高温ガス炉
高温ガス炉は、①冷却材には化学的に不活性なヘリウムガスを用いているため、冷却材が燃料や構造材と化学反応を起こさないこと、②燃料被覆材にセラミックスを用いているため、燃料が1600 ℃の高温に耐え、核分裂生成物(FP)の保持能力に優れていること、③出力密度が低く(軽水炉に比べ1桁程度低い)、炉心に多量の黒鉛等を用いているため、万一の事故に際しても炉心温度の変化が緩やかで、燃料の健全性が損なわれる温度に至らないこと等の固有の安全性に優れた原子炉である。また、900 ℃を超える高温の熱を原子炉から取り出せることから、熱効率に優れるとともに、水素製造等の発電以外での利用等、原子力の利用分野の拡大に役立つ原子炉である。高温ガス炉は、原子炉から非常に高い熱を取り出すためにヘリウムガスを利用しています。ヘリウムガスはとても安定した物質で、他の影響を受けにくく、放射化されません。高温でも安定しているため約1000℃という高い熱でエネルギーを取り出すことができます。この高い熱を利用し、発電することと一緒に、環境にやさしい、次世代のエネルギーとして期待される水素を、CO2を排出せずにつくることができます。
現在、高温ガス炉用燃料の量産技術を有している国は日本と中国だけです。過去には独国、米国でも製造していましたが、日本製の燃料は、その製造品質の高さから他国に比べ1桁以上のFP(核分裂生成物)閉じ込め能力を有しています。今回、HTTRの約3倍の高燃焼度化となる小型モジュール炉の実用高温ガス炉に導入する被覆燃料粒子の量産化技術を確立し、極めて高い中性子照射安定性を確認できたことは、原子力機構が持つ燃料の設計能力と原子燃料工業(株)が所有する燃料製造技術が世界のトップランナーであることを示したといえます。
この度、原子力機構は、被覆燃料粒子の寸法仕様の制御のみで、高燃焼度のもとでも内圧破損の確率を最小限に抑える新しい設計技術を完成させました。その際、原子燃料工業(株)によるHTTR用燃料の製造経験で得られた、量産品質上の寸法公差を考慮しました。これにより、実用レベルの高い燃焼度かつ量産品質のもとで、内圧破損の確率をほぼゼロ(100万分の1)に抑えた、新しい被覆燃料粒子の寸法仕様を設定できました。