公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

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KININARU研究 T-ISAAC 法を応用して、個々の患者のがん細胞やウイルス感染細胞を攻撃するキラーT 細胞を作製する

2022-04-11 11:48:00 | 健康など

Rapid cloning of antigen-specific T-cell receptors by leveraging the cis activation of T cells

Abstract

It is commonly understood that T cells are activated via trans interactions between antigen-specific T-cell receptors (TCRs) and antigenic peptides presented on major histocompatibility complex (MHC) molecules on antigen-presenting cells. By analysing a large number of T cells at the single-cell level on a microwell array, we show that T-cell activation can occur via cis interactions (where TCRs on the T cell interact with the antigenic peptides presented on MHC class-I molecules on the same cell), and that such cis activation can be used to detect antigen-specific T cells and clone their TCR within 4 d. We used the detection-and-cloning system to clone a tumour-antigen-specific TCR from peripheral blood mononuclear cells of healthy donors. TCR cloning by leveraging the cis activation of T cells may facilitate the development of TCR-engineered T cells for cancer therapy.

T細胞は、抗原特異的T細胞受容体(TCR)と抗原提示細胞上の主要組織適合性複合体(MHC)分子に提示された抗原ペプチドとのトランス相互作用により活性化されると一般に理解されている。マイクロウェルアレイ上で多数のT細胞をシングルセルレベルで分析することにより、T細胞の活性化がシス相互作用(T細胞上のTCRと同じ細胞上のMHCクラスI分子上に提示された抗原ペプチドとの相互作用)を介して起こり得ること、そしてこのシス活性化を利用して、4日以内に抗原特異的T細胞を検出しそのTCRをクローニングできることを示しています。T細胞のcis活性化を利用したTCRクローニングは、がん治療のためのTCR改変T細胞の開発を促進する可能性がある。

今後の展開

今後 T-ISAAC 法を応用して、個々の患者のがん細胞やウイルス感染細胞を攻撃するキラーT 細胞を作製することで「テーラーメイド免疫療法」の開発を目指します。

 

 

用語解説

1.抗原:ウイルスやがん細胞などのタンパク質の断片。各抗原に限定された T 細胞の応答や抗体の産性などの免疫反応は、抗原特異的免疫応答と呼ばれる。

2.キラーT 細胞:異常細胞(ウイルス感染細胞やがん細胞)と正常な細胞を細胞表面のセンサー(T 細胞受容体:TCR)で区別し、異常細胞のみを殺す T 細胞のこと。

3.T 細胞受容体(TCR):T 細胞の表面に発現していてセンサーの役割を持つ。具体的には標的になる細胞に発現している MHC と異常細胞の抗原の複合体に結合する。

4.主要組織適合抗原(MHC):細胞表面に存在するタンパク質であり、細胞内のさまざまなタンパク質の断片(ペプチド)を結合し、MHC/ペプチド複合体として細胞表面に提示する働きを持つ。

5.trans 相互作用: 2 分子の位置関係を指す。cis との対比で用いられる。本研究では異なる細胞上の分子、すなわち、T 細胞上の TCR と標的細胞上の MHC/ペプチド複合体が結合することを意味する。

6.cis 相互作用: 2 分子の位置関係を指す。trans との対比で用いられる。本研究では同一 T 細胞上の TCR と MHC/ペプチド複合体が結合することを意味する。

7.マイクロウェルアレイチップ:表面にちょうどリンパ球 1 個が入る穴が 12 万 6千個開いているシリコン製チップ。これにより細胞 1 個 1 個を格納することができる。(2003 年に免疫学講座と富山県産業技術研究開発センターが共同開発した。)

8.T-ISAAC 法:ウイルスやがん細胞に特異的な T リンパ球をマイクロウェルアレイチップおよび cis 相互作用を利用して検出し、ウイルスやがん細胞に特異的なTCR 遺伝子を取得する方法。

9.発現ベクター:遺伝子を人為的に発現させるため輸送装置。発現ベクターを使用することで、TCR 遺伝子を目的の細胞に発現させることができる。

10. テーラーメイド免疫療法:個人ひとりひとりに合った免疫療法。語源は、洋服屋(テーラー)で自分の体型にあった洋服を作る(メイド)こと。

 

 

論文詳細

論文名:Rapid cloning of antigen-specific T-cell receptors by leveraging the cis activationof T cells.(T 細胞の cis-活性化機構を応用した抗原特異的 T 細胞受容体の迅速クローニング)

著者名:

小林 栄治 富山大学学術研究部医学系 免疫学 助教

村口 篤 富山大学学術研究部医学系 特別研究教授

金 艾順 重慶医科大学・ハルビン医科大学 免疫学 教授

浜名 洋 富山大学学術研究部医学系 免疫学 助教

下岡 清美 広島大学大学院医系科学研究科(医) 助教

田尻 和人 富山大学学術研究部医学系 第三内科 准教授

草野 清輔 国立研究開発法人理化学研究所 研究員

横山 茂之 国立研究開発法人理化学研究所 特別招聘研究員

小澤 龍彦 富山大学学術研究部医学系 免疫学 准教授

小幡 勤 富山県産業技術研究開発センター 企画管理部長

岸 裕幸(責任著者) 富山大学学術研究部医学系 免疫学 教授

 

掲載誌:Nature Biomedical Engineering 電子版(2022 年 4 月 7 日付)

電子版は下記のリンクから読むことができます。

https://rdcu.be/cKSAh

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