職場に充満する一種の原理的価値体系を蹴って出てゆく、内容を拒絶する「えんがちょ」虚無主義が『お疲れ様』である。
お疲れ様は『はかなし』の変形である。今のところニヒリズムによってしか世界は正義原理主義者に対抗できない。日本人に『お疲れ様』『かわいい』と言われた原理主義者はぽかんとするしかない。
とりわけ西欧で生まれた既定路線としての千年王国への旅の途中であるという思い込みから抜けることのできないキリスト教会は人間に限りなく地上の破壊を求める。中世、森とともに異端を倒した記憶が彼らの確信の最も古い成功体験(飢えからの脱出と人口増加)であるから、繁栄の手段として森に代わる異端(石油文明の否定)を作り続ける。日本人はキリスト者であってもそうは考えない。お疲れ様の底にある深い虚無主義は自然との共生をしていくための諦めのようなものである。