今日の中の今日でないところ

　経営を取り巻く環境は毎日変わっている。しかし重要なことは自社の競争力に関係する変化であって、その他の変化は意味を持たない。競争力の源泉は価値創造にある。その価値創造の機会の多くは会社の外にある。


『予測は、趨勢を延長することによってしかできない。計画し、数量化できるものは、すでに起こったことだけである。そのような趨勢は、重要ではあっても、明日の一側面にすぎない。明日の現実の一つにすぎない。しかも量的な予測は、重要でさえない。重要なことは、今日とは異なる側面とその意味である。』

　ドラッカー　断絶の時代―来たるべき知識社会の構想

　ドラッカーの「断絶の時代」が出た1969年ころの社会のスピードは現在とは全く比較にならない。しかし予測とその限界に関する本質は全く変わっていないと思う。

　今日の中の今日でないところ、その意味に気づくことは極めて重要と思う。売上げは確かに増えたり減ったりする。予測は立てることも差異を解釈することも出来る。しかしながらそれらを追いかけても価値創造はできない。なぜ増えるか、なぜ減るか、目には見えない風がどこから吹いているのか、座して得られる情報を待って気づくことはとてもむずかしい。

　価値創造や価値喪失に関わる今日の中の非今日の断面は会社や集団の内部ではなく、外に埋もれている。だから事業の機会は外の変化に探すことが重要。

　例えば、中国の都市部の人口が農村部を追い越した瞬間、昨年から今年にかけてのできごとと思うが、何が一番世界の価値創造に影響することだろうか？ここから先は想像力の問題となる。想像力が足りないことが価値創造の機会を大いに減少させる。歴史上日本で起こったことを中国の国家指導部はよく研究している。住宅問題のつぎは環境問題となることを知っている。器に注ぎ続けることが出来ると考えるのが日本の政治家の特性であり、いつ溢れるかを注目して待っているのが中国の政治家である。祭り事と革命の違いがここにある。深刻な水質汚染・飲用水不足が中国に巨大な価値喪失をもたらすでしょう。機会はこういうところにあります。

　今日の中の今日でないところがもう一つある。原発再稼働反対の声が３月２９日金曜日にはじまり、毎週金曜日に集まり、ついに大集会１７万人が集まったといわれてる。少しずつ注がれてきたものが質を変える瞬間を見なかったことにした批評家、政治家は大きな価値喪失に陥ることでしょう。選挙を価値創造（価値喪失の防止）と考えない政治家は篩にかけられるでしょう。機会はこういうところにあります。固定観念は今日でないところに著しく齟齬します。馬雲の言葉を静謐と思い込んでいる心の水面に浮かべるべきでしょう。

「これまで日本国内で成功していた企業であればあるほど、自社の決まったやり方や固定観念にとらわれる傾向があります。日本という国からは出たけれど、自分の殻からは結局抜け出せていない。成功体験を持つ企業は、往々にしてそういう性質を持っています。その意味で、私は日本の中小企業に期待してます。国内では成功したとはいえなくても、海外市場に打って出て成功をつかみたいという強い意志を持つ会社です。
[ジャック・マーの名言｜国外展開をするときは、自分の殻からも抜け出す事が重要]」