閉塞経済―金融資本主義のゆくえ (ちくま新書 (729))金子 勝筑摩書房このアイテムの詳細を見る |
ものを作らなくなったアメリカは、過剰な消費を背景とした投資による経済成長の道、つまり金融資本主義の道をとったのです。
金融資本主義の本質は、過剰流動性つまり金余りを意図的に生じさせ、余った金を不動産や証券に投資してバブルを起こし、資産効果によって消費を加速させ、経済成長を遂げる。そして、バブルはやがて崩壊して、更なる過剰流動性を創出させ、別の部門や地域にバブルを生じさせていく、という手法をとります。
バブル崩壊が生じるたびに、流動性に危機が訪れ、政府は、莫大な資本注入、金利の引き下げ、ドル供給などを通じてジャブジャブと市場に金を流し続けるのです。そして最も大事なのは、その金が庶民の血税から出ている、ということです。なぜ、破綻した高給取りたちの給料を我々が払ってやらねばならないんでしょうか?
実体経済による成長には時間がかかります。バブルによる成長の方がずっと速く簡単です。しかし、バブル崩壊のリスクがある。そこで、そのリスクを回避するための金融商品をたくさん作り、それを証券化して、全世界にばらまく。すると、ファイナンス数理的には、そのリスクは、薄められて小さくなるように思えます。しかし、権利関係が複雑化して、誰が最終的にリスクを負うのか、リスクがどれだけあるのか、解らなくなってしまいました。それで、みんな疑心暗鬼になって、信用不安が広がっている。過剰流動性を生み出す管理通貨制度になくてはならないものが、信用なのに、です。
相対的に、日本はリスクが少なそうだという見込みから、企業経営が健全で力強そうだ、ということで、円を買う人が、今のところ多いのでしょう。ところが、世界最強の企業のひとつだと思われていたトヨタの業績が大幅に下方修正されると、株価は大幅に下がり、輸出で持っている日本企業に不利な円高が進行する。
今度のワシントンの金融サミットでは、きっとアメリカ、欧州は、日本に、大量の流動性を供給するように注文をつけてくるでしょう。具体的には、ドル建て、ユーロ建ての国債を大量に日本に買うように注文をつけてくるんじゃないでしょうか?
アメリカは、日本製品を大量に買い、ドルを払いますね。そのドルは、日本が、大量にドル建ての国債を買うことによってアメリカに還流されているのです。
日本は、製品をアメリカの国債という紙切れと引き換えに、輸出しているようなものです。
欧州も日本に同様のことを要求してくるんじゃないでしょうか?
そうなったら、日本は、紙切れと引き換えに製品を供給し続ける植民地になってしまいます。
日本円は、基軸通貨になることなく、欧米の奴隷に成り下がるのです(もう、なってますね・・・)。どうか、日本の当局の人たちには、せめて、円建ての国債を出すように、主張してもらいたいです。