公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

切り取りダイジェストは再掲。新記事はたまに再開。裏表紙書きは過去記事の余白リサイクル。

くさひばり(草雲雀)

2013-06-16 22:05:00 | 今読んでる本
「小泉八雲集」小泉八雲著・上田和夫訳の中に「くさひばりー一寸の虫にも五分の魂」という節がある。小泉八雲の作品の中でもファンの多い節で、普遍的な私論というスタンスは日常生活に埋もれた文明論にもつながる。私の好きな随筆だ。

 この物語には西欧文明の下で育ったラフカディオ・ハーンの葛藤が現れている。いやすっかり日本人になってしまっている。籠の外からどんどん拡大していく観察過程、次第に小さな虫にひきこまれて、愛情が畏敬を伴って、ついには同一となってしまう。魂というものの広大な背景を感受し始める。その死を描く、短いが実に味わい深く面白い文章である。

「「草雲雀」といふのが彼の日本名である。そして、彼は市場でちやうど二十五錢の値段である。すなはち自分の重さだけの黄金よりもはるかに高價である。こんな蚊のやうな物が二十五錢もする!」
「その關係が絶えた時に初めてそれと氣がつく一種の愛着の念が生ずるのかも知れない。その上にまた私は夜の靜けさに、この草雲雀の微妙な聲の魅力 ―― すなはちその束の間の生は、神の惠に﨟るやうに私の意志と利己的な樂しみに﨟つてゐるのであると語り、またその小さな籠の中にゐる蟲の微塵の靈と私の身内の微塵の靈とは、實在の渺茫たる大海にあつて永遠にまつたく同一物であると語るところの ―― その微妙な聲の魅力を、ひどく身にしみて感じたのである。」

ここも参照ください。

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