
村上春樹はピザ(pizza)のことをピッツァと表記する。イタリアの食い物で、英語圏でもそう発音されているからなんだろうが、面倒くさいこだわりだなあと思う。村上春樹作品の小洒落た主人公ならピッツァでもいいが、小汚いおっさん(例えば『1Q84』の牛川)の登場人物がビザについて語る場合なんかはどうするんだろうか。
自動車評論家の故・徳大寺有恒氏は、ジャガー(Jaguar)のことをジャグァーと表記する。これも英語圏の発音に近いのだろうが、ジャガーの日本ディーラーはジャガーと表記している。ピッツァは国民的作家のこだわりなので、多少認知されているような気がするが、ジャグァーは普及する前に御大が亡くなってしまった。
ジャガーにはジャギュアという表記もある。イギリスとフランスが共同で開発した戦闘攻撃機の愛称Jaguarの表記だ。これについては統一されていて、僕が知る限り国内のどのメディアもジャギュアだった。あの飛行機をジャガーと呼ぶのは変だと思うほどに定着した表記である。
Danzigという大種牡馬がいた。表記はダンチヒが多かったが、ダンジグという表記もあった。ダービースタリオンではダンチヒだったが、競馬エイトはダンジグだったと思う。
Danzigはドイツの地名なんだからドイツ読みのダンチヒが正しいような気がする。ライプチヒという町もある。
だが、Danzigはアメリカで走り、アメリカで種牡馬やっていたアメリカの馬である。英語読みのダンジグが適切という気もする。村上春樹ならどちらの表記を採用するだろうか。
Danzigの代表産駒にDanzig Connectionというのがいる。日本でのカタカナ表記はダンジグコネクションで統一されている。下につく名前が明らかに英語だから、苗字?も英語読みにしたのだろう。
このように、外来語のカタカナ表記は面倒くさい。個人的には語感がよく、違和感がなく、普及している表記なら現地読みかどうかはどうでもいいと思う。