法改正をしていいのか。(木原育子、大杉はるか)

◆語られた「違和感」

難民審査の実態について、経験を元に語った難民審査参与員ら=東京都内で

難民審査の実態について、経験を元に語った難民審査参与員ら=東京都内で

 会見場となった東京都心の貸し会議室に、難民審査参与員6人がずらりと並んだ。オンライン参加の参与員経験者と合わせ7人。「職責を全うしようとする参与員を愚弄ぐろうしている」「大変驚愕きょうがくした」。憤まんやる方ない様相での発言が続いた。会見は終了予定を1時間超過した。それでも怒りが収まる気配はなかった。
 矛先は、NPO法人「難民を助ける会」の名誉会長で2005年から参与員を務める柳瀬房子氏の発言だ。21年の衆院法務委員会の参考人招致で「難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができません」。政府が改正のよりどころとするこの言葉に、他の参与員たちが違和感を唱えたのだ。
 15年から参与員をする中央大の北村泰三名誉教授(国際法)は「ふに落ちない。全然違う」と首をひねった。千葉大の小川玲子教授(社会学)も「申請に来る人は難民申請のプロではない。きちんと状況を説明できず、参与員が拾えていないケースがある」と、自身の経験と柳瀬氏の発言との乖離かいりを語った。

◆不可解「入管当局が参与員に割り振る件数の差」

 参与員は、入管当局の1次審査で難民不認定となった人の2次審査に関わり、意見を述べる。現在111人。通常、3人で1組の常設班に分かれ、月に数回集まって審査する。
 会見参加者らが口にした違和感の対象には、入管当局が参与員に割り振る件数の差もある。
 柳瀬氏は、05〜21年に約2000件の対面審査をしたが、難民認定をすべきだと意見したのは6人と説明していた。認定率は1%に満たない。
 また、出入国在留管理庁が今国会に提出した資料で、柳瀬氏が21年度に1378件、22年度に1231件を担当し、全体の2割以上が同氏に集中していたことも明らかになった。
 一方、会見に応じた7人のうち3人は、2年ほどで5件に満たない。年間約50件審査してきた参与員もいるが、それでも柳瀬氏との差は歴然としている。

◆認定率34.7%に達した後、割り振られる審査が半減

 参与員らが不可解さを感じる出来事も起きている。
 伊藤敬史弁護士は21、22両年度で計49件審査し、難民認定や人道上配慮のための在留特別許可を出すべきだとの意見書を出したのは17件。認定率は34.7%と高かった。すると納得できる説明をされないまま、22年度後半から、割り振られる審査が半減したという。
 北村氏も同様だ。年2〜3件、難民認定すべきだという意見を述べてきた。すると、昨秋から審査の配分数が、月4件から1件に大きく減った。
 参与員の審査には、常設班とは別に、早期処理のための臨時の班もあるという。柳瀬氏がこの臨時班に関わっていた可能性があるが、北村氏は審査の正確性や公平性の観点から「スピーディーに処理する班を作る発想自体おかしい」と断じた。伊藤弁護士も「きちんと吟味するケースと、しないケースをなぜ判断できるのか。そのこと自体を吟味する必要がある」と疑問を呈した。

◆法曹、外交官OB、報道関係者など多彩な顔ぶれ

 参与員は大学の研究者や弁護士だけではない。検事や裁判官、外交官のOBや報道関係者など、さまざまな経歴の人たちがいる。
 審査前に入管庁から提供される同じ資料を見て面接に臨んでも、専門性によって解釈は変わる。一貫した審査基準はなく、結論にばらつきが出るのが実情だ。
 明治学院大の長谷部美佳准教授(社会学)は「法曹の人は概して、聞き方も一文が短く、ゆっくり話さない。相手に配慮すれば、聞き出せる話が違ってくるのに」と本音を明かす。
 また、入管庁から送られてくる事前資料の「出身国情報」について、国士舘大の鈴木江理子教授(社会学)は「2次審査の任務を負うにはとても足らない」と内容の不十分さを訴える。

◆「難民がいない」を前提に国会審議が進む不条理

 柳瀬氏の発言をきっかけに、参与員制度への不信感が広まっている状況への懸念の声も上がった。
 先の伊藤弁護士は「1人も取りこぼさない気持ちで向き合ってきた。いいかげんな制度と片付けられるのは違う」と強調した。
 会見の最後は、全国難民弁護団連絡会議代表の渡辺彰悟弁護士が締めくくった。「『難民がいない』という話を前提に国会審議がされている。とても危険性を感じ、怒りを覚える。不条理極まりなく、いかにゆがんだ議論をしているか、皆さんに考えていただきたい」
 こうした声に柳瀬氏はどう応えるのか。「こちら特報部」は「難民を助ける会」を通して取材を申し込んだが「お断りしたい」とのことだった。なお、同会は「参与員としての柳瀬の活動は当会とは一切関係なく、個人の資格で行っている」と一線を画している。

◆審査件数の偏り…入管庁の判断基準はっきりせず

 参与員制度は2005年に創設された。審査に第三者を入れ、透明性を増すのが名目だった。参与員は「人格が高潔で公正な判断ができ、法律や国際情勢に関して学識経験を有する者」とされ、法相が任命する。入管庁によると、日当は2万2300円だという。
 参与員によってなぜ審査件数に偏りがあるのか。入管庁の担当者は「事件の配分は運用で入管庁が行っている」と説明したが、その判断基準ははっきりしなかった。
 今回の事態を専門家はどうみるのか。NPO法人「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長の小川隆太郎弁護士は「参与員制度は以前から問題があった」と話す。小川氏が付き添ったミャンマー人の不服審査の面接で、参与員が「あなたは難民にしては元気すぎる」と印象だけで語ったことを一例に挙げ、参与員としての専門性を疑問視する。「参与員は選任時に研修は受けるが、継続的トレーニングはない」
 審査担当者の偏りに関しては「入管庁が恣意しい的に配分しており、参与員の審査に独立性がないことが表れている」と指摘する。

◆改善をしなければ「保護されるべき人が保護されない状況続く」

 入管難民法改正案は、難民認定申請で2回不認定となった人は、本国に送還できる規定を設けている。小川氏は「まず国際基準に沿った難民認定制度にすべきだ」と強調。「入管庁から独立した難民保護庁をつくり、専門性のある審査をするべきだ」とも主張した。
 元参与員で、国際人権法が専門の明治学院大の阿部浩己教授は、柳瀬氏に偏った点に関し「入管は審査が滞留することを警戒し、処理に協力してくれる参与員に目安をつけていたのでは」と推測する。参与員になるには日本弁護士連合会などの推薦が必要だという。だが「推薦母体がいくつあるかは分からない」とも。
 阿部氏は現行制度について、参与員の資格基準を具体化するなどの改善をしなければ「保護されるべき人が保護されない状況が続く」と危惧する。
 そもそも参与員は意見書を出すが、認定の判断権は法相が握る。「参与員の意見に拘束力はなく、入管にとって好ましくない外国人は入れないという考えを担保する仕組みになっている」という問題にも言及した。

◆デスクメモ

 知見がある人だとしても、年間1000件以上、丁寧な審査をできるだろうか。しかも、100人以上の参与員がいるのに、1人が全体の2割以上を担当するのはなぜだろう。不可解な面が多すぎる。難民認定は人の生死を左右する話だ。疑問だらけの法改正の前に、運用実態を明らかにすべきだ。(北)
 

悪法が次から次へと「国会」を通過している。
 
園のようす。
 
 
アマドコロ
 
札幌からご婦人2名ご来園。
「ウド」の看板に引かれて来たという。
そこで、園内を案内しウド採りをしてもらった。
店頭に並ぶウドしか知らず、初めて見るウド、初めて採るウドに満足していただいたようだ。葉はもう開いていたがウドが好きなんだそう。
すっかり園内氣に入っていただいたようで、また来たいと。
 
明日は午後から雨の予報になったので、急遽札幌まで行ってきます。