公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

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今読んでる『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』渡瀬裕哉

2020-01-13 12:30:00 | 今読んでる本

まえがきより

 
ただ、選挙屋の視点から見ると、それらの問題は、もう少し違った側面があることに気付くのである。実は、民主主義社会におけるアイデンティティの分断は、選挙のマーケティング技術の発展によってもたらされている。そして、選挙のマーケティング技術は、知識人・メディア・情報技術のノウハウの組み合わせによって日々進化している。この進化を止めるのは困難だ。大半の政治家は、選挙のマーケティング技術の発達が生み出すアイデンティティの分断にうまく乗っかりながら、自らの政治的な生き残りを模索している現状がある。
渡瀬裕哉(わたせ・ゆうや)パシフィック・アライアンス総研所長国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。同取締役退職後、日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することから
 
TokyoTeaPartyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。また、国内では東国原英夫氏など、自治体の首長・議会選挙の政策立案・政治活動のプランニングにも関わる。主な著作として『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)がある。
安田純平は、旅券発給の是非を政権が判断するのは独裁国家と発言しているが、独裁国家といえども法整備はある。
私はこのブログでよく、投稿カテゴリーを分けて“間違った設問に正しい答えを当てはめるという現実世界のバグ”が修正できないという論説を書いているが、著者の言うアイデンティティーの分断というのも、間違った設問に正しい答えを当てはめた結果、修復できなくなったリアル社会のバグの一種と考える。本来はそのカテゴリーに入るが、略
 
「アイデンティティの分断を煽る言論」は、主に民主主義国内の選挙シーンで活用されるが、その影響は、中国のような非民主主義的な全体主義国家であっても、無関係というわけにはいかない。中国のような政治的独裁体制下においては、既に政府によって「よい」と選定されたアイデンティティを皆が持つように強制される。民主主義による多数決のプロセスを除いた意思決定でありながら、画一化、単純化された単一のアイデンティティを多様な人々に押し付けるという観点では、両者は、ほぼ同一のものとみなせる。

専制主義と民主主義とが選べた場合どっちが正しい選択かと聞かれれば、民主主義と答える。正しい答えだが、この設問が間違っている。この世の政治で完全な専制主義とか完全なる民主主義とかいったものはなく、議会制民主主義は多数与党専制である。逆に共産主義のような専制主義でもその継続のためには広く独裁者の候補を探さなければならない。

左翼がLGBTや新しい貧困、新しい差別の発見など、どんなにアイデンティティの新作を作ろうとも、アイデンティティを多様な人々に押し付ける二分法的判断がいかに問題設定の誤りを必然的に内包するかよく理解できると思う。誤謬の必然的内包であるということがここでは重要。

分裂的アイデンティティとは反対に統一的アイデンティティの新作はほとんど成功しない。故に國體とかアーリア人種とかという旧作リバイバルに頼る。投票を神聖化して神饌を奪い合う陣取りゲームをどちらかが始め、それが今のところの人類の政治活動の法則として共通しているからだ。

例えば、知識人が「金持ちと貧乏人の間に経済的格差が拡大している」という指摘を行うと、それは「アイデンティティの分断」を発見したことになる。知識人にとって、それが固定化されているのか、拡大しているのかは大した問題ではない。理由は後述するが、知識人にとって重要なのは「そのアイデンティティの分断に対して、他の知識人による従来までの考察が不十分であり、自分が研究した結果として新たな発見があった」と言うことなのである。

なるほど通常、知識人は大衆からは遠く孤立しているので、自分(達)が発見した新しい分断知識を得たことを本やマスコミに露出して宣伝しなければならないが、知識人から見れば選挙争点にアイデンティティの分断を提案することは、その分断知識披露の機会効率的制度と言えるわけだな。


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