モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

焼石岳の花(8)秋田斜面、南本内岳編

2024年03月18日 | 焼石岳/花と山容

(本頁は「焼石岳の花図鑑(7)9月編」の続きである。)

今までの花図鑑は主に中沼コースで見られる花を扱って来たが、
焼石岳の西側、東成瀬コースや北側の湯田コースも面白い。
同じ山域とは思えないほど、違った顔ぶれの花が咲いている。
本編では東成瀬コースと南本内岳山頂付近で見られる特徴的な植物を咲いた順に列記してみる。
なお、東成瀬コースの八合目・焼石沼から、九合目・焼石神社までの南本内岳南西斜面を、
ここでは、「秋田斜面」と呼ぶことにする。
行政上は岩手県なのに何故、「秋田」と思われるかもしれないが、
東成瀬コースは唯一、秋田県(東成瀬村)から始まるコースであり、
この斜面からは秋田側がよく見渡せる。
他にもそう呼ぶ御方が居たので、その呼び名を使わさせてもらう。




六月下旬、八合目・焼石沼の辺りでは、黄色い花がいっぱい咲いている。
当初、ミヤマキンバイの栄養状態の良いものかと思ったが、
花がちょっとでかすぎる。

しかも小葉は三枚(⇒ミヤマキンバイ)ではなく、五枚あるので、
真昼岳や秋田市の太平山でも見かけるエチゴキジムシロではないかと思う。
もしそうだとしたら、東北では最大規模の群生地ということになる。

焼石沼付近のエチゴキジムシロ?大群生。バックは三界山とモッコ岳。 2018/06/23



同じ場所が、十日後にはまた別の黄色い花に覆われる。

焼石沼付近のミヤマキンポウゲ大群生。バックは三界山。2017/07/08



こちらは明らかにミヤマキンポウゲだ。
ミヤマキンポウゲとハクサンチドリは一般的な高山植物で、焼石では中沼コースにも多いが、
群生の規模では、焼石沼周辺には敵わないので、こちらでも紹介する。

ミヤマキンポウゲ 2017/07/08
    


(右上)ハクサンチドリ 2017/07/08


同じ場所には、バラ科の白い花も混生している。

近くには、よく似たノウゴウイチゴ(花弁は7,8枚)も多いが、こちらの花弁は五枚。
シロバナノヘビイチゴではないかと思われるが、
もしそうだとしたら新分布地ということになる
(シロバナ・・・は福島から岐阜にかけての太平洋側に分布)。

白い花は、シロバナノヘビイチゴだろうか。2017/07/08



初夏の秋田斜面には、
エチゴキジムシロ、ミヤマキンポウゲ、ハクサンチドリ、シロバナノヘビイチゴ?がやたらと多い。

こんなお花畑は他の山では見たことが無い。
秋田斜面上部に丈が40~50センチのアブラナ科が生えていた。イワハタザオだろうか。

イワハタザオ? 2017/06/17
 

(右上)ズダヤクシュ 2017/07/08

ズダヤクシュは焼石全体、主に樹林下に多いが、
焼石沼付近では明るい草地なのに大群生している。


何故此処(焼石沼や秋田斜面)にこのような特殊なお花畑が出来たのか。

20年くらい前までこの場所は南部短角牛の放牧場になっていた(夏場のみ)。
当時、此処を通ると、ベゴがモ~♪と鳴いてすり寄って来たり、
その産物が湯気を上げていたりして (´π`;)たじろいだ記憶がある。

植物に関しても、おそらくは牛の好みを反映し、
毒があるとか味が悪い、棘が痛いなど牛の嫌な植物だけが残って繁栄していた可能性がある。

此処は牛の放牧圧によって、維持されてきた特殊なお花畑なのかもしれない。

シナノキンバイは日本アルプスではあたり前の花だが、東北では何故か少ない。
焼石では銀明水付近にも少し生えているが、秋田斜面や南本内岳の方が多く、登山道からも容易に観察できる。
先のミヤマキンポウゲとよく間違われるが、シナノの方は花が大きく、花色が少し橙がかっている。
実は花弁のように見えるのは萼が変化したものなので、ミヤマキンポウゲのように花弁の裏側に緑色の萼は見つからない。
秋田斜面には、両種が混生しているので、比較することが出来る。

シナノキンバイ 2017/07/08



オオカサモチ 2017/07/14
    

                                                                                                                                                        
(右上)マルバダケブキ 2017/07/14



秋田斜面には、マルバダケブキが生えている。
しかもここには同じメタカラコウ属のトウゲブキも生えており、混生している。

両種は総苞の有無や頭花の色(マルバダケブキの方は橙色がかっている)で容易に識別できる。

タカネスイバは地味だし、高嶺の花としての有難味はあまり感じないが、
東北の山では珍しい。

タカネスイバ 2018/06/23
 
                                       
(右上)ベニバナイチヤクソウ 2017/07/08


秋田斜面は盛夏になると花がすこぶる多くなる。

その立地やフロラ、相観から、
植物生態学的には「亜高山帯・広葉草原」と思われるが、とにかく種類が豊富だ。

こんな場所は東北ではおそらく此処だけだろう
(フロラだけ見ると、真昼岳の稜線付近にやや似ている。 ⇒ こちら参照)。


タカネナデシコ 2017/08/06



タカネナデシコ白花 2017/08/06
 

                                                                                                                           
(右上) エゾニュウ 2018/07/27


エゾニュウは中沼コース・銀明水付近にも多い。バックは鳥海山。

同じシシウド属だが、ミヤマトウキは丈が低い。こちらは姥石平にも多い。

ミヤマトウキ 2018/07/27



タカネナデシコに囲まれて、カンチコウゾリナ。

カンチコウゾリナ 2017/08/06



イワオウギ 2017/08/06



タカネナデシコ、イワオウギは東北では珍しい。
前者は他では、早池峰、真昼岳、朝日連峰くらい。
後者は和賀真昼山塊、蔵王の一部(不忘山)、朝日連峰くらいか。

イワオウギ 2022/08/05
 

                                        
(右上)タカネセンブリ 2017/08/06

タカネセンブリは以前、ヤケイシセンブリと呼ばれ、
焼石岳の特産種と思われていた。ここでは南本内岳に多い。

なおタカネセンブリ自体、生育地は限られ、
他には和賀山塊、朝日連峰、北アルプス北部など。地味だが見逃せない花だ。  

ハクサンサイコも東北では珍しい。真昼岳南峰でも見かけた。

ハクサンサイコ 2022/08/05



エゾシオガマ 2017/08/27
 

                                          
(右上)オオレイジンソウ 2017/08/06
 


オオレイジンソウは東北では珍しい。焼石では南本内岳に限定的か。

クガイソウは秋田斜面に多く、南本内岳山頂近くの沼の群生はみごとだ。

クガイソウの大群生 2017/08/06



クガイソウ 2017/08/06



オニシモツケ 2017/08/27



オニシモツケは焼石のあちこちで見かけるが、秋田斜面や南本内岳の群生はみごとだ。


以上。


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2 コメント

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Unknown (sevunn0007)
2024-03-18 09:56:49
モウズイカ?さん
おはようございます♪〜
コン爺です。
ブログ始めて
50日、投稿に追われて
やっと皆さんをチラホラみてます
深田久弥の100名山と
田中澄江の花の100名山を
まさに、みている様で
楽しませていただいています。
これからもよろしくお願いします🙇
返信する
sevunn0007さんへ。 (モウズイカ)
2024-03-18 10:41:00
コメントありがとうございます。
私のブログは2021年からスタートなのでまだ三年足らずですが、
ホームページは2000年の初め頃なのでかれこれ20年以上前から作っておりました。
昨年春、レンタルサーバー会社との決裂でそれが全て失われました。
本ブログでは旧ホームページのコンテンツを可能な範囲で徐々に復活しております。
本頁(焼石岳の花シリーズ)もそのひとつです。
このような記事がときどき続きますので、よろしくお願いします。
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