公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

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KININARU 技術 19 シミュレーテッド分岐アルゴリズム

2019-09-14 08:05:54 | 経済指標(製造業)
 今、量子コンピュータの一種である「量子アニーリングマシン」で高速に解けるとされる「組合せ最適化問題」をより速く・大規模に解くべく、各社がしのぎを削っている。

 米Googleと米航空宇宙局(NASA)が2015年に「従来のコンピュータより1億倍速い」と評した量子アニーラ「D-Wave」を作るカナダD-Wave Systems、量子アニーリングを模したアルゴリズムをデジタル回路上に再現する富士通と日立、光を用いて解く「コヒーレント・イジングマシン」を作るNTTの研究グループなどだ。IBMなどが作る「量子ゲート方式」の量子コンピュータを用いた組合せ最適化計算の研究も盛んだ。

 各社が組合せ最適化計算に取り組むのは、これを高速に解けると交通渋滞の解消や金融ポートフォリオの最適化など、社会問題の解決やビジネスへ応用が見込めるからだ。

 そんな中、他社の計算性能を上回るアルゴリズムを東芝の研究者が開発した。専用マシンを必要とせず、家庭向けのPCに搭載される「GPU」でも高速に計算できるという。

 東芝は4月に、同アルゴリズムを搭載したFPGA(プログラミング可能な集積回路)による計算で、それまで最速だったコヒーレント・イジングマシンを上回る計算性能を発揮したとする論文を発表した。



東芝は4月20日、量子コンピュータが得意とする計算の一つである「組み合わせ最適化問題」を、従来のコンピュータ(古典コンピュータ)で高速に解けるアルゴリズムを開発したと発表した。ある問題設定では、現行の量子コンピュータ(※1)に比べて10倍高速に解を求められるという。同アルゴリズムを活用したサービスプラットフォームの、19年中の事業化を目指す。

東芝は、自社が持つ量子計算の理論から、古典力学の「分岐現象」「断熱過程」「エルゴード過程」という3つの現象に着目。これらをうまく利用し、古典コンピュータ上で組み合わせ最適化問題を解くアルゴリズムを「シミュレーテッド分岐アルゴリズム」(Simulated Bifurcation, SB)と名付けた。

 SBは従来の手法に比べて並列計算に向くとしており、GPUを8台つないだクラスタで10万変数・全結合の大規模問題を計算すると、数秒で良解(※2)を導けるという。

 また、FPGA(あるアルゴリズムの計算に特化した集積回路)を用い、2000変数・全結合の問題をSBで解いたところ、良解を0.5ミリ秒で得られたという。同問題を世界最速(2016年時点)で解けるとされていた「コヒーレント・イジングマシン」は良解の導出に5ミリ秒かかることから、「10倍高速に問題を解ける」としている。

 コヒーレント・イジングマシンより高速で、大規模な問題へも適用できることから、同社はSBを用いた組み合わせ最適化問題の計算について「世界最速・最大規模」をうたう。

 組み合わせ最適化問題の高速計算は、効率的な配送ルートの探索(巡回セールスマン問題)や新薬開発の分子構造決定、金融ポートフォリオの組み合わせ決定に有用とされる。

 同社は、「本技術をキー技術として、現代社会におけるあらゆる最適化ニーズに応えるサービスプラットフォームを実現し、19年中の事業化を目指す」としている。

 SBの詳細は、米オンライン論文誌「Science Advances」に4月19日付で掲載された。




その後どうなったのか聞かないが、注目している。



※1:コヒーレント・イジングマシンの研究を主導する国立情報学研究所の山本喜久名誉教授は量子の性質を用いて計算しているとしているが、他の研究者からは量子性の利用について疑問も呈されている。

※2:最適解とは限らないが、最適解に近い解。



google
 量子コンピューターが現在のコンピューターをはるかに超える計算能力を持つことを示す「量子超越性」を米グーグル(Google)が実証したもようだと、英フィナンシャル・タイムズ(FT)が2019年9月20日(英国時間)に報じた。量子コンピューター開発が大きなマイルストーンに達した可能性がある。

 FTによれば、グーグルの研究者による論文が米航空宇宙局(NASA)のWebサイトに一時的に掲載されたという。グーグルとNASAは量子超越性分野で提携している。グーグルの研究者はその論文で、現在最高速のスーパーコンピューターである「Summit」を使っても解くのに1万年かかる問題を、グーグルの量子コンピューターが3分20秒で解いたと主張したという。用途は乱数生成とみられる。

 グーグルの量子コンピューター開発を指揮する、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョン・マティニス(John Martinis)教授は当初、72量子ビットを搭載する量子プロセッサー「Bristlecone」を使って量子超越性を示すとしていた。しかし同プロセッサーでの実験が難航したため、グーグルは53量子ビットを搭載する新しい量子プロセッサー「Sycamore」を開発して、量子超越性を示したとFTは報じている。米IBMも2019年9月に、同社の量子コンピューター「IBM Q」を53量子ビットに拡張したと発表済みだ。

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